2008年11月18日

第14回らくわ健康教室「病は口から」

洛和会ヘルスケアシステムは毎月、幅広い地域の皆さまを対象に、京都の市街地・四条烏丸で健康教室を開催しています。
10月31日は、開催中の洛和メディカルフェスティバルの特別企画として、大阪歯科大学の北條博一客員教授に「病は口から」と題してご講演いただきました。


Rakuwakyoshitsu142「病は口から」と言うと、びっくりされるかもしれませんが、決してオーバーな表現ではありません。「感染症の元は口にある」と言ってもいいくらいです。落語に「風が吹けば桶屋が儲かる」という話がありますが、それと同じ理屈で、「口が悪くなると、回りまわって、いろんな病気になる」。まさに「口は災いの元」なのです。

歯あっての健康生活

健康寿命という言葉をご存知ですか。健康で自立した生活ができる期間のことですが、これが平均寿命と比べると男女ともに、5〜7年ほど短い。つまり5〜6年間は思うような健康的な生活ができないということです。この期間を何とか短くしなければいけません。健康で、楽しい生活を送るには「おいしく食べる」ということが極めて大事です。そのカギをにぎるのが歯です。歯に囲まれた内側を固有口腔といいますが、私たちは食べ物をまず歯で食み砕いて、歯の囲いの中で塊りをつくり舌やいろんな周辺の筋肉が複雑で高度な動きをして飲み込んでいます。この時、異物があれば排除し、甘いとか、苦いとか、いろんな味を感じています。
こうしておいしく食べるには、まず歯が大事です。噛み砕くこともできないし、歯がなくなると、塊りを作ることができず、嚥下障害(えんげしょうがい)を起します。嚥下障害とは食べ物や飲み物を飲み込むことが難しくなる障害です。歯というのがいかに大事かおわかりでしょう。80歳で20本は残そうと言われていますが、皆さん、今ある歯は失わないで欲しいものです。
さらに大事なことは、食べるという行動はすべて脳の働きと密接に関連しているということです。噛む、飲み込む、おいしい、まずい、固い、やわらかい、こんな運動や味覚、食感はすべて脳で感じています。歯がなくなって噛まなかったり、病気などの時、点滴だけで栄養をとろうとすると、脳は働きませんし、感触すら忘れてします。だから歯を丈夫にして、自分で口から食べることが大事です。味を感じるのは、舌背にある味蕾(みらい)というところから、「甘い」とか「辛い」とかの情報を脳に伝えているんです。だから、おいしく食べるためには舌もきれいにしましょう。

口は病の源流 いつも清潔に

Rakuwakyoshitsu143_2 実は口の中には細菌がたくさんいます。多くは病原菌としては弱いものですが、数が増えるとやっかいなことになります。口と心臓は近く、口の細菌が血管を通って心臓に入ると、すぐに全身に菌がめぐっていろんな病気を引き起こすわけです。
歯周病菌は特にやっかいです。歯周病にかかっていて、歯ぐきから血が出ると、その破れた血管から歯周病菌が吸い込まれます。歯周病の治療は早めにやってください。そしてかからないように、歯垢をきれいにしなければなりません。しかし、こびりついて歯石などになってしまうと歯みがきでは取ることができないので、歯科の先生や歯科衛生士などのプロフェッショナルに掃除してもらってください。
その他に口の細菌が引き起こすものとして、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)があります。誤嚥とは誤って気管に飲食物などが入ってしまうことですが、誤嚥性肺炎は飲食物ではなくだ液によって起こります。寝ている間に口の細菌がだ液とともに肺に流れ込むのです。特に夜は清潔にしてやすんでください。
口は病の源流です。いつも清潔にしましょう。


Rakuwakyoshitsu141 第2部には、元京都新聞編集委員兼論説委員の川端眞一氏をお迎えし、「“座”オーラル」と題して座談会を行いました。
会場からの「口臭はどうしたらなくなるのか」「矯正は歯に悪くないのか」などの質問に、北條教授が「舌や歯など口の中を清潔に保ち、歯に詰め物があっているかを確認して」「歯が弱くなることはない。若いうちに矯正することが多いが、老年期を迎えるために矯正する方もいる」など、一つひとつ丁寧に答えました。

 

ほかのらくわ健康教室の記事はこちら⇒らくわ健康教室 講演録3

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