6月10日に開かれたらくわ健康教室では、洛和会音羽病院 副院長で、洛和会京都医学教育センター 所長の、酒見 英太(さけみ ひでた) 医師が、「不眠」とその解決法について講演しました。酒見講師は、「人類は誕生以来、夜明けとともに目覚め、日暮れとともに眠りについていた」と人類の歴史から説き起こし、「わずか50年ばかりの間に、夜更かしと運動不足になった」と、現代人の不眠の基本的な原因を説明。「安易に薬物やアルコールに頼らず、日光とともに行動し、体をもっと使うべきだ」と強調しました。
酒見講師の講演要旨は次の通りです。
日本人の睡眠時間は、ほかの先進国と比べ、就寝時刻が遅いせいで短いのが特徴で、特に、受験勉強に忙しい10歳代後半と、働き盛りの30〜50歳代で顕著です。
「眠っていない」といっても・・・
- 生活上の必要(または習慣)から、早く床につかない=単なる睡眠不足
- 眠りたくならない=躁病などの興奮状態
- 眠りたいし眠る時間もあるのに、十分に眠れない=不眠
があり、不眠のせいで、日中の体調がすぐれないなら「不眠症」ということになります。
不眠のタイプ
- 入眠障害
- 中途覚醒
- 早朝覚醒
- 熟眠障害
があります。
不眠になる要因
- 明るすぎる、騒がしい、暑い、寒いなどの環境要因
- 痛み、かゆみ、息苦しいなどの身体要因
- 心配ごと、悩みなどの精神要因
- タバコ、アルコール、夜更かしなどの生活習慣要因
身体要因の場合は、原因疾患に対する治療が必要なので、ぜひ受診してください。
精神要因では、うつ病である場合、最悪自殺に至る場合があるため、これも受診が必要です。
自分でできる、不眠の一般療法(非薬物療法)
朝・日中・夕方は
- 何時に寝つけようが、起床時刻を一定にする。
- できる限り、多く日光を浴びる。
- 毎日、軽く汗ばむ程度の運動をする。
- できるだけ昼寝をしない。(するなら午後3時までに、30分以内で)
- 夕食以降にカフェイン、タバコ、アルコールを飲まない。
- 熱い入浴は就寝の90分前までに済ませる。寝る前なら、ぬるい風呂に。
就寝時には
- 環境と寝具を快適な状態にする。(耳栓、アイマスクなど)
- 眠くなるまでは床に入らず、ソフトなBGMを聞いたり、柔らかな光の下で本を読む。
- 空腹があれば温かく甘い飲み物を。
- 心配事があれば、翌日に対処する計画をとにかく立てておいて、寝床では考えないようにする。
- 就寝前のリラクゼーションや、自己暗示法(自律訓練法)を覚える。
- アロマ、ネイチャーサウンド、抱き枕などを試してみる。
- たとえ寝つけなくても、体は休まっていると考えて力を抜く。
などが効果的です。
寝酒は危うい
アルコールは催眠作用をもちますが、リバウンドで熟眠を妨げます。夜間尿を増加させ、アルコール依存症にもつながります。
不眠の対症療法
薬物療法はあくまで「奥の手」と考えるべし。まずは一般療法(非薬物療法)を複数同時に試してください。
薬物は、飲み続ければ必ず依存が起こり、耐性が起こることも。ましてアルコールと混ぜることは絶対しないこと。健忘や呼吸抑制、ふらつきなどを来して、極めて危険です。