9月6日に開かれたらくわ健康教室は、洛和会音羽病院 京都口腔健康センター センター長で、歯科医師の横江 義彦(よこえ よしひこ)が、歯と口の中(口腔)の健康が、体全体の健康にどのように関わっているかについて講演。「歯・口腔とは一生を通じた長い付き合いになります。いつまでも、若く、楽しく暮らすためには、口腔ケアと口腔の健康が欠かせません」と強調しました。
横江講師の講演要旨は次のとおりです。
人の一生は歯・口腔との長いつきあいです
1)乳児期
口から食べる(経口摂取機能)準備として、
- 授乳を通じての口腔機能の発達
- 指しゃぶりや玩具なめなどによる、口への触覚刺激による哺乳反射(口に触れるものに吸いつこうとする反射)の消失
などを促します。
2)幼児期〜学童期
歯磨きの習慣をつけ、むし歯、口腔悪習癖を発見し、解決しなければいけない時期です。
今の子どもが、むし歯にかかっている率は、1950年代と比べ、3分の1ほどに減っています。
3)思春期・青年期
この時期の特徴的な病気は
- 顎関節症(あごの周りの関節の異常)
- 歯列不正(悪い歯並び)と顎変形症
- 親知らずの埋伏(歯肉の中に埋まっている状態)
などです。
特に、埋伏歯(まいふくし)は、歯の周囲炎をしばしば起こし、命に関わる炎症を起こす危険性もあります
4)壮年期
歯周病に要注意 ―命に関わることも
歯周病になると、歯周ポケット(歯と歯茎の境目の溝)を介して、毒素が血液中に侵入し、血中の毒素、炎症物質が増え、体内に炎症が起きます。結果、糖尿病の発症・悪化、脳卒中、気管支炎、肺炎、心臓病、早産、低体重児出産など、さまざまな合併症を引き起こします。
5)高齢期 口腔ケアによる、肺炎や口腔がんの予防が重要です。
現在、平均62歳とされる頭頸部がんの発症年齢に、団塊の世代が達し始めているため、今後、頭頸部がんの患者数の増加が予想されます。
口腔ケアの効果
- 人工呼吸器を付けておられる方の、肺炎、誤嚥性肺炎、発熱、菌血症・敗血症の予防
- 口臭予防、味覚の維持・改善、摂食嚥下(えんげ)障害の改善、食欲増進による体力維持・回復、言語の明瞭化
患者さまの口腔ケアを行うことが、肺炎をはじめ多くの合併症の予防につながり、全身機能を高め、入院日数の短縮につながるといわれています。特に、肺炎の発症率は、口腔ケアを行うことで、半分に減少するというデータがあります。
口腔の健康から体の健康へ 〜いつまでも若く楽しく〜
- 8020運動
食べる楽しみをあきらめないために、80歳で20本の歯を残しましょう!
(20本以上の歯があれば、食生活にほぼ満足することができるといわれています) - 「噛めること」は体と心の健康の証
食べることのほかに、人との意思疎通に大事な役割を果たすのが、歯と口腔の機能です。また、よく噛んで食べることは、認知症の予防にもつながります。