11月9日に開かれたらくわ健康教室は、洛和会音羽病院 脳卒中センター所長で、医師の岡本 新一郎(おかもと しんいちろう)が、脳卒中を予防するための“脳ドック”で、「「動脈瘤がありますね」といわれたら…」という、私たちにとって判断が難しいテーマについて講演しました。岡本講師は、脳ドックの検査内容や、動脈瘤の危険度などを、詳しく解説。「十分に医師と相談したうえで、自分の生き方と照らし合わせて、経過観察するか、すぐに治療するかを決めてほしい」と話しました。
岡本講師の講演要旨は次のとおりです。
脳ドックとは?何のために、どんな検査をするのでしょう?
脳卒中は、突然私たちを襲います。脳ドックとは、症状はなくても、健康を維持するために、危険性や異常がないかを調べる脳の健康診断です。つまり、疾病予防のリスクマネジメントです。
脳ドックで行われる検査
- 問診および、診察
- 血液、尿、生化学検査
- 心電図検査
- 認知機能検査
- 頭部MRI検査
- MRA検査
- 頸部血管超音波検査
このほか、いくつかの検査があります。
脳ドックを受けた方がよい人は?
中・高年齢の方は積極的に検査を受けるのが望ましい。また、ご家族のなかに、脳卒中にかかったことがある方や、高血圧、肥満、喫煙などの危険因子を有する方にも、受診を勧めます。
脳ドックで見つかる病気は?
- 無症候性脳病変
- 無症候性未破裂動脈瘤
- 無症候性脳腫瘍
など
このうち「未破裂脳動脈瘤」について、お話します。
未破裂脳動脈瘤とは?
脳の動脈にできた瘤(こぶ)のことで、一度も破れたことがないものを未破裂脳動脈瘤といいます。未破裂脳動脈瘤は一般成人の約4〜6%の方がもっており、脳のMRIやCT検査、脳ドックを受けたりして見つかる場合がほとんどです。
未破裂脳動脈瘤を放っておくと、どうなるのでしょう?
- 何も起こらない
- だんだんと大きくなり、神経を圧迫して症状を起こす
- 破裂して、クモ膜下出血を来す
など、「何も起こらない」が実は1番多いのです。しかし、一旦クモ膜下出血が起こってしまうと、約半数の方が命に関わったり、寝たきりという重い病気になります。
破裂のリスクはどれくらいなのでしょうか?
現在、未破裂脳動脈瘤のどのくらいが破れて、クモ膜下出血を来すかという明らかなデータはありません。大きさ10mm程度の場合、おおむね1年間で100人に1人くらいと言われていますが、瘤の大きさ、部位によっても異なります。
脳動脈瘤は、手術や血管内治療による治療もありますが、リスクもあります
1cm以下の未破裂脳動脈瘤であれば、手術により何らかの合併症状が出現する可能性が3〜4%あり、死亡率は1%未満です。血管内治療によるコイルの逸脱や手術中の血管閉塞、瘤の破裂、血腫の形成などで起こる重篤な合併症は5〜6%です。ただし、術者や施設により、ばらつきはあります。
未破裂脳動脈瘤が見つかったら
年齢、健康状態などのほか、大きさや部位、形状など、さまざまな条件を考慮して、治療の適応を検討します。経過観察する場合は、喫煙、大量の飲酒を避け、高血圧を治療します。半年から約1年ごとに、画像による経過観察を行うことが重要です。
- 何より、十分に医師と相談してください
- 治療の目的と危険性についてよく理解しましょう
- 自分の生き方と照らし合わせて決定してください
- 担当医の説明だけで決めかねるときは、セカンドオピニオンを求めてください
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