2011年11月05日

第74回らくわ健康教室「知っておきたいがん放射線治療」

10月24日に開かれたらくわ健康教室は、第10回洛和メディカルフェスティバル スペシャル版として、京都大学医学部附属病院 放射線治療科 助教の松尾 幸憲(まつお ゆきのり)医師が、放射線治療の基礎知識から、最先端の放射線治療まで、進化するがん放射線治療について講演しました。洛和会音羽病院は、本年9月に、最先端の放射線治療装置 リニアックを導入しましたが、松尾医師はこの立ち上げに参加しました。


松尾講師の講演要旨は次のとおりです。

Okok0242日本人におけるがん
悪性新生物(がん)は、今や、日本人の死因の第1位で、男女ともに、2人に1人が生涯でがんに罹患し、男性の4人に1人、女性の6人に1人が、がんで死亡するという統計があります。
年齢別に見ると、特に高齢者のがんの増加が著しく、なかには治りにくいがんもあり、問題となっている。

がん治療の三本柱

  1. 手術
  2. 放射線治療
  3. 化学療法(抗がん剤)

 放射線治療
 利点

  • 体の機能、形態を残せる
  • 高齢者や、合併症のある患者にも対応できる
  • 体のどの部位でも狙い撃ちできる

 欠点

  • 放射線による副作用のリスクがある
  • 放射線治療の効きにくいがんがある

米国などと比べると、日本は、放射線治療に関わる「放射線腫瘍医」の数が、明らかに不足しています。さらに、医学物理士、がん専門看護師など専門の人材を養成する必要があります。

がん細胞はなぜ放射線に弱いか
放射線によってDNAに傷がつくことで、分裂できずに細胞は死んでいきます。がん細胞はDNAの傷を治す力が弱いため、放射線により効率的に死滅させられます。

放射線治療の実際
<放射線治療外来での診察の流れ>

  1. 治療方針を決定します
    →体の「どの部位に」「どの装置を使って」「どのくらいの放射線を照射するのか」
  2. 治療を受けられる状態か診断します
  3. 病気の進展範囲(ステージ)を把握します

<放射線治療計画(シミュレーション)>
治療計画とは、実際に放射線を照射する前に、最適な範囲や方向を決めるためのものです。
治療計画が終了すると、治療部位の皮膚に、消えにくいインクでしるしを付けます→毎回同じ体位で治療を受けることが重要!

<放射線の照射>

  • 治療時間は一部位につき10分余りです。
  • 治療による痛みは全くありません。
  • 途中で動かないでください。
  • 決められた回数の治療が必要です。病気が良くなってきたからと言って、途中で勝手に休止すると、効果が弱くなります。
  • がんの種類によっては、治療期間の延長が治療成績の悪化につながるので、注意が必要です。

<放射線治療中の日常生活>

  • 休息は十分にとってください。放射線治療を始めると、体が疲れやすくなります。
  • 入浴はしていただいても構いませんが、できるだけぬるめのお湯で。また、皮膚マークが消えないようにしてください。
  • 食事は、基本的には通常通りで良いですが、刺激のある飲食(香辛料、アルコール)は避けてください。
  • タバコは控えてください。

放射線治療の副作用と治療効果
 1.急性期有害事象
 →照射中から終了後3カ月以内に発生し、治療終了後1〜3カ月で改善・消失する副作用

  • 脱毛、粘膜炎、皮膚炎
  • 頻尿、尿勢低下、排尿時痛
  • 排便時出血、下痢

 など、照射部位に応じて発症します。放射線の当たっていない部位には出現しません。

 2.晩期有害事象
 
→照射終了後3カ月以降に発生し、頻度は低いが難治性の副作用

  • 消化管狭窄、潰瘍、出血
  • 放射線肺臓炎
  • リンパ浮腫、皮膚潰瘍
  • 脳壊死

 などがあり、いったん発症すると治りにくいのが特徴です。最新の照射技術により、症状の低減が期待されています。

最先端の放射線治療
洛和会音羽病院に導入したリニアックをはじめ、そのほか高精度の放射線治療専用装置があり、照射技術も進化しています。

今後の放射線治療のあり方
より多くのがん患者さまが放射線治療を受けられるために、

  1. 放射線治療に関わる医療スタッフの充実
  2. 放射線治療について、一般に向けた啓発活動
  3. 技術革新により、放射線治療の適用できる病気をふやす

が、今後の課題です。


他のらくわ健康教室の記事はこちら⇒カテゴリ:らくわ健康教室

カテゴリー:らくわ健康教室 | 更新情報をチェックする