12月15日に開かれたらくわ健康教室は、洛和会音羽病院 整形外科 医師の林 英輔(はやし えいすけ)が、特に多い疾患である骨粗しょう症、変形性関節症、脊柱管狭窄症の症状や治療方法について講演。「生活の質を向上させ、充実した生活を送るためにも、痛みは我慢せず、適切な治療を受けてください」と呼びかけました。
林講師の講演要旨は次のとおりです。整形外科では、
・急性疾患: 外傷(骨折や靭帯損傷など)
・慢性疾患:
骨粗しょう症
脊柱管狭窄症
変形性関節症
などの診療をしています。慢性疾患の場合、痛みがあっても、機能に多少問題があっても、深刻でなければ、様子を見る人が多いのが現状です。ご自分で誤った選択や判断をしないよう、下記を参考にしてください。
骨粗しょう症
骨粗しょう症とは、骨の量が減ってしまい、また、骨の微細構造も変化し、骨折を起こしやすくなった状態のことです。軽く打ったり、ちょっと転んだだけで骨折したり、転倒しなくても、ひねっただけで骨が折れることもあります。80歳代で、女性では半数、男性では3割が骨粗しょう症であるといわれています。
若い人の骨量の平均を100%とすると、骨量が
- 70〜80%(=骨量減少症)で、特に、喫煙、酒量の多い人、大腿骨頸部骨折の家族歴のある人
- 70%以下(=骨粗しょう症)、また、軽い外傷でも骨折をした人
は、治療の必要があります。
「たかが骨折、されど骨折」
骨粗しょう症になると、一番怖いのが骨折です。骨粗しょう症の人は、簡単に骨折し、そのまま寝たきりになるケースも多く、骨折後の死亡率も高くなってしまいます。骨折をしないこと、予防することが重要です。
骨粗しょう症の治療法
<薬物療法>
カルシウム製剤や、骨が溶け出すのを抑える薬など、最近では、骨を作る力を増強させるものもあります。
<運動療法>
運動で骨に適度な負荷をかけることで、骨密度を保つことを助け、また、日光を浴びることで、骨を形成する作用をもつビタミンDを活性化させる
脊柱管狭窄症
脊柱管狭窄症とは、脊柱管(脊髄神経の通る、背骨の中の管)がさまざまな原因で狭くなり、中を通っている神経が圧迫されて症状を引き起こすものです。
症状には、
- 腰痛
- 下肢の痛み
- 下肢のしびれ、感覚障害
- 間欠性跛行(はこう)(少し歩いただけでだるくなったり、歩けなくなったりするが、少し休むとまた歩けるという症状が繰り返される)
- 排尿障害
- 運動障害
などがあります。
治療法
<保存的加療>
- 筋力強化
- コルセット装着(腰の固定)
- 内服薬などで痛みやしびれを軽減
- 神経根ブロック(神経周囲への薬の注射により痛みを遮断)
<手術加療>
後方除圧術といって、骨の一部を削り、圧迫された神経を後ろに逃がす方法です。術後2日から1週間で歩行を開始でき、早ければ2週間で退院できます。
-1 変形性膝関節症
変形性膝関節症は、膝の軟骨がすり減ってしまい、
- 朝の違和感
- 立ち上がり時、階段の下り時に痛い
- 歩行時痛
- 夜間痛
- 変形
などの症状を来す状態で、50歳くらいから発症が増え、700万人の患者がいるといわれています。女性に多いのが特徴です。
治療法
<保存的加療>
- 鎮痛剤や外用薬
- 大腿四頭筋(ふとももの前側の筋肉)を鍛えるなどの運動療法
- 装具療法(サポーター、足底板)
- 関節内注射(ヒアルロン酸)
<手術加療>
軟骨がすり減った部分を人工の関節に置き換える「人工関節置換術」があります。
-2 変形性股関節症
変形性股関節症は、股関節を構成する骨盤の骨と、大腿骨の頭の部分の軟骨と骨が変形し、痛みを引き起こす病気です。
治療法
<保存的加療>
- 鎮痛剤
- 運動療法による筋力強化
上記のような方法がありますが、関節内注射は膝関節のように簡単ではないため、治療の中心は手術になります。
<手術加療>
すり減った軟骨や傷んだ骨を取り除き、金属やプラスチックでできた人工関節に置き換える「人工股関節置換術」は、痛みが消失する可能性が高く、3週間程度の入院でできます。