2009年07月28日

第23回らくわ健康教室「長引く咳にご用心!〜その咳、大丈夫?」

洛和会ヘルスケアシステムは毎月、幅広い地域の皆さまを対象に、京都の市街地・四条烏丸で健康教室を開催しています。
7月17日は洛和会丸太町病院院長の二宮清が「長引く咳にご用心!〜その咳、大丈夫?」をテーマに講演しました。祇園祭の山鉾巡行の日でしたが、今回も満員の盛況で、皆さま、熱心に聴かれました。 


 

Dsc_0219web_3 咳にもいろいろな咳があります。風邪なら、たとえ流感でもしばらくすれば治りますが、今日は、長引く「やっかいな咳」についてお話します。

咳について

そもそも咳というのは、次のような仕組みで出るものです。気管支や鼻などの咳受容体が刺激されると、その刺激が迷走神経などを通じて延髄の咳中枢に伝えられ、ゴホンとなります。この迷走神経は耳や食道にもあります。それで耳の奥が刺激されても、咳がでることがあるのです。咳の引き金となる刺激には次のようなものがあります。

  1. 機械的刺激(異物、痰、腫瘍)
  2. 化学的刺激(刺激性ガス、タバコ、冷気)
  3. 炎症性刺激(細菌、ウイルス、アレルギー)

咳の原因は既往症や職歴、生活習慣などで、さまざまです。たとえば、

  1. 蓄膿症があれば、後鼻漏(こうびろう:鼻汁がのどに流れること)による咳
  2. ヘビースモーカーは、刺激性気体による咳
  3. 神経症の既往やストレスでは、精神的な原因の咳

などがあります。

また、咳が出る時間によってもわかることがあります。

  1. 朝出る咳は、鼻の病気
  2. 寝て数時間後は臥位(横になった状態)が関係する心臓病

などの特徴があります。

『やっかいな咳』について

最初に、風邪ならしばらくすれば治る、と話ましたが、「3週間」がひとつのメドです。Dsc_02132web
外来で診るやっかいな咳とは

  1. 長引く咳ほど原因が多彩
  2. 自然治癒少なし(ウイルス感染症<非感染症)
  3. 重大な疾患が混じる
  4. 胸部レントゲンに写らない

――もので、いつまでも咳止めで、経過観察というわけにはいきません。

また、よく「咳止めで様子を見ましょう」と言われることがあると思いますが、それではよくない咳があります。それは痰をともなう咳(湿性咳)です。痰の切れを薬などでよくして咳を抑えます。

やっかいな咳の例を挙げると、「1ヶ月以上も乾いた咳があり、明け方に目覚める。肺機能検の異常もなく、アレルギー疾患の既往歴もなく、強制呼出時の聴診でも喘鳴は認められない(気管支喘息や慢性気管支炎ではない)」という女性は「咳喘息」でした。

また、まれに胸部X線検査で肺に陰が写らない「咽頭・気管支結核」のケースもあります。

長引く咳への実践的対処法

最後に「長引く咳」には次の実践的対処法があります。

  1. 胸部画像検査で異常な陰ができる疾患を見つける(肺がん、肺結核、肺繊維症)
  2. 痰が出れば結核菌・細胞診検査をする(肺結核、肺がん)
  3. 肺機能検査で気道閉塞性疾患を見つける(喘息、肺気腫)
  4. 胸焼けがあれば胃酸分泌抑制薬使用する(逆流性食道炎)
  5. 鼻汁があれば、抗ヒスタミン薬使用する(後鼻漏)
  6. 何も無ければ、吸入ステロイド使用する(咳喘息)

 


次回のらくわ健康教室は8月21日(金)、「切らずに治せる脳神経外科手術“脳血管内治療”の時代」をテーマに開催予定です。詳しくは健康教室・イベント情報ページをご覧ください。

ほかのらくわ健康教室の記事はこちら⇒らくわ健康教室 講演録3

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