5月1日に開催されたらくわ健康教室は、洛和会丸太町病院 外科・消化器センター 部長で医師の原田 佐智夫(はらだ さちお)が、急性腹症について講演しました。原田講師は、一般にあまり知られていない症例について、図表や画像を交えわかりやすく語り、早期発見・早期治療の重要性を呼びかけました。
原田講師の講演要旨は以下の通りです。
「急性腹症」とは?
急性腹症について「ときどき新聞で見るが何のことかわからない」という方も多いと思います。「おなかが急に痛くなって緊急手術が必要となる可能性のある疾患群」を急性腹症と言います。
「急性腹症」の原因となる疾患
消化器系では、急性虫垂炎、急性胆嚢炎、急性膵炎、腸閉塞、穿孔性腹膜炎(消化器穿孔)、ヘルニア嵌頓、腸の血栓症・虚血などが挙げられます。
※嵌頓(かんとん)=腸が脱出して戻らなくなった状態を言います。
血管系では、腹部大動脈瘤破裂、腹部大動脈解離、婦人科系では、子宮外妊娠破裂、卵巣のう腫茎捻転、骨盤腹膜炎、泌尿器系では、尿路結石症など、多岐にわたります。
「急性腹症」の診察(医師の視線)
- まず見た目(顔貌、虫の息、のたうちまわるなど)
- バイタルサイン(血圧、脈拍、体温、呼吸数など)
- 問診(発症時間、摂取した食事、服用した薬、便通、妊娠の可能性など)
- 腹部所見(圧痛、筋性防御)
圧痛の部位により、どの臓器に問題があるのかある程度推測できます。
ひどい腹膜炎は、筋肉が板のように硬くなることがあります。(板状硬) - 検査
◆ 血液検査
◆ 胸腹部レントゲン
◆ 超音波検査(エコー)
◆ 腹部CT
◆ 腹腔穿刺
・ 血液 → 臓器破裂、子宮外妊娠破裂、卵巣出血
・ 血性 → 腸管壊死
・ 胆汁 → 胃十二指腸潰瘍穿孔
・ 便臭 → 大腸穿孔
代表的な疾患について
- 急性虫垂炎・・・みぞおちから右下腹部へ痛みが移動することがある。
- 急性胆嚢炎・・・発熱、右季肋骨痛。重症例では、黄疸が出る。
- 腸閉塞・・・排ガス停止、便秘、嘔吐、開腹手術の既住、腹部膨満など。
- 鼠径(そけい)ヘルニア・・・鼠径部の膨隆。腸閉塞を起こすこともある。
急性胆のう炎の治療について
胆嚢が破れていたり腐っている場合は、緊急手術が必要です。それ以外の場合も、できるだけ早い(3日以内)手術が必要です。(可能なら腹腔鏡手術)
抗生剤でいったん改善しても繰り返すパターンが多く見られます。胆のう炎を何度も繰り返すと手術が難しくなりますので、注意が必要です。
おわりに
おなかが痛くなったら、まず熱を計ってください。また、ご自分でおなかを押さえてみてください。そして、無理に我慢せず、できるだけ早く病院に来てください。なお、受診の際には「服薬手帳」か「普段服用している薬」を必ずご持参ください。