1月12日に開かれた、2012年最初のらくわ健康教室は、洛和会音羽病院 総合診療科 医師の西村 正大(にしむら まさひろ)が、「総合医」のニーズ、歴史と現状などについて講演。このなかで、「総合医というと、総合診療、総合内科、ER型救急、家庭医、プライマリーケアなどいろいろな名前がありますが、皆、ジェネラリストであり、“総合する専門医” でもあります。専門医をタテの糸とすれば、総合医は横の糸として、時代に合った、より良い医療を織り成しています」と説明しました。
西村講師の講演要旨は次のとおりです。「総合医」や「総合診療科」と言うと、知らない方もおられますので、ぜひ理解していただきたいと思います。
こんなとき、どうしますか?
2カ月前から、たまに胸が痛い。
さて、何科を受診しますか?
- 「循環器科」を受診
→心電図や超音波などの検査の結果、「心臓は何ともありませんよ」と言われた。 - 「呼吸器科」を受診
→胸部CT、喀痰検査で異常なし。「うちの科ではなさそうですね」と言われた。 - 「整形外科」を受診
→助骨レントゲンでは異常なかったが、「肋間神経痛でしょうか?」と言われ、はっきりしなかった。
「じゃあ、一体、この痛みはどうしたらいいの!」というようなことを、ほかの症状でも経験されたことがあるのではないでしょうか?
同じケースで、総合医のいる「総合診療科」があれば・・・
- 細かく問診
→「どんなときに? どんな風に? 痛みに波は? 過去に経験は? 食事との関連は? 食事の内容は?」
→「今までにした病気は? お酒は? タバコは?」 - 細かく診察
→「目・舌・胸の聴診・お腹の触診・体位を変えて・・・」
→「心電図と血液検査と超音波検査をしましょう」
↓
胆石を発見!
「おそらく胆石発作でしょう。外科にご紹介します」
と、専門の診療科を的確に紹介することができます。
病気によっては、ER科でも、家庭医療科でも、同様に正確な検査・治療を受けることができます。
総合医とは
臓器別専門分野をあえてもたずに、「横断的」「総合的」「包括的」な医療を実践する医師のことです。つまり、「なんでも診ます!」というジェネラリストです。
わたしたち総合医は、総合的に診るための「技術と知識」を、常に研鑽しています。
医療のなかで、「横断的」「総合的」「包括的」に診る方が適している場面
- 生活と密に関わるとき(生活習慣病、予防)
- 確定診断がつく“前”の段階
- 老いや死と向き合うとき(介護、看取り)
- 僻地など、専門家が足りないとき
- 医学教育に携わるとき
専門医と総合医の違い
専門医 | 総合医 | |
得意分野 | 治療のプロ | 診たてのプロ |
医学的知識 | 狭く深く | 広く浅く |
診ているもの、得意分野、アプローチの仕方が少し違うだけで、どちらが良い・悪いということはありません。
医師不足の現実
日本では、これから超・高齢化社会を迎えるにあたって、医師の必要性が高まっています。一方で、地方、特に過疎地などの医師不足は深刻であり、こういう所こそ、総合医が必要です。
総合医不足の背景には、急速な医療の発展による、医師の過度な専門分化があります。
技術革新と、一個人の人生では、とても網羅できない膨大な知識量により、各専門分野だけで人生を終える医師が増えているのです。
あらためて、総合医とは
正式な教育と経験を積んだ新しいタイプの医師です。“総合する専門医”でもあります。
皆さんは信頼できる“ホームドクター”の先生をお持ちでしょうか?
お持ちでない方は、一度、洛和会音羽病院「総合診療科」を受診してください。