2016年09月28日

らくわ健康教室「乳腺科とのコラボレーション 乳がん術後乳房再建について 〜手術後の人生をより豊かに〜」

2016年4月21日開催のらくわ健康教室では、「乳腺科とのコラボレーション 乳がん術後乳房再建について 〜手術後の人生をより豊かに〜」と題して、洛和会音羽病院 形成外科 医員で、医師の土岐 博之(とき ひろゆき)が講演しました
概要は以下の通りです。

1426.jpgはじめに
本日は、乳がん手術後の乳房再建について、手術時期や再建方法、入院期間や術後ケア、仕事復帰などについてお話しします。

乳房再建って何?
乳がんの手術で乳腺を摘出し、命は救われても、胸のふくらみが失われると、乳房喪失感があったり、左右のバランスが崩れて肩がこったり、大衆浴場や温泉に足を運びにくくなる患者さまは少なくありません。このような患者さまのために、乳房再建が行われるようになってきました。
実際に無くなった乳房をどう補うかは、乳腺摘出手術の範囲に応じて、自分の他の部位から脂肪や筋肉などを移動させて乳房をつくる、シリコンなどの人工物で乳房をつくるなど、再建の方法が違ってきます。

再建の時期
乳房再建には、一次再建と二次再建があります。一次再建は、乳がん摘出日に同時に乳房再建を行います。二次再建は、乳腺摘出手術後に、いったん落ち着いてから、別の日にあらためて再建手術を行います。それぞれ、利点と欠点があります。乳がんの手術は乳腺科が行い、術後の再建手術を形成外科が行います。
※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。
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再建の方法
再建には、自家組織(自分の体のほかの部位)を用いて再建する方法と、異物(組織拡張器+インプラント)を用いて再建する方法があります。

<自家組織を用いた再建>
おなかや背中など、ほかの組織をそのまま胸に入れても生着せず、組織に血流がなければ、腐ってしまいます。そのため、多くの場合、筋皮弁、遊離皮弁の形で血流を確保し、再建を行います。皮弁術とは、皮膚と脂肪と、場合によっては筋肉をほかの部位から移動させ、欠損部を覆う術式のことです。皮弁は植皮と違って、皮膚に加えて厚みのある皮下組織(脂肪や筋肉)も含めて移植するため、植皮の平面的再建に対して、皮弁は立体的な再建に用いられます。
皮弁は、皮膚や脂肪、筋肉への栄養血管が含まれているため、立体的で大きな組織でも栄養が行き渡り、新しい部位で生着します。植皮は、皮膚のみを切り離されたあと、血管が再度新しく伸びてくるのを待つため、薄くないと生着しません。植皮は傷を閉じるうえでは有効な手段ですが、立体の再建を行うには皮弁が有効です。

再建でよく使われる組織の種類
再建でよく使われる組織の種類は、大きく分けて2つあります。背中の広背筋からとる「広背筋皮弁」と、おなかからとる「腹部皮弁」です。使用する皮弁は、乳がんの切除範囲や乳房の大きさなどによって選択されますが、それぞれに利点と欠点があります。
広背筋皮弁は、血流の安定や筋脱落症状が少ない利点がありますが、大きな胸には不向きで、しばらくは手が上げられないことと、背部に傷跡が残るのが欠点です。腹直筋皮弁は、大きな組織が採取できる・おなか周りがすっきりする・術中体位変換が必要ないという利点がありますが、術後しばらくは前かがみ歩行となる・腹壁ヘルニアになる可能性がある・腹部に傷跡が残る・妊娠を希望する際には選択できないという欠点があります。

再建の方法
上に述べたような自家組織を用いる再建と、シリコン製のインプラント(人工乳腺)を用いた再建があります。インプラントには、おわん型のほか、しずく型があります。切除後の胸の筋肉を3〜6カ月かけて伸ばし、間にシリコンを入れて再建します。
インプラントにも利点と欠点があります。利点は、日常に早期復帰できることや、体のほかの組織を犠牲にしないで済むこと、それなりにきれいな乳房ができること、大きな乳房をつくることが可能なことです。欠点は、既製品でサイズが決まっていることや、ごくまれに異物アレルギーが現れること、破損のおそれがあること、加齢による自然な変化が生じにくいこと、下垂乳房を再現しにくいこと、10年に1回の交換が必要なことです。
このほか、乳頭や乳輪の再建も可能です。

入院期間
入院期間は、以下の通りです。
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退院後の生活では、家事や仕事(事務の場合)の復帰は、術後3週間で可能となります。運動や体を使う仕事は、術後4週間で可能となります。

乳がん手術後も豊かな人生を
洛和会音羽病院では、2016年4月から、乳房再建の専門外来(担当医:形成外科 土岐 博之)を開始しました。乳腺科との協働作業で、患者さまの健康と術後の人生を豊かにするお手伝いをいたします。乳がん手術を今後受けられる方や術後で悩んでおられる方は、ご相談ください。
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らくわ健康教室「傷について考える 〜外傷・床ずれなど〜」

2015年7月16日開催のらくわ健康教室では、「傷について考える 〜外傷・床ずれなど〜」と題して、洛和会音羽病院 形成外科 医員で医師の土岐 博之(とき ひろゆき)が講演しました。

概要は以下のとおりです。

8756.jpgはじめに
傷には、外傷から床ずれまで、さまざまなものがあります。形成外科で扱っている疾患は、救急外傷では、切断指や顔の外傷、顔面骨骨折、体表の外傷などがあり、慢性期の傷では、褥瘡(じょくそう:床ずれ)や難治性潰瘍(糖尿病性潰瘍・壊死(えし)など)があります。

傷の治り方
動物には自然治癒力があり、ほとんどの傷は自然治癒します。では、傷はそのまま皮膚がはってきて治れば良いのでしょうか?
例えば、指が切断で取れてしまった場合、傷の断端は閉じますが、切断された指はくっつきません。まぶたの上の傷の場合、何もしなくても傷は閉じてきますが、眉毛が上がらなくなり目が開きにくくなります。自然治癒力にも限界があります。

救急の外傷は、まず元の位置に戻すことが大事
切断された指でも、くっつく可能性があります。指が見つかったら、
  1. さらっと汚れを落とす
      ↓
  2. 水で湿らせたガーゼやハンカチなどでくるむ
      ↓
  3. 清潔なビニール袋に入れる
      ↓
  4. 周囲を氷水で冷やしながら病院へ
    (このとき、切断された指が直接氷水に触れないように注意してください。切断された指が凍傷になるからです)
          
⇒ 切断された側の指の処置方法 ※患部の写真が掲載されています。

指が見つからない、またはつぶされて粉砕されてしまった場合は、骨が飛び出した状態であれば傷は閉じないので、残っている皮膚で閉鎖が可能な部位まで骨を切除し、傷を閉じます。
指の長さをできるだけ残したい場合、残存した軟部組織に、人工真皮といわれるコラーゲンの含まれた膜を縫い付けて肉を盛らせることで長さをできるだけ保つ方法があります。ただし、伸ばせる長さは3〜5mm程度です。それを超えるだけの骨が突出していれば、その分の骨は切除します。

顔の外傷
顔の外傷には、擦り傷や切り傷、顔の骨折(鼻骨骨折、頬骨骨折など)、耳介(じかい)の裂け傷があります。

⇒ 擦り傷 ※患部の写真が掲載されています。
⇒ 救急の外傷はまず元の位置に戻すことが大事 ※患部の写真が掲載されています。

顔の骨折には鼻骨骨折や頬骨骨折、上顎(じょうがく)骨折などがあります。鼻骨骨折は、主に形態が変形すると予測される際に手術となります。頬骨骨折は、形態の異常および頬の神経障害、開口障害(口が開きにくくなる)がある場合、手術となります。上顎骨折では、咬合(こうごう)不全(咬み合わせが悪くなる)が起こる可能性が高く、手術となります。
手術は受傷後2週間以内が望ましく、疑いがある場合は早めに受診してください。2週間を超えると、骨折部位の周りの組織がくっついて骨が動かなくなるからです。
耳の裂け傷では、耳介の軟骨および皮膚を縫合します。できるだけ元の位置に縫合すると、比較的形態も良好に保たれます。

体表の外傷

⇒ 体表の外傷 できるだけ元の位置に戻すことが大事 ※患部の写真が掲載されています。

慢性期の傷
慢性期の傷とは、床ずれや難治性潰瘍などを指します。腫瘍や外傷、神経障害、感染、代謝異常、血管障害、血液疾患など、何らかの原因で皮膚への血流障害が起き、皮膚の脆弱化が起きる結果、長期間治らない傷になります。
  • 床ずれ
    床ずれができる原因は、体重による圧力(骨の突出した部位に圧がかかる)や、引っ張り力(体位変換で引っ張られる)、剪断(せんだん)力(座位保持をしていてもだんだんずり落ちる)が挙げられます。
    ⇒ 右側を下に横たわった状態。左のおしりを支えるときに引っ張られることで、床ずれがひどくなります ※患部の写真が掲載されています。
    床ずれを予防するためには、こまめに体位変換を繰り返すことです。ベッドのマットも硬すぎないものを使い、体を動かすときには床ずれの周囲を引っ張らないように動かすことが大事です。全身状態が良ければ、手術で床ずれ部分を閉鎖することも可能です。
  • 難治性潰瘍
    難治性潰瘍の治療には、V.A.C フォームという特殊な治療剤を用いたV.A.C.ATS治療システムを用います。傷の保護、肉芽形成、滲出(しんしゅつ)液と感染性老廃物の除去を図り、創傷治癒を促進させる方法です。
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    ⇒ 難治性皮膚潰瘍の治療 ※患部の写真が掲載されています。
  • 糖尿病性足壊疽(えそ)
    原因は、糖尿病に伴う動脈硬化による血流障害です。糖尿病性神経障害により、痛みがないため、傷に気付きにくいのが特徴です。傷は、細胞が生きていけるだけの血流がなければ治りません。治療は、血流の状態を検査し、壊疽が進行しないように行います。血流が良ければ、傷は治ります。血流が悪ければ、傷が治る適切な部位で切断することが大事です。
    ⇒ 糖尿病性足壊疽 ※患部の写真が掲載されています。
    糖尿病性神経障害に伴う傷を予防するためには、血や滲出液が付着した際にわかりやすい色の靴下(白色など)を普段から履き、傷に気が付ける環境をつくることが大切です。
全体のまとめ
  • 急性期の深い傷はできるだけ元の位置に戻すことが大切です。
  • 切断された指はガーゼで覆ってから袋に入れて、氷水で冷やしながら持ってきてください。
  • 顔の骨折が疑われる場合は、手術可能な期間は2週間以内であるため、早めに受診してください。
  • 床ずれは予防が大事です。体を動かす処置時には、支える部位に気を付けて行いましょう。
  • 糖尿病性神経障害のある人は、傷に気付きやすい色の靴下を普段から履きましょう。
上記に限らず、傷で悩んでいることがあれば、気軽に洛和会音羽病院 形成外科を受診してください。

質疑応答から 
形成外科と整形外科、口腔外科の診療範囲の違いは?
整形外科は、骨や筋肉など体の内部の運動器を中心に診るのに対し、形成外科は手や足など体の表面を中心に診ます。口腔外科との違いは、下顎の骨折などは口腔外科が、上顎から上は形成外科が主に診ます。整形外科、口腔外科と重なり合う部分もあります。
日常生活で指切断が多く発生する事例は?
バイクのクラッチに指をはさんで切断したり、日曜大工でチェーンソーを使用中に切断してしまうケースが多いです。工場事故もあります。
床ずれ予防には柔らかいマットが良いのですか?
硬すぎてはだめと言いましたが、体は沈みすぎるとかえって良くないため、柔らかすぎてもいけません。床ずれは仙骨・背中・後頭部に起きやすいです。こまめな体位変換で少しずつ体を動かしてあげてください。なかでも脊椎損傷の人は、痛みの感覚がないため、30分に1回は体を動かしてあげてください。   
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2016年09月27日

介護・看護 就職相談会 開催のご案内【京都市伏見区開催】

京都市伏見区・山科区・宇治市で働きたい方必見!

下記の内容で、就職説明会を開催いたしますので、ご興味のある方は、ぜひお気軽にお越しください。(予約不要・服装自由・未経験者OK・ブランクOK)
※履歴書不要(ご持参の方はその場で面接可)

募集職種
  • 看護職(看護師、准看護師)
  • 介護職(介護福祉士、実務者研修、初任者研修、ヘルパー2級・1級)
  • 介護支援専門員(ケアマネジャー)
  • 機能訓練指導員(理学療法士、作業療法士、柔道整復師)
日時
2016(平成28)年
  • 10月6日(木) 午後2時〜午後8時
  • 10月7日(金) 午後6時〜午後8時
  • 10月15日(土) 午後2時〜午後8時
会場
京都市呉竹文化センター 第1会議室


 電車でお越しの場合🚃
  • 京阪本線「丹波橋駅」西口前
  • 近鉄京都線「丹波橋駅」西口前
 バスでお越しの場合🚌
  • 市バス「板橋」下車西へ5〜8分(南8系統)
  • 市バス「西丹波橋」下車東へ10〜15分(南8・81系統)
お問い合わせ
洛和会ヘルスケアシステム 介護事業部
TEL:075(353)5802
E-mail:kaigo_jinji@rakuwa.or.jp
担当:橋本・大塚・勝本
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らくわ健康教室「こんにちは。訪問看護です 〜訪問看護サービスでできること〜」

2016年4月6日開催のらくわ健康教室では、「こんにちは。訪問看護です 〜訪問看護サービスでできること〜」と題し、洛和会訪問看護ステーション醍醐駅前 看護師の後藤 春菜(ごとう はるな)が講演しました。
概要は以下の通りです。

4900.jpg訪問看護って何?
病気や障がいのある人が自宅で療養生活をできるように、看護師が訪問し、ケアを提供し、療養生活を支援するサービスです。
つまり、病気や障がいのある状態でも、住み慣れた自宅で生活ができます。

誰が来てくれるの?
看護師免許をもつ看護師・保健師・助産師が、患者さまのお宅を訪問し、看護を行います。また、訪問看護ステーションによっては、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士が、必要に応じて訪問します。
訪問看護の内容としては、以下のようなことを行います。
  • 健康状態の観察と助言
  • 食事の援助、排泄の管理・援助
  • 入浴の介助、体拭き
  • 傷の処置、点滴、お薬の相談
  • 体に入っているチューブ類の管理
  • リハビリテーション、終末期の看護
  • 家族の指導、相談 など
私たち訪問看護師が携帯する訪問バッグには、聴診器や体温計、血圧計のほか、血中酸素や脈拍が計れるパルスオキシメーターが入っています。また、利用者さまの髪を洗うための、バスタオルや大型ごみ袋、洗濯ばさみも入っています。これらを使って、机の上に簡単な洗面台をつくり、利用者さまの髪を洗うことができるのです。このように、1人暮らしや介護に不安がおありの方など、誰もが安心して生活できるよう、お手伝いします。

どんな人が利用しているの?
糖尿病、心不全、腎臓機能障害、骨粗しょう症、高血圧、肺気腫、床ずれ、認知症、がんの末期、難病、精神疾患、在宅酸素利用の方など、10歳代〜100歳代まで、さまざまな年齢や病気のある方が利用されています。

利用者さまの事例を紹介
<事例:Aさん(男性 80歳代)>
慢性腎不全末期で、尿管皮膚ろう(管を使って体外に尿を出す装置)造設、うっ血性心不全、骨粗しょう症を患っている。自宅で1人暮らしをし、息子さんの協力あり。ヘルパーの介入ありで、家事代行をしてもらっている。
⇒ 訪問看護では…
健康チェック、ウロストミー(尿管皮膚ろう)のパウチ(袋)交換、入浴介助、排便コントロールを行っている。

<事例:Bさん(男性 80歳代)>
狭心症、慢性閉塞性肺疾患を患っており、自宅で酸素療法を行い、1人で生活している。1人で心細く、緊急携帯電話には頻回に電話があった。現在は調子も良く、元気に生活されている。
⇒ 訪問看護では…
健康チェック、心身症のため不安が増さないよう話を傾聴、酸素の流量確認、摘便、酸素使用したままの入浴介助を行っている。

<事例:Cさん(男性 60歳代)>
脳出血後遺症、アルツハイマー型認知症、誤嚥(えん)性肺炎で入退院を繰り返していた。奥さんの「自宅で過ごさせてあげたい」という希望により、訪問を開始。訪問入浴も利用し、夫婦2人で暮らせている。
⇒ 訪問看護では…
健康チェック、全身清拭、陰部洗浄、パット交換、衣服の着替え、療養相談、介護者支援、傾聴を行っている。

訪問看護ってどうやったら利用できるの?
  • 介護保険の場合
    要介護認定を受ける ⇒ ケアマネジャーに相談 ⇒ 主治医に訪問看護指示書を交付してもらう ⇒ サービス計画を作成し、訪問看護開始
  • 医療保険の場合
    近くの訪問看護ステーションか、かかりつけの医師に相談 ⇒ 主治医に訪問看護指示書を交付してもらう ⇒ 利用者さま、訪問看護ステーションと契約 ⇒ 訪問看護開始
ほかにも、在宅介護支援センターや市区町村役所の在宅福祉関連窓口、保健所・保険センター、病院の医療相談室、地域の社会福祉協議会、地域包括支援センターなども、ご相談に応じます。

訪問看護の費用は?
一般的な訪問看護の費用は、以下のとおりです。
難病や自立支援医療は、病気の種類により、優先させる保険が介護保険か医療保険に分けられます。
<介護保険(1割負担の場合)>
所要時間
  • 20分未満…332円
  • 30分未満…496円
  • 60分未満…871円
  • 90分未満…1,196円
<医療保険(1割負担の場合)>
  • 月の初回…1,300円
  • 2回目以降…850円/回
介護保険を利用して、1回60分の訪問看護を受けた場合、1割負担の方の1カ月の自己負担額は、以下の通りです。
年齢・所得により負担割合は異なります。
  • 週1回の利用で、約 4,000円
  • 週2回の利用で、約 8,000円

※上記の料金の内訳には、24時間いつでも連絡が取れる体制の加算、体に入っているルートの管理の加算も入っています。

皆さまに安心してご利用いただくために
常にかかりつけの病院・主治医とやり取りを行い、状況把握・早期対応ができる連携づくりをしています。
ご家族をはじめ、ケアマネジャー、主治医、歯科医師、薬剤師、ご近所の方など、多くの人が利用者さまを支えています。そのなかで訪問看護師は、利用者さまと各サービスとの懸け橋の役割も果たしています。
※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。
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訪問看護ステーションは、24時間体制です。病状の変化や体調の急激な変化など、緊急事態が発生した場合は、速やかに主治医の指示を仰ぎ、最寄りの病院への受診手配など、利用者さまの救命を優先に、必要な援助を行います。
私たちは、利用者さま・ご家族に、「利用して良かった」と思っていただけるようなステーションづくりをめざします。
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2016年09月24日

らくわ健康教室「甲状腺の病気について 〜バセドウ病を中心に〜」

2016年3月16日開催のらくわ健康教室では、「甲状腺の病気について 〜バセドウ病を中心に〜」と題し、洛和会音羽病院 内分泌内科 部長で医師の三浦 晶子(みうら まさこ)が講演しました。
概要は以下の通りです。

9405.jpg甲状腺とは
甲状腺は、喉仏の少し下にある小さな臓器で、蝶が羽を広げたような形をしています。甲状腺は食物中のヨードを取り込んでホルモンを作ります。甲状腺から分泌されるホルモンには、甲状腺ホルモン(T4、T3)のほか、カルシウム調節ホルモンであるカルシトニンがあります。甲状腺ホルモンは、小児の発達に重要な働きを担っており、大人の新陳代謝にも深く関わっています。
※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。
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甲状腺の病気
甲状腺の主な病気は、
  • 甲状腺ホルモンのバランスが乱れる病気
  • 甲状腺に腫瘍ができる病気
  • 甲状腺に炎症が起きる病気
  • そのほか

に大別されます。

代表的な疾患は、「バセドウ病」です。

バセドウ病とは
バセドウ病は、甲状腺に特異的に関わる自己免疫疾患です。自己免疫疾患とは、体にとって良くない異物を取り除こうとする免疫の仕組みが乱れ、自分の体の一部を異物として認識してしまい、抗体をつくってしまう疾患です。その結果、さまざまな症状が現れます。
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バセドウ病の治療法
治療法には、薬物治療外科治療アイソトープ治療の3つがあります。それぞれにメリットとデメリットがありますが、日本では9割以上の患者さまが薬物治療を、米国では9割方がアイソトープ治療を選択しています。

バセドウ病の薬物治療 
バセドウ病の薬による治療では、第1選択としてメルカゾール(一般名チアマゾール)が推奨されています。チウラジールなどほかの薬と比べて最終的な治療効果に明らかな差はない一方、1日1回の服用で良いことや、重大な副作用が起こりにくいといった利点があるためです。副作用には、無顆粒球症や重症肝障害などがあり、発症の頻度は低いですが、起こってしまうと重症になるため、服薬を始める際は慎重に経過をみていく必要があります。副作用の8割方は服用開始3カ月以内に起きますので、そこを乗り切れば、薬を減らしたり、おおむね順調に治療が進められます。
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薬物治療は、抗甲状腺薬1錠隔日服用で半年以上の間甲状腺機能が正常に保たれていれば、中止を検討して良いとされ、逆に、抗甲状腺薬を1.5〜2年続けた時点で休薬できる見通しが立たない場合は、ほかの治療法への切り替えが検討されます。
薬物治療の長所は、外来で診断と同時に治療を開始できること、不可逆的な甲状腺機能低下症になることがほとんどないことです。一方、短所は、治療期間が長いことや、薬物の副作用が比較的多いこと、重篤な副作用が起こり得ること、寛解率が低く、服薬を中止する基準が明らかでないこと、再発が起こり得ることです。

バセドウ病の外科治療
以下のような場合は、外科治療を考慮します。外科治療は早期にバセドウ病を治癒できますが、短所もあります。
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バセドウ病のアイソトープ治療
放射性ヨウ素の入ったカプセルを服用する治療法です。多くの長所がある半面、放射線を使用しますので、妊婦や妊娠の可能性がある女性には投与できません。重症バセドウ病眼症の方や、18歳以下の患者さまには慎重投与が必要です。
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洛和会音羽病院では、2015年より、バセドウ病に対する131I内用療法を実施しています。

妊娠・出産とバセドウ病
バセドウ病の患者さまでも、抗甲状腺薬で適切に治療を行えば、妊娠・出産は十分可能です。ただし、胎児への影響(催奇性)を考えて、服用する薬の種類や用量ついては、医療者の指示に従ってください。また、妊婦さん自身への影響については、適切な治療が行われずに母体の甲状腺機能亢進状態が持続すると、妊娠高血圧症候群や甲状腺クリーゼ、流産・早産・死産のリスクが高くなります。妊娠中もバセドウ病の治療をしなければなりません。
薬物治療の胎児への影響に関する調査では、妊娠初期にメルカゾールを服用した妊婦さんから先天異常の赤ちゃんが生まれた例が報告されています。同じ調査で、チウラジール服用者には先天異常例は報告されていません。このため、妊婦さんに限っては、妊娠4〜7週はチウラジールが第1選択となります。
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そのほかの甲状腺疾患
甲状腺機能低下症を来す代表的疾患である「橋本病」や、甲状腺にできる“しこり”(甲状腺結節)、甲状腺の炎症などがあります。原発性甲状腺機能低下症のほとんどは慢性甲状腺炎で、発症頻度は成人女性で約10人に1人と非常に高くなっています。治療にはホルモン製剤によるホルモン補充が行われます。
甲状腺のしこりの多くは、良性です。まれに甲状腺がんが見つかります。甲状腺がんの原因は、被ばくによる影響(体外照射や内部被ばく)や、ヨウ素の摂取量、遺伝的要因などが考えられています。診断は、触診や超音波検査、細胞診などで行います。日本人の甲状腺がんの約9割は乳頭がんですが、このがんは進行が遅く、予後は非常に良いです。微小なものは、手術をせずに、経過観察が選択される場合もあります。

おわりに
洛和会音羽病院の内分泌内科では、バセドウ病のアイソトープ治療をはじめ、患者さまに適した甲状腺疾患の診断と治療を行っています。甲状腺の疾患は広範囲で、高齢者の甲状腺機能低下症では認知症やうつ病と診断されることもあります。気になる症状がある場合は、内分泌内科までご相談ください。

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