5月20日に開かれたらくわ健康教室は、洛和会音羽病院 小児科 部長で、医師の大田 和美(おおた かずみ)が、テレビやテレビゲームが、子どもの発達や行動に与える影響について講演しました。大田講師はゲームの危険性を具体的に解説、特に「ゲーム中は、覚せい剤注射時と同等のドーパミンが脳内に放出されており、危険」と警告しました。
大田講師の講演要旨は次の通りです。
人間らしさを形成する脳の前頭葉の、シナプス(神経細胞同士の結合)密度は3〜4歳がピークであり、この時期、脳の活動は最も活発で、無限の可能性を秘めています。また、心理発達も、小学校の低学年から高学年にかけて急激に発達するため、重要な時期です。
子どもたちの現状
- メディア漬け
就学前の子どものテレビ視聴時間は、1日平均、約1時間半で、ゲームとの接触時間も年齢とともに上がっています。 - 攻撃的で衝動的
言葉遣いが乱暴で、注意されるとすぐにキレてしまう。同級生に大けがをさせてしまったり、命の大切さを理解できないなどの特徴があります。 - 実行機能の低下、無気力・無関心
落ち着き・根気がない。投げやり、学校に行けないなどの特徴があります。
いったい、子どもたちに、何が起こっているのでしょうか?
- カナダで、テレビが村に普及して2年で、子どもが暴力的に変わってしまったという事例がある。
- 幼児期にテレビの視聴時間が長かったり、ついたままの時間が長いと攻撃的になるというデータがある。
- 学童期の暴力的な番組視聴は、成人してからの暴力的犯罪および子育てにおける虐待に関与し得る。
脳の中で何が起こっているのでしょうか?
- ゲーム中はドーパミン(快楽物質)が放出される
→快感を求めてゲーム依存症(中毒状態)になる - 人のことを思いやったり、行動にブレーキをかけたりする脳の機能が弱くなる
- 衝動的行動をするときに働く脳の機能が活発になる
どうしたらいいのでしょうか?
- メディア依存症にならないためには?
・ ゲームを与えない(その理由を説明する)
・ 与える場合はよく話し合って、家のルールを決める
・ 幼児期にはゲームをさせない - 日本小児学会の提言
・ 2歳以下の子どもにはテレビ・ビデオを長時間見せないようにしましょう
・ テレビはつけっぱなしにせず、見たら消しましょう
・ 授乳中や食事中はテレビをつけないようにしましょう
・ 子ども部屋にはテレビ・ビデオを置かないようにしましょう - 脳(前頭前野)を元気にするには(かつては皆やっていたことですが)
・ 運動をする
・ 外で元気よく遊ぶ
・ 十分な睡眠をとる
・ 本をたくさん読む
・ 手紙や作文などの文章を書く
・ 自然とふれあう
などが重要です。