12月10日は、洛和会音羽病院 消化器内科 部長の飯沼 昌二(いいぬま しょうじ)が、死亡率や罹患(りかん)率ともに増加傾向にある「大腸がん」について講演しました。早期発見すれば、比較的治療しやすいがんであることから「便潜血検査を、正常でも、毎年受けてほしい」と強調しました。
飯沼部長の講演要旨は次の通りです。
大腸がんの動向
大腸がんの罹患率は、毎年増加傾向にあり、死亡率も2009(平成21)年では、男性は、肺がん、胃がんに次いで第3位、女性では第1位になっています。
大腸は
口、食道、胃などを経て到達する一番最後の消化管で、水分の吸収や、腸の運動によって、排便を行う器官です。
あらためて、がんとは何か? を説明すると
- がんとは、体の細胞の一部に異常が起こり、勝手に増え続け、周りの正常細胞を破壊しながら無制限に増殖するできものです。
- ほかの臓器へ転移します。
- たちの悪いできものという意味で「悪性腫瘍」「悪性新生物」といいます。
大腸がんのでき方
- 「良性」のポリープが大きくなって、がんになります。大きくなればなるほど、がんになる確率は高いので、ポリープは早く取っておいた方がいいのです。
- いきなり悪性腫瘍として粘膜にできる場合もあります。
大腸がんの症状(がんができる場所によって、症状は異なる)
- 出血
―便に混じる。貧血。 - 便通異常
―このごろ便秘になった、下痢が続く、便が細い、残便感など。 - 腸閉塞
―お腹が張る、食欲がないなど。
大腸検査には
- 注腸検査:バリウムをおしりから注入してレントゲンで検査する
- 大腸内視鏡検査
があります。
便潜血検査
- 便に血液がまじっているかを調べる検査で、目に見えない程度の血液も検出することができます。検査は簡単ですが、40歳以上の5人に1人しか受けていないのが、現状です。
- 1,000人が受けると、100人が陽性といわれ、そのうち実際に大腸がんのある人は2〜3人、さらに早期がんの割合はそのうちの6〜7割と言われています。
- 大腸がんの6割はこの便潜血検査で見つかっており、有効な検査法です。
- 便潜血検査で異常があれば、必ず精密検査(主に大腸内視鏡検査)を受けなければなりません。
- 1回目の便潜血検査で、拾い上げられなかった大腸がんの4分の3はその後の検査で発見され、その70%は早期がんという報告があります。検査は毎年受けることが重要です。
治療と進歩
がんの進行に応じて、適切な治療を行いますが、ここ10年で大きく進化しています。
まとめ
- 早期発見には便潜血検査が重要であり、それも毎年受けることが必要です。
- 便通異常や血便があるときは、ちゅうちょせずに、大腸内視鏡検査を受けましょう。
- 普段からの生活に気をつけ、がんと診断されたら、患者さまに合わせたさまざまな治療法があるので、積極的に治療を受けてください。