7月16日は、洛和会音羽病院 画像診断治療科 部長の久保聡一(くぼそういち)が、「体内の病気を、できる限り体に傷を残さずに、やさしく治す」として注目されるIVR(インターベンショナル・ラジオロジー)について講演しました。CTやMRIなどの画像診断は、最近ではかなり知られていますが、「画像診断治療科」は全国的にも珍しいそうで、具体的な治療方法を、皆さま、興味深く聴いていました。
講演の要旨は以下の通りです。
IVRって何?
IVRとは一般的に「放射線診断技術の治療的応用」と難しいことばが使われますが、エックス線透視や超音波像、CTを見ながら、体内に細い管(カテーテルや針)を入れて病気を治す、新しい治療法です。
体に与える負担が少なく、入院期間も短縮できるため、高齢者や状態の悪い進行がんを含めたがんの治療に広く応用されています。また、緊急状態(大出血)からの救命や血管などの閉塞、動脈瘤の治療にも有効です。
治療法
大別すると血管IVR(動脈塞栓術、リザーバー留置術、ステント留置術など)と
非血管IVR(生検、胆管ドレナージ、結石除去術など)があります。
さらに具体的な治療法として次のようなものがあります。
- 肝臓がんの治療法
(1)がんを兵糧攻めにする動脈塞栓術
(2)持続的に薬を入れる「リザーバーを用いた抗がん剤投与」
などがあります。 - 外傷性出血の動脈塞栓術
交通事故など重症の外傷で、動脈が切れて大出血し生命の危機もある、というケースで用いられます。外科手術もおこないますが、IVRの動脈塞栓術で止血します。 - 喀血の動脈塞栓術
カテーテルを気管支動脈に入れて、血管を詰めます。 - 肺動静脈ろうの治療
- 肝動脈破裂の治療
- 動脈血栓の治療
- 上腸間膜動脈血栓症の治療
動脈が血栓で詰まると、腸が腐ってしまうため、カテーテルを動脈まで入れて、血栓を吸い出したり、血栓を融解させます。
このようにさまざまな分野で、効果をあげています。
まとめ
現在IVRは放射線科医が中心になって行っています。IVRを安全に実施するには、高度な技術が要求されます。IVRの専門医は全国で、600人余りです。
患者さまにも積極的に医療に参加していただく時代になっています。
画像診断医が患者さまにお会いすることは少ないですが、医療の質を支える存在です。
ぜひ病院で「画像診断に画像診断専門医がかかわっているか」お尋ねください。
また、「画像診断専門医や、放射線治療専門医の常勤医がいるか」も確認してください。