2008年02月15日

脊髄損傷や脳卒中の後遺症のひとつ「痙縮(けいしゅく)」に有効な髄腔内バクロフェン療法(ITB療法)

Nougenishimura
洛和会音羽病院 脳神経外科
医長 西村 英祥(にしむら ひであき)

 
 

脊髄損傷や脳卒中の後遺症で悩まれている患者さまは非常にたくさんおられます。突然の怪我や病気のために、例えばこれまで不自由なく歩けていた方が歩けなくなるのです。

Itami_2こうした後遺症には、運動麻痺、しびれ、痛みなどいろいろなタイプのものがあります。なかでも「痙縮(けいしゅく)」とは、脊髄損傷や脳卒中のために、からだが勝手に突っ張ったり、固まったりすることで、自分の意思に関係なく起こってしまう症状です。このときに、胸やおなかを締め付けるような痛みも生じます。これらの症状は、ご本人にしかわからない非常に辛い症状です。夜に十分に眠ることができない、また車いすの操作が思うようにできない、と聞きます。

以前は、こうした「痙縮」という後遺症に対しては、お薬を飲んで対処することが一般的でした。しかし飲むお薬は、脳や脊髄にはなかなか届かないのです。かといって量を多くするとその副作用が問題となります。こういった理由から、実際には治療が困難な後遺症とされていました。

Ponpu_2こうした状況に対して、近年新しい治療法が可能となりました。欧米では約10年前から「髄腔内バクロフェン療法(ITB療法)」という治療法が開発されてきました。お薬を飲むのではなく、直接「髄腔内」へ注入するものです。薬が直接神経に作用し、それによって筋肉の勝手な動きが止まります。具体的な方法としては、手術によっておなかにお薬を注入するためのポンプを埋め込みます。ごく微量のお薬が常に神経に作用するようになるため、その効果は持続的なものとなります。ITB療法は日本でも約2年前から健康保険が適用されるようになり、治療が可能になりました。

「本当に効くの?」と思われる方も多いでしょう。ご安心ください。すべての方にいきなり手術をお勧めするわけではありません。患者さまのお話を十分に伺い、この治療法が有効と考えられる方には、まず「スクリーニング」をお勧めします。これは「バクロフェン」というお薬を少量だけ背骨の間から髄腔内に投与するものです。数時間後からその効果が表れ、約1日間効果が継続します。バクロフェン投与の効果を実際に「体験」していただいてから、ITB療法を受けられるかどうかをお考えいただきます。

以上、ITB療法について簡単に述べさせていただきました。直接医師の説明を聞いてみたい、という方は外来受診をご予約ください。

洛和会音羽病院 予約センター
Freedial 0120(489)300

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