10月15日は、洛和会音羽病院 呼吸器科 副部長の、土谷 美知子(つちや みちこ)が、タバコによる代表的な疾患であるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)につ いて講演。病気の症状や治療法だけでなく、禁煙の成功法もわかりやすく説明しました。会場には喫煙経験者や、いまなお喫煙している方もみえており、皆さま熱心に聴いていました。
講演の要旨は次の通りです。
「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」とは?
聞きなれない病名かもしれませんが、タバコなど(日本の場合はまずタバコですが)の有害物質を吸入することにより、除々に咳、痰、息切れがひどくなる病気です。
「肺気腫」や「慢性気管支炎」は聞かれたことがあると思いますが、こうしたタバコが原因で肺やのどなどにいろいろな症状があらわれる病気を「COPD」という統一した病名で呼ぶようになりました。
肺の仕組みについて
口から取り込まれた空気は気管、気管支などを通り、最終的には、肺のきめこまかな「肺胞」にたどりつきます。
肺胞の表面には、無数の毛細血管があり、酸素や炭酸ガスの交換作業をおこないます。
正常な肺では、弾力性のある肺胞が伸び縮みして呼吸します。
しかし、タバコを吸うと、タバコの有害物質により、気道に炎症が起き、気管支が狭くなり、分泌物が増え、肺胞が破れて、弾力性がなくなります。そして、息が正常に吐けなくなります。
この息を吸っても、十分に吐き出せない状態を「閉塞性換気障害」といいます。
喫煙者に特徴的な肺機能障害です。
喫煙を続けると慢性に
タバコを吸い続けることにより、肺に慢性的に閉塞性障害が起こり、呼吸がしにくくなる肺の病気(疾患)が、「慢性閉塞性肺疾患」(COPD)というわけです。
COPDの症状
- 階段の上り下りでの息切れ。
- せきやたんが出る。
- かぜをひきやすく、治りにくい。
- 呼吸のたびにゼーゼー、ヒュー、ヒューがある。
COPDの怖いところ
- 肺機能の低下。
- いったん壊れた肺胞はもとに戻らない。
- タバコを吸い続けると、さらに悪化する。
怖いのは「破壊された肺胞は元に戻らない(=COPDは治らない)」ことです。しかし「禁煙すると、肺機能の低下が抑えられます」。
「症状があるなら一刻も早く」「ないなら、今のうちに」⇒禁煙!
「禁煙」―その成功のカギは?
- きっぱり、やめる。
- 灰皿やライターも処分。
- 目標設定は、高すぎず、低すぎず。
- 禁煙して良かったことを見つける。
- なかなかやめられない人には、「禁煙治療薬」もあります。
COPD治療の三本柱
- 薬物療法
- 運動療法
残された肺機能を最大限活用して体力を向上させるもので、「足を鍛える」のが効果的です。 - 食事療法
さらにこれからの季節は「かぜ、特にインフルエンザを予防してください」。かぜやインフルエンザにかかると、COPDが悪化します。