洛和会ヘルスケアシステムは毎月、幅広い地域の皆さまを対象に、京都の市街地・四条烏丸で健康教室を開催しています。
11月20日は洛和会音羽病院 病理診断科部長の安井 寛(やすい ひろし)が「切病理医の目〜木を見て森も見て〜」をテーマに講演しました。
冬も近づき、少し寒い日でしたが、皆さま、熱心に聴いていました。
★病理医とは?
――講演の冒頭、映画「ドクター」のワンシーンが上映されました。主人公が病院を受診し、検査を受け、医師に「腫瘍があった」と告げられる場面です。
映画には登場しませんでしたが、主人公の体の一部(組織)を検査して、“悪性腫瘍”と判断したのは、実は病理医です。
この映画だけではなく、実際にもあまり表には出ませんが、私たち病理医は、病気の診断を確定する重要な任務を担っていて、次のような仕事をしています。
- 病理組織診断(採取した病変組織の一部をくわしく調べて診断する。これが、確定診断、または最終診断となる)
- 細胞診(たん、尿や気管支などの粘膜から採ったものなどに含まれる細胞を調べる)
- 病理解剖(亡くなられた方の全身をくわしく調べ、生前の診断、治療の検証、死因推定を行う)
洛和会音羽病院のように、病院に病理医がいると、手術中に組織診断が迅速にできるため、手術で悪い部分だけをなるべく小さく切除したり、治療方針を変更するといったことが可能になります。また、各診療科の医師が集まって治療方針を話し合う際、病理医がいると、必要に応じたきめ細かい治療が行えます。
★細胞とがん細胞
病理医が一番良く見るのは、細胞です。細胞は細胞分裂によって数を増やしながら(増殖)、さまざまな形と機能を持った細胞に分かれ(分化)、壊死あるいはアポトーシスと呼ばれるプログラムされた細胞死によって、数のバランスをとっています。
それに対し「がん」細胞には、次の3つの特徴があります。
- 周囲と調和のない増殖
- 死なない
- 浸潤や転移をする
病理の目で見ると、細胞の姿形が正常と異なる、正常ではありえない構造をとる、間質・血管・リンパ管への浸潤をするため、がん細胞と分かります。
――この後、「病理医の目を体験」と題して、取り出された臓器や組織をスライスし、顕微鏡で細胞を見るまでの一連の流れが写真で紹介されました。顕微鏡で見るがん細胞に、参加者は熱心に見入りました。
★これからの病理医
病理診断は、組織や細胞に現れた病変を、病理医が顕微鏡を通して詳細に観察して行うもので、胃腸・肺・乳腺など、あらゆる臓器を対象にしています。特にがんに対しては、より有効な治療を行うために、病理診断は欠かすことができません。当院では将来的に「見える病理医」として、標本を見ながら患者さまに説明することも検討しています。