9月20日に開かれたらくわ健康教室では、洛和会音羽病院 形成外科 医師の吉原 正宣(よしはら まさのぶ)が、褥瘡(じょくそう)=“とこずれ”について講演。褥瘡が「なぜできるのか」、そして、「どのように予防したらよいのか」を紹介し、以前とは異なっている傷の治し方を解説しました。
吉原講師の講演要旨は次のとおりです。
“とこずれ”と褥瘡は、同じことをさしています。とこずれは一般的な名称で、褥瘡は病名です。
広辞苑によれば、褥瘡とは「圧迫性壊疽(えそ)の一種。体力の衰えた患者が長期間病床にある場合に、衣類・寝具によって圧迫を受ける部位に生じる」ものです。
褥瘡発生のメカニズム
体に加わった外からの力によって、皮膚と骨の間の柔らかい組織の血の流れが低下したり、止まったりします。この状態が一定時間を超えると、組織は死んでしまい、褥瘡が発生します。
褥瘡ができるそのほかの要因
〔局所的要因〕
- 加齢による皮膚の変化
- 摩擦、ずれ
- 失禁、湿潤
- 局所の皮膚疾患
〔全身的要因〕
- 低栄養
- やせ
- 加齢・基礎疾患
- 薬剤投与
- むくみ(浮腫)
〔社会的要因〕
- 介護力(マンパワー)不足
- 情報不足
- 経済力不足
褥瘡が発生しやすいのは、寝たきりや、手術の後、特殊な病気にかかっているなど、自力での体位変換が困難な状態にあるときです。
褥瘡ができる場所として多いのは、尾てい骨のように骨が突き出しているところで、圧力やずれ、摩擦が原因で発生します。
骨盤の中央にある仙骨部には、体重の約44%の圧力がかかっています。
70〜100mmHg以上の圧力が2時間かかると、褥瘡ができるリスクが高まります。
2時間をめどに、体位を変えるようにしましょう。
褥瘡の重傷度の分類
褥瘡の重傷度が高い順に、黒色期 → 黄色期 → 赤色期 → 白色期と、色調によって分類されます。また、傷の深度が深い順に、グレード4〜1に分類されます。
褥瘡予防について
褥瘡にならないための予防として、つぎの対策が挙げられます。
- 体にかかる圧力やずれを少なくする
- むくみや汗などに対するスキンケア
- 体に必要な栄養素・量を算出するなど、栄養状態の観察
- 関節が固まらないためのリハビリテーション
- 患者さま、ご家族の知識や実践力など、介護力のアップ
皮膚の観察方法
褥瘡予防のためには、皮膚の観察が重要です。
皮膚の発赤を認める部分 → 3秒圧迫 → 発赤が残存 → 褥瘡発症を疑う
体にかかる圧力やずれを少なくするためには、体の向きや姿勢などを変えたり、体表面に加わる圧力を分散させたりする必要があります。
ポジショニングには、30度側臥位、60度側臥位、完全側臥位(90度側臥位)などがあります。
体の位置を保つために、さまざまな素材や形のクッションや、体にかかる圧力を分散させるマットレスなどもあるので、参考にしてください。
傷の治し方
傷ができると、傷を治そうとする成分が出てきます。その後・・・
- そのまま乾燥させる
→ 乾燥によって表皮の再生が起こりにくい - 消毒する
→ ばい菌と共に、傷を治そうとする細胞成長因子も死滅させてしまう - ガーゼを乗せる
→ ガーゼの交換時に、治りかけた傷を再び傷めてしまう - 創傷被覆材を貼る
→ 傷を治そうとする細胞成長因子が活動しやすい
よって、
「傷は消毒しないと化膿する」
「傷は乾燥させる(濡らしてはいけない)」
「かさぶたができるのは傷が治りかけている証拠」
↓
すべて間違いです!×
褥瘡の治療
褥瘡の治療には、褥瘡部分全体をドレッシング材で覆い、陰圧に保つことで治療する「陰圧療法」や外科的な手術を行う「外科的治療」があります。