洛和会ヘルスケアシステムは毎月第3金曜日、幅広い地域の皆さまを対象に、京都の市街地・四条烏丸で健康教室を開催しています。
7月18日は、洛和会音羽病院 感染症科の部長 神谷 亨(かみや とおる)が「知っていますか? 感染症のあれこれ」をテーマに講演しました。
感染症科というのは、細菌やウイルスなど、いわゆる「ばい菌」が引き起こす疾患を治療する診療科です。本日は、皆さんに特に注意していただきたい感染症についていくつかお話します。
★肺炎
肺炎は日本人の死亡原因の第4位です。肺の組織に炎症が起きる病気を総称して肺炎と言いますが、咳、のどの痛みといった風邪の症状から始まり、激しい咳や高熱、胸の痛みなど重い症状が現れます。
ちょっとした風邪の症状から肺炎を起こすことが少なくないので、高熱が1〜2日続くなど、「ひどい風邪」と思った時は早めに受診してください。特に高齢の方や体力が低下している方はご注意ください。
予防法は、まずは風邪やインフルエンザにかからないようにすることです。過労を避け、バランスの良い食事をとり、マスク、うがい、手洗いをするなど基本的な対策が重要です。
これに加えて特に覚えていただきたいのは、「インフルエンザワクチン」と「肺炎球菌ワクチン」の予防接種です。インフルエンザのワクチンについては既にご存知と思います。「肺炎球菌ワクチン」は、肺炎を引き起こす原因として最も多い肺炎球菌に有効なワクチンです。この2つの予防接種を受けると、入院や死亡を大幅に減らすことができます。
肺炎球菌ワクチンの予防接種は、インフルエンザのように公的機関から案内などは来ませんが、内科などで受けることができます。65歳以上の方や慢性疾患をお持ちの方には両方の接種をお薦めします。
★結核
結核は結核菌によって引き起こされる病気です。空気感染しますが、発病するのはそのうち1〜2割で、発病してもきちんと治療すれば完治します。
実は、結核は過去の病気ではありません。WHOのデータによると世界の人口の3分の1が感染しており、2006年には新たに920万人が感染し、170万人が死亡しています。日本は先進国の中では対策が遅れていて、1日に120人が発病しているというデータがあります。また、2003年の京都の罹患率は全国第5位でした。
結核の治療で大切なことは早く発見し、治療を開始することです。長引く咳、微熱、寝汗があったら、結核を疑って医療機関を受診してください。
★百日咳
しつこく長引く咳は、「百日咳(ひゃくにちぜき)」の場合があります。
子どもの病気だと思われがちですが、最近は大人もかかることがわかってきました。
2週間以上咳が長引いたり、咳で夜眠れなかったり、咳と一緒に嘔吐してしまったら、百日咳かもしれません。また、百日咳は人にうつりやすい病気なので注意が必要です。
しつこい咳があれば、結核か百日咳を疑って受診してください。
★はしか
はしかは麻疹ウイルスによって起きる病気で、風邪のような症状に始まって、数日後口の中に「コプリック斑」というぶつぶつができ、こんどは赤いぶつぶつが全身にひろがり高熱が続きます。
日本ではみんながかかるものと思われていますが、千人に1人が死亡し、脳炎や肺炎を引き起こす重大な病気です。感染力が強いのが特徴で、昨年は全国的に小、中、高、大学で流行し、マスコミでも大きく取り上げられました。
アメリカやカナダでは絶滅宣言が出ていますが、日本は「輸出国」です。日本人の旅行者が海外ではしかを発症して足止めされたという話もあります。
はしかには特効薬や治療法がなく、防ぐには予防接種しかありません。日本では、2006年に1歳と小学校入学時の2回接種できる制度が始まり、2008年には中1と高3に対する接種制度が行われます。お子さんやお孫さんに勧めてください。
★破傷風
あまり聞かれたことはないと思いますが、年間30人から50人が破傷風に感染しています。土の中の破傷風菌が原因で、発症すると筋肉が硬直し、重症化した場合には呼吸困難など重篤な症状が出て命にかかわります。
ケガで受診すると、念のために予防接種することが多いのですが、予防接種の効力は10年です。庭いじりの好きな方などは、もう一度予防接種を受けておかれることをお勧めします。
★海外渡航先での感染症
洛和会音羽病院では「トラベルクリニック」を開設しています。
日本と衛生状態の異なる海外には、マラリアや狂犬病など、さまざまな注意すべき感染症があります。海外旅行される方、駐在される方に、国、地域に応じて「どんな対策が必要か」をアドバイスし、予防接種なども行っています。海外渡航前にはぜひご相談ください。