2009年09月14日

第24回らくわ健康教室「切らずに治せる脳神経外科手術“脳血管内治療”の時代」

洛和会ヘルスケアシステムは毎月、幅広い地域の皆さまを対象に、京都の市街地・四条烏丸で健康教室を開催しています。
8月21日は洛和会音羽病院 脳神経外科副部長の大脇久敬(おおわき ひさゆき)医師が「切らずに治せる脳神経外科手術 “脳血管内治療”の時代」をテーマに講演しました。
残暑が厳しい日でしたが、今回も満員の盛況で、皆さま、熱心に聴いておられました。


切らずに治す時代へ

090821oowaki02_2 脳血管内手術の対象となる主な病気として、クモ膜下出血や脳梗塞などがあります。従来は髪の毛を剃って頭を開いたり、頸(くび)にメスを入れたりするしかなかったのですが、今では「切らないで治す」のが時代の流れになっています。そのため、手術前あるいは手術後の心理的、肉体的負担は、以前と比べ物にならないほど少なくなりました。
例えば頚動脈の狭窄を治療する「経皮的・頚動脈ステント留置術」の場合、順調であれば

1.手術後当日から食事が可能で、翌日から歩行可能。
2.全身麻酔の必要がなく、全身状態が不良の患者さんでも可能。
3.直接頚部を切開することで大きな傷が残ったりしない。

などのメリットがあります。もちろん、新しい治療ゆえに「追跡検査が必要」といった問題もありますが、患者さまの、肉体的、精神的負担は大幅に軽減されつつあります。

血管内治療、脳血管内手術とは

脳血管内手術は、脳血管外科医にとっては基本的手技の脳血管造影法の延長として、より小径の「マイクロ・カテーテル」を末梢血管へ誘導することで、開発されました。
実際の方法は、まず、大腿部の太い動脈(太ももの付け根)に、ボールペンの軸大(2mm前後)のカテーテルを挿入します。その中に、今度は、シャープペンシルの芯程度(0.5mm)のマイクロ・カテーテルを通し、病巣へと進め、狭い部分はバルーン(風船)で拡げ、詰めたい部分はコイルなどで充填、閉塞(塞栓)して、治療します。

具体的な病気と治療について

(1)(頚部内)頚動脈狭窄症

090821oowaki01 主に、動脈硬化などが原因で、頚動脈の壁にコレステロール、繊維、血栓などが少しずつたまり、狭窄する病気です。
かつては頚動脈内膜剥離手術など、頸や動脈を切開して治療していましたが、この方法は患者さまの負担の割りに危険性が大きく、熟練した一部の医師が行っているだけでした。
血管内治療では、先ほども述べたように足の付け根から管を入れ、頚動脈まで誘導し、その後、細い部分を風船で広げ、ステントという金属の網の筒で支えて再び血管が狭くなるのを防ぎます。脳外科医にとって慣れた手技の発展したものであり、体にメスを入れないため、格段に負担が少ないわけです。

(2)クモ膜下出血など頭蓋内出血性疾患

従来は専用ドリルを用い、頭蓋骨に穴をあけて行う、大掛かりな手術でした。
「瘤嚢内コイル塞栓術」という血管内手術では、マイクロカテーテルを挿入し、そのカテーテルを通してコイルを脳動脈瘤の中に詰め、出血を防ぎます。
開頭手術に比べて肉体的負担が少なく、高齢者などにも行える、体に優しい手術です。

(3)その他の疾患

脳血管内治療は、脳腫瘍や、耳鼻咽喉科・眼科で主に治療されるような頭頸部疾患にも応用でき、効果を発揮しますので、当院では他の診療科の腫瘍などに対しても行っています。

まとめ

血管内手術の長所をいろいろ述べましたが、新しい治療なので短所もあります。担当の医師より、病変の出来ている場所やその形、そして、治療の必要性、治療方法(開頭手術や血管内手術)と、その効果などについて説明を受け、十分に理解してください。その上で、最も適切な治療法を選択することが大切です。

ほかのらくわ健康教室の記事はこちら⇒らくわ健康教室 講演録3

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