2012年11月06日

第116回らくわ健康教室「“とこずれ”なにそれ? 〜病気を知って褥瘡をなくそう!〜」

9月20日に開かれたらくわ健康教室では、洛和会音羽病院 形成外科 医師の吉原 正宣(よしはら まさのぶ)が、褥瘡(じょくそう)=“とこずれ”について講演。褥瘡が「なぜできるのか」、そして、「どのように予防したらよいのか」を紹介し、以前とは異なっている傷の治し方を解説しました。


4682吉原講師の講演要旨は次のとおりです。

“とこずれ”と褥瘡は、同じことをさしています。とこずれは一般的な名称で、褥瘡は病名です。
広辞苑によれば、褥瘡とは「圧迫性壊疽(えそ)の一種。体力の衰えた患者が長期間病床にある場合に、衣類・寝具によって圧迫を受ける部位に生じる」ものです。

褥瘡発生のメカニズム
体に加わった外からの力によって、皮膚と骨の間の柔らかい組織の血の流れが低下したり、止まったりします。この状態が一定時間を超えると、組織は死んでしまい、褥瘡が発生します。

褥瘡ができるそのほかの要因
〔局所的要因

  • 加齢による皮膚の変化
  • 摩擦、ずれ
  • 失禁、湿潤
  • 局所の皮膚疾患

〔全身的要因

  • 低栄養
  • やせ
  • 加齢・基礎疾患
  • 薬剤投与
  • むくみ(浮腫)

〔社会的要因

  • 介護力(マンパワー)不足
  • 情報不足
  • 経済力不足

褥瘡が発生しやすいのは、寝たきりや、手術の後、特殊な病気にかかっているなど、自力での体位変換が困難な状態にあるときです。
褥瘡ができる場所として多いのは、尾てい骨のように骨が突き出しているところで、圧力やずれ、摩擦が原因で発生します。
骨盤の中央にある仙骨部には、体重の約44%の圧力がかかっています。
70〜100mmHg以上の圧力が2時間かかると、褥瘡ができるリスクが高まります。
2時間をめどに、体位を変えるようにしましょう。

褥瘡の重傷度の分類
褥瘡の重傷度が高い順に、黒色期 → 黄色期 → 赤色期 → 白色期と、色調によって分類されます。また、傷の深度が深い順に、グレード4〜1に分類されます。

褥瘡予防について
褥瘡にならないための予防として、つぎの対策が挙げられます。

  1. 体にかかる圧力やずれを少なくする
  2. むくみや汗などに対するスキンケア
  3. 体に必要な栄養素・量を算出するなど、栄養状態の観察
  4. 関節が固まらないためのリハビリテーション
  5. 患者さま、ご家族の知識や実践力など、介護力のアップ

皮膚の観察方法
褥瘡予防のためには、皮膚の観察が重要です。

 皮膚の発赤を認める部分 → 3秒圧迫 → 発赤が残存 → 褥瘡発症を疑う

体にかかる圧力やずれを少なくするためには、体の向きや姿勢などを変えたり、体表面に加わる圧力を分散させたりする必要があります。
ポジショニングには、30度側臥位、60度側臥位、完全側臥位(90度側臥位)などがあります。
体の位置を保つために、さまざまな素材や形のクッションや、体にかかる圧力を分散させるマットレスなどもあるので、参考にしてください。

傷の治し方
傷ができると、傷を治そうとする成分が出てきます。その後・・・

  • そのまま乾燥させる
    → 乾燥によって表皮の再生が起こりにくい
  • 消毒する
    → ばい菌と共に、傷を治そうとする細胞成長因子も死滅させてしまう
  • ガーゼを乗せる
    → ガーゼの交換時に、治りかけた傷を再び傷めてしまう
  • 創傷被覆材を貼る
    → 傷を治そうとする細胞成長因子が活動しやすい

よって、
 「傷は消毒しないと化膿する」
 「傷は乾燥させる(濡らしてはいけない)」
 「かさぶたができるのは傷が治りかけている証拠」
    ↓
すべて間違いです!×

褥瘡の治療
褥瘡の治療には、褥瘡部分全体をドレッシング材で覆い、陰圧に保つことで治療する「陰圧療法」や外科的な手術を行う「外科的治療」があります。


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