9月27日に開かれたらくわ健康教室は、洛和会音羽病院 総合女性医学健康センター 所長で、医師の佐川 典正(さがわ のりまさ)が、女性が、出産、更年期、子宮がんなどの“難関”を乗り越え、健康で豊かな人生を送る方法について講演しました。この日は、女性の参加者が数多く目立ちましたが、男性も「娘や妻に伝えよう」と熱心にメモをとっていました。
佐川講師の講演要旨は次のとおりです。健康な赤ちゃんを産むために
定期的に妊婦検診を受けて、早産や胎児発育不全を防ぎましょう。
「小さく産んで大きく育てる」と言われていることは、正しいことではありません。
<妊娠に特異的な異常>
妊娠初期・中期・末期と、時期によって、子宮外妊娠、切迫早産・早産、妊娠高血圧症候群などさまざまな異常が起きることがあります。切迫早産
臨床症状によって診断します。早産を防ぐために、早急に治療を開始します。
早産児の合併症には、
- 新生児呼吸障害→死亡するケースも
- 精神発達遅延
- 未熟児網膜症→視力障害・失明
- 脳性まひ(虚血性脳障害)
- 慢性呼吸器疾患
などがあります。
切迫早産の治療の原則は、早産の原因(感染)の治療・予防のための薬物療法です。
妊娠高血圧症候群(いわゆる妊娠中毒症)
妊娠20週以降に高血圧(140/90mmHg以上)が認められた場合に、妊娠高血圧症候群といい、たんぱく尿を伴うときは、妊娠高血圧腎症といいます。
妊娠高血圧症候群の母体の重大合併症には、
- 脳出血
- 胎盤早期剥離
- 腎機能障害
などがあり、 これが胎児の重大合併症を引き起こし、胎児の発育不全や死亡につながります。また、成人後の生活習慣病の増加が指摘されています。
更年期を上手に乗り切るために
<更年期障害>
更年期障害とは、「特にどこが悪いということはないが、自律神経失調症を中心とした不定愁訴を主訴とした症候群」のことです。更年期障害の成因として、
- 卵巣機能の衰退: 女性ホルモン(エストロゲン)の低下
- 精神心理的な因子: 悩み、不安、うつ気質
- 生活環境的な因子: 子どもの自立、夫の退職
などがあり、治療法としては、ホルモン補充療法(HRT)があります。
HRTでは、エストロゲンとプロゲスチンという物質を、ごく少量補充します。(避妊用ピルよりさらに少量のホルモン)しかし、HRTは、利点と欠点(副作用)がありますので、投与には注意が必要です。
更年期は、子育てや避妊のわずらわしさから解放される時期です。
一生のうち40%を占めているのが、更年期以降の人生です。薬剤を上手に利用して、エンジョイしてください。
子宮頸がんから身を守るために
子宮頸がんの主要なリスク要因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染です。
ワクチンによりHPV感染を防げば、子宮頸がんを予防することが可能です。
HPVワクチンの特徴は、
- 3回の接種が必要
- 子宮頸がんの70%を予防できる
- すでに感染が成立しているウイルスには効かない
- 性交渉開始前に接種することが理想的
- 成人女性でもウイルスの再感染を予防できる
などです。
また、ワクチンを打っても、定期的ながん検診が必要です。日本では、検診率は30%ですが、米国では80%もあり、高い効果をあげています。
<子宮頸がんの早期発見のための検査法>
- ヒトパピローマウイルス(HPV)検査
- 子宮頸部細胞診
- 膣拡大鏡(コルポスコピー)検査
早期の子宮頸がんには、顕著な症状はみられませんが、毎年の定期検査で早期発見できます。早期発見すれば、子宮を残して(妊娠する能力を残して)がんの部分だけを切除する治療法も可能です。ぜひ、がん検診を受けてください。