6月13日に開催のらくわ健康教室は、洛和会音羽病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 部長で医師の荒木 倫利(あらき みちとし)が、鼻副鼻腔炎の診断と治療について講演しました。荒木講師は様々な症状とその治療方法、さらに手術について、わかりやすくていねいに説明。その中で手術後すぐに治るものではないため、日常のケアと受診が大切である点を強調していました。
荒木講師の講演要旨は以下の通りです。
鼻副鼻腔炎(蓄膿症)とは?
多くの場合は感染をきっかけにして、鼻副鼻腔の粘膜の働きが悪くなり発症します。その結果、自浄作用が低下し副鼻腔の炎症が起こります。
罹病期間によって、急性副鼻腔炎と慢性副鼻腔炎に分類されます。また、アレルギー性鼻炎や花粉症の時期に合併して起こることがあります。
副鼻腔炎の代表的症状
- 鼻閉…………鼻がつまります。
- 鼻漏…………ねばねばした鼻みずが出ます。
- 後鼻漏………ねばねばした鼻みずがのどに落ちます。
- 頭痛、頭重 …頭が痛みます。
- 頬部痛………頬の圧迫感や痛みが起きます。
- 発熱…………熱が出ることもあります。
- その他………鼻の中の異臭、嗅覚障害など。
副鼻腔炎の診断と局所治療
診断
◆問診
症状と経過の整理
◆鼻の中を見ること
一目瞭然
・鼻鏡
・内視鏡
◆画像診断
必要な場合活用
・レントゲン=白い影が写ります。
・CT=細部まで病変がわかります。
治療
◆掃除をする
・鼻処置
・ネブライザー(霧に乗せ薬を送る)
・鼻洗浄
※鼻洗浄には体液の浸透圧と同じ生理食塩水(0.9%)を使用します。水道水は浸透圧が低いため、粘膜の機能を障害し、鼻や耳の奥が痛くなったり、中耳炎の原因となる場合もあります。
◆飲み薬
・抗菌薬
・粘液調整役
・副腎皮質ステロイド
◆手術をする
・内視鏡下鼻副鼻腔手術(ESS=Endoscopic Sinus Surgery)
(高度の慢性副鼻腔炎に対して、広範囲を内視鏡を用いて手術)
※急性、慢性とも「薬物療法」を行っています。
※小児の副鼻腔炎は、成人に比べ自然治癒しやすいという特徴があります。手術は最小限にとどめるなど、鼻副鼻腔の発育に支障を与えないよう注意が必要です。
おわりに
手術をした場合、粘膜の回復には時間がかかるため、手術後すぐに症状が良くなるわけではありません。手術直後は悪化したように感じる場合もあります。粘膜の機能回復には最も短期間で3カ月程度、長ければ1年以上かかります。
頻回の通院は不要ですが、日常のケアをしていただきながら月1回程度の受診時に経過を見せていただくことが大切です。