洛和会ヘルスケアシステムは毎月、幅広い地域の皆さまを対象に、京都の市街地・四条烏丸で健康教室を開催しています。
7月17日は洛和会丸太町病院院長の二宮清が「長引く咳にご用心!〜その咳、大丈夫?」をテーマに講演しました。祇園祭の山鉾巡行の日でしたが、今回も満員の盛況で、皆さま、熱心に聴かれました。
咳にもいろいろな咳があります。風邪なら、たとえ流感でもしばらくすれば治りますが、今日は、長引く「やっかいな咳」についてお話します。
咳について
そもそも咳というのは、次のような仕組みで出るものです。気管支や鼻などの咳受容体が刺激されると、その刺激が迷走神経などを通じて延髄の咳中枢に伝えられ、ゴホンとなります。この迷走神経は耳や食道にもあります。それで耳の奥が刺激されても、咳がでることがあるのです。咳の引き金となる刺激には次のようなものがあります。
- 機械的刺激(異物、痰、腫瘍)
- 化学的刺激(刺激性ガス、タバコ、冷気)
- 炎症性刺激(細菌、ウイルス、アレルギー)
咳の原因は既往症や職歴、生活習慣などで、さまざまです。たとえば、
- 蓄膿症があれば、後鼻漏(こうびろう:鼻汁がのどに流れること)による咳
- ヘビースモーカーは、刺激性気体による咳
- 神経症の既往やストレスでは、精神的な原因の咳
などがあります。
また、咳が出る時間によってもわかることがあります。
- 朝出る咳は、鼻の病気
- 寝て数時間後は臥位(横になった状態)が関係する心臓病
などの特徴があります。
『やっかいな咳』について
最初に、風邪ならしばらくすれば治る、と話ましたが、「3週間」がひとつのメドです。
外来で診るやっかいな咳とは
- 長引く咳ほど原因が多彩
- 自然治癒少なし(ウイルス感染症<非感染症)
- 重大な疾患が混じる
- 胸部レントゲンに写らない
――もので、いつまでも咳止めで、経過観察というわけにはいきません。
また、よく「咳止めで様子を見ましょう」と言われることがあると思いますが、それではよくない咳があります。それは痰をともなう咳(湿性咳)です。痰の切れを薬などでよくして咳を抑えます。
やっかいな咳の例を挙げると、「1ヶ月以上も乾いた咳があり、明け方に目覚める。肺機能検の異常もなく、アレルギー疾患の既往歴もなく、強制呼出時の聴診でも喘鳴は認められない(気管支喘息や慢性気管支炎ではない)」という女性は「咳喘息」でした。
また、まれに胸部X線検査で肺に陰が写らない「咽頭・気管支結核」のケースもあります。
長引く咳への実践的対処法
最後に「長引く咳」には次の実践的対処法があります。
- 胸部画像検査で異常な陰ができる疾患を見つける(肺がん、肺結核、肺繊維症)
- 痰が出れば結核菌・細胞診検査をする(肺結核、肺がん)
- 肺機能検査で気道閉塞性疾患を見つける(喘息、肺気腫)
- 胸焼けがあれば胃酸分泌抑制薬使用する(逆流性食道炎)
- 鼻汁があれば、抗ヒスタミン薬使用する(後鼻漏)
- 何も無ければ、吸入ステロイド使用する(咳喘息)
次回のらくわ健康教室は8月21日(金)、「切らずに治せる脳神経外科手術“脳血管内治療”の時代」をテーマに開催予定です。詳しくは健康教室・イベント情報ページをご覧ください。