4月10日に開かれたらくわ健康教室は、洛和会音羽病院 栄養科 係長の小藪 敬子(こやぶ けいこ)が、アンチエイジングのための食事について講演しました。小藪講師は「いろいろな情報に惑わされず、バランスのとれた食事をとりましょう」と呼びかけました。
講演内容は以下のとおりです。
アンチエイジングとは?
アンチ(anti)は反対、エイジング(aging)は老化のことです。アンチエイジングは“老化に抵抗する”という意味で、正式には「抗老化医学」の総称といわれています。
老化に拍車をかけるような要因を極力排除することが第一です。その意味において、「食(食事)」という観点からご説明したいと思います。
老化の原因
老化の主な原因として、以下の4点が挙げられます。
- 細胞機能の低下
- ホルモンレベルの低下
- サビ(酸化)
- 糖化
老化予防はいつから?
一生を見越した予防は、子どもの時から始まります(1次予防)。青年期になったら、禁煙の実践と肥満予防(中年太りの因子はこの時期の食生活の影響が大きい)。中年期からは病気に対する予防(2次予防)。老年期にかけては病気の再発予防です(3次予防)。
アンチエイジングを妨げる事柄
アンチエイジングを妨げる要因として、次のようなものが挙げられます。
過酸化脂質、食品添加物、飲酒・喫煙、ストレス、激しい運動、細菌やウィルス、カビ、紫外線、酸性雨、残留農薬、排ガス、ダイオキシン など。
老化の原因のひとつ、サビ(酸化)を減らす生活習慣を身につけることがアンチエイジング(老化防止)にとって大切です。
リンゴを切ってそのままにしておくと酸化して、切り口が茶色になるように、私たちの体の中でも同じことが起きているのです。
体内には、酸化を防ぐための「抗酸化力」を備えています。この抗酸化力よりも活性酸素の酸化力が上回ると、たんぱく質や脂質などの酸化が進み、細胞を傷付けて、いわゆる「からだのサビつき」が起こり、老化につながります。
運動で老化を防止する
有酸素運動の中でも一番基本的な運動、「歩く」ことです。
日ごろから、短い距離や階段は歩いて移動することを心がけて、老化に負けない体を今からつくっておきましょう!
アンチエイジングにいい食習慣
- 買い物&食材選び
- 調理方法
- 盛り付けと雰囲気づくり
- 食べ方
1.買い物&食材選び
- 旬のものを選ぶ
旬とは「その食材が食べごろを迎えて最も美味しい時期」のことです。 - 産地・生産者がわかるものを選ぶ
より安全な食品を選びましょう。 - 生鮮品特に野菜や果物は色の濃いものを選ぶ
同じ種類でも色が濃いものを選びましょう。 - なるべく加工してないものを選ぶ
加工食品には油や塩、砂糖などが使用されていることが多く、知らないうちに脂肪 塩分、糖などを摂りすぎてしまいます。 - 成分表示をしっかりチェックする
どんな成分を摂ったのか、どれだけのカロリーを摂取したのかを把握しましょう。
特に、「塩分」に注意。健康のためには塩分量6g以下が目標です。食品ラベルには「ナトリウム」で表示されることが多いので下記の式で塩分量を計算しましょう。
塩分相当量(g)=ナトリウム量(mg)× 2.54 ÷ 1000
2.調理方法
- 水溶性ビタミンを含む野菜
サラダで食べる野菜は水に長時間入れるとビタミンが溶け出してしまうのでサッと洗って生で食べます。 - 脂溶性ビタミンを含む野菜(食材)
油で炒めたり、とろみをつけて食べたりして、吸収をよくします。ゴマ油やオリーブオイルなど、少量の油でサッと軽く炒めるようにしましょう。 - 魚の油(DHAとEPA)
焼いたり揚げたりすると大切な魚の油が落ちてしまうので、刺身や煮物、煮こごりにすると良いでしょう。
※二度揚げ、二度焼き、二度レンジでチンなどをしない何度も加熱すると食品に含まれる油が変質して体にダメージを与えるといわれているので注意しましょう。 - だしとハーブで薄味に
塩分を控えめにするために、かつお、シイタケ、昆布などだしがよく出る食材の旨味を借りて、薄味で調理します。またローズマリー、バジル、タイムローリエなどのハーブ類で料理に彩りと香り付けを。
3.盛り付けと雰囲気づくり
- 小皿で盛り付ける
- 塩分と脂肪分の多い調味料をテーブルに置かない
- 香味野菜やかんきつ類は豊富に
- 食事中の会話を楽しむ
- 会話のネタになる食空間に
4.食べ方
- よく噛んで食べる
あごの力や顔の筋肉を保ち、フェイスラインを整えてたるみを防ぎます。唾液の分泌を促して消化吸収を助けます。 - 一口を少なめにゆっくりと
「早食い」は満腹中枢を刺激せずに食べすぎを招きます。一口30回噛んでなくなる程度の量を口に入れ、良く噛んでゆっくり時間をかけ、脳もお腹も満足するように心がけましょう。 - いろいろな料理を少しずつ
種類豊富な食材をバランスよく摂るためにも、好き嫌いせず、いろいろな食品にチャレンジしましょう。 - ジュース、アルコールは高カロリー
ジュースやアルコールはもちろんスポーツ飲料にも糖分は多く含まれています。また最初に水やお茶を飲み過ぎると胃液が薄まって消化力が低下するので飲み物は少しずつ摂りましょう。 - 30歳を過ぎたら腹八分目、40歳を過ぎたら腹七分目
20歳位をピークに基礎代謝量が減り、加齢とともに痩せにくい体になります。若い頃と同じ量を食べていると、知らないうちに太ってしまったなんてこと、ありませんか?
食べ過ぎる→内臓脂肪が増える→体が重くなる→
運動が嫌いになる→食べることでストレスを発散する・・・
という悪循環を起こさないためにも30歳を過ぎたら腹八分目、40歳を過ぎたら腹七分目を心がけましょう。食べ過ぎないことがアンチエイジングな食習慣の基本です。
老化防止につながる食べる順番とは?
肉(魚)・豆腐・サラダ・ご飯・果物の中でアンチエイジングに効果がある食べる順番は血糖値をゆっくり上げるものから食べるといいそうです。なので・・・
- 1番最初はサラダ(野菜)
野菜や歯ごたえのあるものを食べて ある程度空腹を満たしておくと、食べ過ぎを防ぐことができるはず・・・ - 2番目は、豆腐
大豆に含まれる食物繊維が血糖値の上昇を緩やかにしてくれます。
食物繊維はブドウ糖の吸収を遅らせる性質があるので血糖値の急な上昇を防ぎます。また排便がスムーズになり胃や腸の有害物質を排出する働きが活発になります。腸内環境が良くなり肌を若返らせる効果にもつながります。このような理由で最初にサラダ、豆腐の順番がアンチエイジングに効果的ということになります。 - 3番目は、肉や魚などのタンパク質
- 4番目は、ご飯
ご飯をまったく食べないというのは血管の老化を起こすので良くないそうです。 - 最後に、果物
※フランス料理のフルコースや日本の懐石料理などでも食べる順番がありますよね。これらも実は単なる儀式ではなく体のことを考えた賢い食べ方になっていたんですね。
食事は3回に分けてホルモンを出す
食事をするたびに成長ホルモンは分泌されるので、1度にたくさん食べるより1日3回に分けて食べたほうがホルモンを分泌させるきっかけになるので、1日3食規則正しく食べましょう。
余談ですが、お相撲さんは太るために1日2食です。
夜食とおやつの食べ方
体に良くないと思いながら、つい食べてしまう間食や夜食。無理に我慢してもヤケ食いをすると良くないので「食べたら運動をする」と決めると良いでしょう。ただし糖尿病のある方は間食・夜食はしないようにしてください。
アンチエイジングに効果があるといわれている食物・栄養素
抗酸化作用の高い栄養素は、ビタミンACE(エース)と呼ばれるビタミンA、ビタミンC、ビタミンE。活性酸素を無害化する作用を持つポリフェノール、アンチエイジングの王様は納豆、魚類、野菜、卵といわれています。
アンチエイジングに効果があると思われる食品成分を以下に並べてみます。
アップルペクチン、アリシン、アルギニン、αリポ酸、オレイン酸、カカオポリフェノール、核酸、カロテノイド、クロマニン、コエンザイムQ10、コラーゲン、コンドロイチン、サポニン、セサミン、セレン、チロシン、大豆サポニン、トコトリエノール、トコフェノール、納豆菌(ナットウキナーゼ)、ヒアルロン酸、ヒドロキシチロソール、カロテン、ビタミンB1、C、D、E、ビール酵母、プロタミン、βカロチン、マグネシウム、メラトニン、リコピン、リノール酸
テレビや街中で宣伝されていて、聞いたことのあるものが幾つもあったことと思います。これらは、私たちが普段からいろいろな食品を食べることで摂取できているはずの成分です。わざわざサプリメントを摂らなくても大丈夫です。バランスのとれた食事を心がけましょう。
元気に老いるコツ
- 食事: 「少食」で腹7〜8分目を守る。「少酒」を守る。
- 生活習慣: タバコはやめる。
- 運動: 年齢に合った適度な運動で基礎体力を培う。
- 休息: 質の良い睡眠を確保する。
- 社会参加: 多くの人・事・物に接し、刺激を受けることで、気持ちも脳も若返る。
おわりに
アンチエイジング、老化防止に関する情報が街中にたくさんあふれていますが、少しはお役にたちましたか? いろいろな情報に惑わされず、バランスのとれた食事を心がけましょう。