2010年06月23日

第12回らくわ健康教室「C型肝炎のすべて」

6月18日は、洛和会音羽病院 消化器内科の肝臓専門外来を担当する医師で、順天堂大学医学部・大学院医学研究科教授の市田隆文(いちだ たかふみ)が、薬害肝炎訴訟などでよく耳にする「C型肝炎」について講演しました。実態や症状、治療法などを、わかりやすく説明し、「C型肝炎は適切な治療で治る病気です」と述べました。市田教授は、わが国の肝臓病治療の第一人者で、皆さん熱心に聴いていました。


講演の要旨は以下の通りです。

肝細胞がんによる死亡と原因の年次推移

B型肝炎から肝細胞がんへの移行数はほとんど変わっていませんが、C型肝炎からの移行数は、このところピークは過ぎたものの、増え続けてきました。
なぜか、肝臓がんの死亡率は西高東低になっており、C型肝炎の感染者率も同様です。

肝臓がん発生の危険率

  • B型慢性肝炎患者・・・・・・健康人の380倍
  • C型慢性肝炎患者・・・・・・健康人の1,000倍
  • 肝硬変患者・・・・・・・・・・・健康人の4,700倍

しかし、心配は要りません。きちんと治療すればすべて治療でき、治れば健康人と同じです。ただし、治療しないと危険です。

C型肝炎感染者数の推移

C型肝炎は明治時代以降に欧米の影響で広がり、特に太平洋戦争時や、戦後のヒロポン注射、売血、輸血などで急激に感染者数が増加しました。
1964年にはアメリカ大使が暴漢に襲われた際の輸血が原因と思われる肝炎を引き起こしたライシャワー事件が起こりました。第五福竜丸被爆事件では、乗組員ほぼ全員が、水爆被災後の治療で輸血を受け、その後C型肝炎になった例もあります。

C型肝炎の治療

Rakuwa100618C型肝炎治療の究極の目的は肝がん撲滅です。もちろん、慢性肝炎から肝硬変への進展抑止も必要です。
C型肝炎の治療として、まずC型肝炎ウイルスを体から排除するためのインターフェロン治療が考えられます。インターフェロンの効果は、C型肝炎ウイルスの遺伝子型(Genotype)によって異なりますが、かつてと比べると格段に進歩しました。
C型肝炎のピークは65歳くらいで、この年齢で(までに)治療すれば、治癒します。
ただ、インターフェロン治療は体に負担がかかる、正直つらい治療ですので、早く始めることをおすすめします。

医療費助成制度が充実

インターフェロン治療には、かつて毎月7〜8万円の自己負担が必要でしたが、2008年から助成制度がはじまり、月に1万円、多くて2万円程度の自己負担になり、治療が受けやすくなりました。

副作用

C型肝炎の治療中におこる副作用には、不眠、うつ状態、不安焦燥などがあります。

C型慢性肝炎の進行を遅らせるには

  • 多量の飲酒をやめること
  • 肥満に注意・・・・・・内臓脂肪を落とすことが大切です。(C型肝炎は脂肪肝になりやすい)
  • 適度な運動・・・・・・筋肉は第二の肝臓で、肝臓の働きを助けます。
  • 鉄分をとりすぎないこと
    あさり、納豆、ひじきなど鉄分が多い食品は「肝臓に良い」といわれていますが、たくさん食べ続けるのは逆効果です。

最後に

  • 症状がないので・肝機能が正常なので「様子を見よう」の言葉を信じてはいけません。
  • 副作用を恐れず、先ず一度治療にトライしてみよう。そしてきつければ止めよう。
  • 医者任せでなく、「セルフディフェンス」。
    自分の身は自分で守る、医者はそれをアシストするだけですよ。
  • 一回ダメでも、次々に薬が出てきます。決してがっかりしないこと。

もう一度、「C型肝炎は適切な治療で治る病気です」


ほかのらくわ健康教室の記事はこちら⇒らくわ健康教室 講演録3

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