6月17日に開かれたらくわ健康教室は、洛和会音羽病院 泌尿器科 医長で、医師の擣木 立(うつぎ りゅう)が、泌尿器科の診療内容や、取り扱う「がん」について講演。加えて、どんなときに泌尿器科を受診すれば良いかについてもわかりやすく説明しました。
擣木講師の講演要旨は次の通りです。
泌尿器科は手術をするので、「外科」に属します。
前立腺肥大症といった慢性疾患を薬で治療したりするので、内科的な部分も多いのですが、がんや結石などの手術を行うので、基本的に外科です。
泌尿器科で診るのは?
膀胱や尿道、前立腺などがよく知られていますが、副腎や腎臓、精巣など、腎臓周辺から外陰までの広い範囲を扱います。
泌尿器科の「がん」って?
- 腎臓
- 尿管
- 膀胱
- 前立腺(男性のみ)
- 精巣(※卵巣は婦人科)
にできるがんが一般的です。
膀胱がん
泌尿器科で一番よく目にする「がん」で、洛和会音羽病院 泌尿器科で行われる主な手術の3割程度は膀胱がんに対するものです。
- 症状は?
有名なものは無症候性血尿。痛みなど、ほかの症状はなく、膀胱がんの2割前後に見られます。(尿路結石症や前立腺肥大などの良性疾患でも見られることがあります)
ほかによく見られるのは、膿尿(尿のよごれ)が続く、頻尿、残尿感が続くなど。 - 健診で尿潜血を指摘された場合
これで膀胱がんが見つかる可能性は低く、「尿潜血=がん」ではありません。
しかし、もちろん精査は必要です。もし同時に尿たんぱくもあれば、腎臓内科を受診してください。 - 検査は?
膀胱の中をカメラで見る膀胱鏡、尿を顕微鏡で調べて、がん細胞や結石のかけら(結晶)などをチェックする尿細胞診、加えて、エコー、CT、MRIなどの画像検査があります。 - 治療は?
一般的にはまずTUR-BT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)で、可能ならば腫瘍を完全切除します。その後、がん細胞を確認し、確定診断となります。根が深く、腫瘍が切除できない場合は、TUR-BTは止血および組織採取が目的となり、治療としては膀胱全摘術、BCG膀胱内注入療法、化学療法、放射線療法、などを選択することになります。
前立腺がん(男性)
50歳を過ぎたら前立腺がんを気にしましょう。(親族でなった方がいる場合は特に気にしてください)
- 症状は?
“ない”ことが多く、だからこそ健診が大切です。 - 検査は?
1にも2にも、PSA検査です。PSAとは、前立腺から分泌される特異抗原のことであり、血液中の濃度を測定することによって、前立腺がんが疑わしいかどうかを調べられます。最近は人間ドックなどの採血でも、オプションとして測定してくれます。ほかにもエコーやMRIなども有用です。 - 治療は?
一般的なのは手術療法(開腹または体腔鏡による)、放射線療法、ホルモン療法、化学療法です。ホルモン療法は、男性ホルモンを押さえ込むことで前立腺がんの勢いを押さえる治療法です。前3つの治療効果が十分得られなかった場合に化学療法を用いることがあります。
こんな時は泌尿器科へどうぞ
- 痛くもなんともないのに血尿が出た。(日ごろの尿の色にも気を遣いましょう)
- 健診で尿潜血を指摘された。
- 頻尿、排尿時痛が続く。
- 前立腺がんが心配。
- (男性で)尿が出にくい、尿の勢いがないなど。