8月9日に開かれたらくわ健康教室は、洛和会音羽病院 総合診療科 兼 感染症科 部長で、医師の神谷 亨(かみや とおる)が、食中毒について講演。なぜ夏に食中毒が多いのか、食中毒を起こす細菌の特徴と症状などを詳しく解説し、その予防方法も伝授しました。各地で、生肉を食べたことによる大きな“食中毒事件”が起きていることもあり、参加された方々は熱心に聴いておられました。
神谷講師の講演要旨は次のとおりです。
どうして食中毒は夏に起きやすいの?
1年中いつでも起きる可能性はありますが、多くの食中毒菌は、25℃以上の温度で発育が盛んになり、30〜40℃で最も活発に繁殖します。 一方、夏バテで体力が低下すると、食中毒菌の攻撃に簡単にやられてしまいます。 実際、6月〜9月にかけての4カ月間に起きる食中毒の件数が、1年の食中毒件数全体の7割を占めます。
夏は特に、カンピロバクターなどが原因の「細菌性食中毒」に注意しましょう。食中毒のなかでも、細菌性食中毒が65%と大半を占めています。
カンピロバクター食中毒とは?
カンピロバクターとは、鶏、牛、豚の腸管内に生息している細菌です。
わが国で発生している食中毒で発生件数が最も多いのが、このカンピロバクターが原因の食中毒です。
カンピロバクター食中毒の危険性のある食べ物
→鶏の刺身、鶏わさ、ユッケ、牛の生レバー など
「新鮮だから生でも安全」は間違いです
カンピロバクターは鮮度の良い肉からも検出されます。
少量の菌で発症するのが特徴で、潜伏期間は2〜7日と長く、子どもや高齢者の場合、重症化することが多いです。
腸管出血性大腸菌(O157、O111など)
先日、焼肉チェーン店で集団食中毒が発生、多くの死傷者が出ました。その患者から検出されたのが腸管出血性大腸菌O111(一部O157)です。腸管出血性大腸菌は牛などの動物の腸管内に生息しています。
潜伏期間は比較的長く(1〜14日、平均3〜4日)、少量の菌で発症するのが特徴です。増殖時に産生するベロ毒素により、血便を含む下痢や激しい腹痛、溶血性尿毒症症候群を併発し、意識障害に至ることもあります。特に子どもや、高齢者は重症化しやすいので、注意してください。
肉は十分火を通し、生肉や加熱不十分な肉は食べないようにしましょう。
そのほかの食中毒の原因
→サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌、ウエルシュ菌、セレウス菌、腸炎ビブリオ、ノロウイルス、ボツリヌス、テトロドトキシン(ふぐ毒) などがあります。
家庭でできる食中毒予防の6つのポイント(厚生労働省)
1.食品の購入
- 消費期限などの表示をチェック
- 肉、魚はそれぞれ分けて包む(できれば保冷剤などと一緒に)
- 購入したら、寄り道せずに真っすぐ帰る
2.家庭での保存
- 帰ったらすぐ冷蔵庫へ(冷蔵庫の中身は7割程度に)
- 冷蔵庫は10℃以下、冷凍庫はマイナス15℃以下に維持する
- 肉、魚は汁がもれないように包んで保存
3.下準備
- 冷凍品の解凍は冷蔵庫で
- こまめに手を洗う
- 肉、魚を切った包丁は熱湯をかけておく。ほかの器具やふきんも洗って消毒する。
- 肉、魚は生で食べる食材からは離しておく
- 野菜もよく洗う
- ゴミはこまめに捨てる
4.調理
- 台所は清潔に
- 作業前に手を洗う
- 加熱は十分に(食材の中心部分の温度が75℃の状態で1分間以上がめやす)
- 電子レンジを使うときは、均一に加熱されるようにする。
- 調理を途中で止めた場合は、食品をいったん冷蔵庫へ
5.食事
- 食事の前に手を洗う
- 盛り付けは清潔の器具、食器を使う
- 長時間室温に放置しない
6.残った食品
- 手洗い後、清潔な器具、容器で保存
- 時間がたち過ぎたり、ちょっとでも怪しいと思ったら、思い切ってすてる
- 早く冷えるように小分けする
- 温め直すときは十分に加熱する(めやすは75℃以上)