10月5日に開かれたらくわ健康教室は、洛和会丸太町病院 院長で、医師の二宮 清(にのみや きよし)が、既感染高齢者に発病が多く、また若年者の罹患(りかん)が懸念される「結核」の実態について講演しました。二宮講師は「結核に対する認識の欠如から、受診や診断が遅れることが多い」「集団感染の機会が増えている」などを指摘しました。
二宮講師の講演要旨は次のとおりです。
結核は、今なお、感染する人や、それによって死亡する人が多い病気です。WHOや厚生労働省の資料によると、死亡率は、フィリピンやタイなどの途上国と比較すると低いものの、アメリカ、オランダなどの先進国のなかでは、かなり高い状態で推移しています。
現在の結核の問題
- 年齢別の罹患率をみると、高齢になるほど、結核にかかる率も高くなっているが、この傾向とは別に20歳代にもピークがあり、同年代の若い人も特別に罹患率が高い
- 住環境の気密化による、学校や職場での集団感染の機会の増加
- 結核蔓延率の地域格差が解消されない(都市のスラム化、ホームレスの増加に感染予防対策が追いつかない)
- ほかの病気との結核合併の増加
- 結核に対する認識の欠如から、受診や診断が遅れる
- 入院中の結核発病者による職員への職業感染の増加
現在の肺結核診断は常に遅れる運命
周囲に蔓延していないので、だれも肺結核の可能性を最初から考えないことが問題です。
- 受診の遅れ・・・咳が2週間以上続いているのに受診しない患者が多く、約45%の患者が、発病から受診までに3カ月以上費やしている
- 診断の遅れ・・・咳止めや感冒薬で経過観察となり、胸部X線検査や喀痰検査は行われない
→この期間に周囲に感染が拡大する。
結核診断が遅れる例
- 糖尿病などの免疫不全と結核が合併し、胸部X線検査で陰影が急速に進行したため、肺炎との見分けや診断が難しい場合
- 胸部X線検査では異常を認めないので、咳が続くのは喘息のせいだと思っていたら、気管支結核を合併しており、すでに排菌している場合
結核診断が遅れた結果、初発患者発生後の結核院内感染対策が遅れ、病院職員を中心に結核患者が多数発病するケースもあります。
結核院内感染の要因
- 診断の遅れ(患者側と医療者側の責任)
- 菌の拡散機会の増加(気管切開、気管支鏡検査、人工呼吸器装着など)
- 高齢者などの、結核菌をもっている可能性のある患者の増加
- 若い医療従事者の多くが結核未感染者であること
- 医療施設の換気・除菌の不十分
結核患者・感染者の早期発見と、発病予防に努めることが大事です。