10月24日に開かれたらくわ健康教室は、第10回洛和メディカルフェスティバル スペシャル版として、京都大学医学部附属病院 放射線治療科 助教の松尾 幸憲(まつお ゆきのり)医師が、放射線治療の基礎知識から、最先端の放射線治療まで、進化するがん放射線治療について講演しました。洛和会音羽病院は、本年9月に、最先端の放射線治療装置 リニアックを導入しましたが、松尾医師はこの立ち上げに参加しました。
松尾講師の講演要旨は次のとおりです。
日本人におけるがん
悪性新生物(がん)は、今や、日本人の死因の第1位で、男女ともに、2人に1人が生涯でがんに罹患し、男性の4人に1人、女性の6人に1人が、がんで死亡するという統計があります。
年齢別に見ると、特に高齢者のがんの増加が著しく、なかには治りにくいがんもあり、問題となっている。
がん治療の三本柱
- 手術
- 放射線治療
- 化学療法(抗がん剤)
放射線治療
利点![]()
- 体の機能、形態を残せる
- 高齢者や、合併症のある患者にも対応できる
- 体のどの部位でも狙い撃ちできる
欠点![]()
- 放射線による副作用のリスクがある
- 放射線治療の効きにくいがんがある
米国などと比べると、日本は、放射線治療に関わる「放射線腫瘍医」の数が、明らかに不足しています。さらに、医学物理士、がん専門看護師など専門の人材を養成する必要があります。
がん細胞はなぜ放射線に弱いか
放射線によってDNAに傷がつくことで、分裂できずに細胞は死んでいきます。がん細胞はDNAの傷を治す力が弱いため、放射線により効率的に死滅させられます。
放射線治療の実際
<放射線治療外来での診察の流れ>
- 治療方針を決定します
→体の「どの部位に」「どの装置を使って」「どのくらいの放射線を照射するのか」 - 治療を受けられる状態か診断します
- 病気の進展範囲(ステージ)を把握します
<放射線治療計画(シミュレーション)>
治療計画とは、実際に放射線を照射する前に、最適な範囲や方向を決めるためのものです。
治療計画が終了すると、治療部位の皮膚に、消えにくいインクでしるしを付けます→毎回同じ体位で治療を受けることが重要!
<放射線の照射>
- 治療時間は一部位につき10分余りです。
- 治療による痛みは全くありません。
- 途中で動かないでください。
- 決められた回数の治療が必要です。病気が良くなってきたからと言って、途中で勝手に休止すると、効果が弱くなります。
- がんの種類によっては、治療期間の延長が治療成績の悪化につながるので、注意が必要です。
<放射線治療中の日常生活>
- 休息は十分にとってください。放射線治療を始めると、体が疲れやすくなります。
- 入浴はしていただいても構いませんが、できるだけぬるめのお湯で。また、皮膚マークが消えないようにしてください。
- 食事は、基本的には通常通りで良いですが、刺激のある飲食(香辛料、アルコール)は避けてください。
- タバコは控えてください。
放射線治療の副作用と治療効果
1.急性期有害事象
→照射中から終了後3カ月以内に発生し、治療終了後1〜3カ月で改善・消失する副作用
- 脱毛、粘膜炎、皮膚炎
- 頻尿、尿勢低下、排尿時痛
- 排便時出血、下痢
など、照射部位に応じて発症します。放射線の当たっていない部位には出現しません。
2.晩期有害事象
→照射終了後3カ月以降に発生し、頻度は低いが難治性の副作用
- 消化管狭窄、潰瘍、出血
- 放射線肺臓炎
- リンパ浮腫、皮膚潰瘍
- 脳壊死
などがあり、いったん発症すると治りにくいのが特徴です。最新の照射技術により、症状の低減が期待されています。
最先端の放射線治療
洛和会音羽病院に導入したリニアックをはじめ、そのほか高精度の放射線治療専用装置があり、照射技術も進化しています。
今後の放射線治療のあり方
より多くのがん患者さまが放射線治療を受けられるために、
- 放射線治療に関わる医療スタッフの充実
- 放射線治療について、一般に向けた啓発活動
- 技術革新により、放射線治療の適用できる病気をふやす
が、今後の課題です。
