6月6日に開かれたらくわ健康教室は、洛和会丸太町病院 救急・総合診療科 医員の石田 恵梨(いしだ えり)が、めまいの症状や原因などについて説明しました。症状によっては早急な対応が必要なケースもあるため、症状に応じてどのようなタイミングで、どの診療科を選んだほうが良いのかなどについても紹介しました。
講演内容は以下のとおりです。
めまい症状の種類
めまいの症状にはいろいろな種類がありますが、大別すると、目が回ったり、天井がグルグル回るような感じがする「回転性めまい」、ふわふわとふらついたりする「浮動性めまい」、気が遠くなるような感じがする「立ちくらみのようなめまい」の3種類に分類することができます。
この3種類のめまいについて、それぞれの症状を見てみましょう。
回転性めまい
<症状>
- 天井や周囲がぐるぐる回るような感じがする
- 自分がグルグル回るような感じがする
- 耳が聞こえなくなる(難聴)
- 耳鳴りがする
- 耳がつまったような感じがする
→ 耳の異常が原因で起こることが多い
→ 脳出血や脳梗塞など、脳の異常で起こることもある
浮動性めまい
<症状>
- 姿勢を保てない
- まっすぐ歩けない
- 体がふわふわする
※同時に起こることがある症状として、次のようなものがあります。
- 頭痛
- 顔面や手足のしびれ
- しゃべりにくい
- 物が二重に見える
- 手足が動きにくい
立ちくらみのようなめまい
<症状>
- 立ち上がって5分以内に気が遠くなる
→起立性低血圧
- 立ち続けているときに気が遠くなる
- 食事の後や排便の後、排尿の後、痛い思いをした後に気が遠くなる。
→迷走神経反射
(気が遠くなる前に、気分が悪くなったり、冷や汗がたくさん出たりするなどの症状がよく現れる) - 安静にしているとき、もしくは運動中に急に胸が痛くな
- 動悸がして気が遠くなる
→不整脈が原因の可能性が高い
めまいを起こす病気
めまいを起こす病気の原因として、脳、耳、心臓・自律神経系が挙げられますが、原因の多くは耳にあります。
【 脳が原因のめまい 】
最も心配される、脳に原因がある場合、以下の病気が考えられます。
脳梗塞・脳出血
脳腫瘍
椎骨脳底動脈循環不全
脳梗塞・脳出血
小脳と脳幹は、体の平衡を保つ働きをします。小脳や脳幹の血流が落ちると、脳細胞が虚血(貧血)を起こすため、めまいの原因となります。
脳梗塞や脳出血の危険因子として挙げられるのが、高齢や喫煙、糖尿病、高血圧、コレステロール(LDL)の高さなどです。
ろれつがまわりにくい、物が二重に見える、強い頭痛がある、手足が動きにくいなどの症状があれば、すぐに受診してください。
◆MRIを撮れば安心?
急性期では、MRIを撮ってもわからないことはあります。医師の診察による身体所見が大切です。
脳腫瘍
聴神経腫瘍は体の平衡感覚を脳に伝える「前庭神経」にできる腫瘍です。難聴や耳鳴り、めまいなどの症状が徐々に起きます。
【 耳が原因のめまい 】
原因が耳にあるめまいは、次のような病気が考えられます。
良性発作性頭位転換性めまい(BPPV)
前庭神経炎
メニエール病
良性発作性頭位転換性めまい(BPPV)
寝返りをうったり、起き上がったり、横を向いたりして頭を動かすと、数秒後にとても強い回転性のめまいが起こります。そのままじっとしていると30秒〜1分以内に治まりますが、また頭を動かすとめまいが生じます。
内耳の前庭と呼ばれる部分にある耳石のかけらがはがれたことが原因でめまいが生じます。きついめまいが起きますが、生死に関わる病気ではありません。診断がつけば理学療法(一種の体操)で症状が改善することがあります。
前庭神経炎
風邪をひいたあとに発症する場合が多く、吐き気がしたり、体の軸が定まらずふらふらしたりします。回転性めまいの症状がありますが、難聴にはなりません。
体のバランス情報を脳に伝える前庭神経の炎症などにより起こります。ウイルス感染や血液の循環障害が原因ともいわれています。
メニエール病
難聴、耳鳴り、耳が詰まった感じなど、回転性めまいの症状が繰り返し起こります。内耳の中にある液体(内リンパ)が増えて、内耳がむくむことがあります。発症の原因ははっきりしていませんが、ストレスを避けることが大事です。
【 そのほかの原因によるめまい 】
不整脈
起立性低血圧
迷走神経反射
不整脈によるめまい(失神)
寝ているときや、運動をしているときに急に起こります。気が遠くなる前に、胸が痛くなったり、動悸がしたりしますが、何も症状が出ない場合もあります。
不整脈、心臓の病気、高齢などが危険因子になります。
起立性低血圧
寝た状態から状態を起こしたり、立ち上がったりした場合、5分以内に気が遠くなります。自律神経失調、糖尿病、胃潰瘍、利尿剤・降圧剤といった薬剤などが危険因子です。
座っているときや立っているとき、頭は心臓より上にありますが、寝た状態ではほぼ同じ高さにあります。立ち上がったりする際、重力に逆らって血流を頭のほうに押し上げる必要がありますが、その調節がうまくできないために起こります。
迷走神経反射(失神)
咳や排尿、排便などの後、また、長時間立っているときや強い痛みを感じたときに起こります。
気が遠くなる前に、気分が悪くなったり、汗がたくさん出たりするなどの症状があります。
何科を受診する?
めまいが起きた場合、どの診療科を受診するのか悩まれると思います。めまいの症状に応じて診療科を選ぶ必要があります。
- めまいに伴う頭痛や顔面・手足のしびれ、運動麻痺、ろれつが回らない、視野がかすむ、二重に見える、などの症状を感じた場合。
→ 早急に内科あるいは神経内科を受診してください。 - めまいに伴う頭痛や顔面・手足のしびれ、運動麻痺、ろれつが回らない、視野がかすむ、二重に見える、などの症状がない。音が聞こえづらかったり、耳がつまった感じがしたり、耳鳴りがするなど、耳の症状を伴う場合。
→ 早めに耳鼻咽喉科やめまいの専門外来を受診してください。 - 立ち上がったときに、クラッとするめまいが頻繁に起こったり、目の前が暗くなったりする場合
→ 内科あるいは循環器内科を受診してください。
受診の際に教えてほしいこと
受診の際、めまいの診断に役立ちますので、次のような点を医師にお伝えください。
- めまいが起こったときに何をしていたか
- めまいが続いた時間
- 今までに同じようなめまいがあったか
- どのようなめまいか(ぐるぐる? ふわふわ? たちくらみ?)
- めまいのほかに症状はあるか(難聴、耳鳴り、頭痛、しびれ、まひ)
めまいを起こしにくくするために
いちがいには言えませんが、めまいの予防として、次のような点を心掛けましょう。
- 規則正しい生活
- ストレスを避ける
- 睡眠をしっかりとる
- 急に立ち上がったりすることを避ける
- 禁煙