2012年12月14日

第123回らくわ健康教室「手術で改善! 正常圧水頭症」

11月9日に開催のらくわ健康教室は、洛和会音羽病院 正常圧水頭症センター 所長で脳神経外科医の石川正恒が正常圧水頭症について講演しました。石川講師は正常圧水頭症の諸症状から治療まで、わかりやすく説明を行いました。


石川講師の講演要旨は以下の通りです。

P_lecturer 正常圧水頭症とは?

「正常圧水頭症」とは、脳や脊髄にある「脳脊髄液(髄液)」の吸収が悪くなって脳を中心に髄液がたまり、脳を圧迫して脳の機能低下が起こる病気で、専門的には「特発性正常圧水頭症」と呼ばれます。現在のところ、この病気が起こる原因は明らかにされていません。

  • 70〜80歳の方に多く見られます。
  • 歩行障害、排尿障害、認知障害などの症状が現れます。
  • 早く気付いて治療を受ければ、回復が期待できる病気です。
  • 病気が疑われるときは、神経内科・脳神経外科・精神科などを早めに受診することが大切です。

症状について

歩行障害(患者さまのおよそ90%に見られます)
【特徴】
小刻みに歩く、すり足になる、開脚→転倒しやすくなる、いすから起立するのに時間がかかる、方向転換がしづらい など
正常圧水頭症の歩行障害では、「小刻み」、「すり足」、「開脚」が特徴です。足が左右に広がって外を向き、歩幅が狭くなると不安定で転倒しやすくなります。

排尿障害(患者さまのおよそ60%に見られます)
【特徴】
頻尿、急に尿意を覚える、トイレに間に合わない、尿もれ など

認知障害(患者さまのおよそ80%に見られます)
【特徴】
物忘れ、やる気の低下、作業に時間がかかる など

<診断>
この病気の診断は、症状の確認と画像検査で行われます。症状と画像検査から、正常圧水頭症が疑われる場合は「タップテスト(※)」が行われることもあります。

※タップテスト・・・腰椎に針を刺し、30ml程度の髄液を採取し、症状が改善するかどうかをみる検査です。髄液は、脳と脊髄を覆っている髄膜の中を流れているため、腰椎から髄液を抜き取れば、脳室の髄液も減少して、症状が一時的に改善することが期待できます。

治療について

“髄液シャント術”
脳室の中心にたまった髄液を腹腔に排出するために、2mmほどの細い管を体内に埋め込み、髄液を腹腔に導きます。その経路は主に二つ(下記)あります。

脳室〜腹腔シャント
脳室から腹腔へ管を通す方法です。脳神経外科の領域では、患者さまの負担は比較的軽い手術といえますが、頭蓋骨に穴を開ける必要があります。高齢者では手術が可能かどうか、入念なチェックが必要になります。この方法は長年行われてきた実績があり、標準的治療となっています。

腰椎〜腹腔シャント
タップテストがよく行なわれるようになってきたため、手術でも、腰椎から腹腔へ管を通す方法が行なわれるようになってきました。この方法では、頭蓋骨に穴を開ける必要はありませんが、腰椎の骨と骨の間が狭い場合など、患者さまによっては、行うのが難しい場合もあります。

覚えておいていただきたいポイント

「正常圧水頭症」の症状は、「歩行障害」、「排尿障害」、「認知障害」など。
症状があっても、“年のせい”などと考え、見逃しやすい。
早く見つけて手術を受ければ、改善が期待できる。


ほかのらくわ健康教室の記事はこちら⇒らくわ健康教室 講演録



カテゴリー:らくわ健康教室 | 更新情報をチェックする