2012年12月15日

第122回らくわ健康教室「整形外科で診る足の病気 〜足の外来で何を診てる?〜」

11月2日に開かれたらくわ健康教室では、洛和会丸太町病院 整形外科 医長で、医師の牧 昌弘(まき まさひろ)が、整形外科で診る足の病気について講演しました。
7つの代表的な足の病気について説明し、洛和会丸太町病院が近畿圏で初めて導入した「体外衝撃波除痛治療」を紹介しました。


7166足の外来を整形外科の専門外来として設けている病院は全国でも少なく、あまり認知されていません。本日は足の外来で扱っている代表的疾患を紹介します。

足の代表的疾患
整形外科で診る足の病気はさまざまですが、代表的な病気として次の7つをご紹介します。

外反母趾、強剛母趾、扁平足、モートン病、
変形性足関節症、足底腱膜炎


外反母趾

<特徴>

  • 母趾先端が外側へ向いている
  • 母趾付け根の関節が突き出ている
  • 足幅が広い

正常な足では、外反母趾角(足の親指の曲がった角度)は16度前後ですが、外反母趾では、軽度で20〜30度、中等度で30〜40度、重度ではそれ以上の角度になります。重度では、外反母趾角が90度や母趾(足の親指)が第2趾の下にもぐりこむケースもあります。
また、正常な足の筋肉バランスは、母趾から足首に向かって真っ直ぐに力が加わりますが、外反母趾の場合、母趾が曲がっているため、母趾を曲げるたびに拇指を変形する力が加わることになります。

Photo

さらに、外反母趾は横断面から見たアーチが低下し、足の裏にタコができることもあります。

ハイヒールの影響
外反母趾とハイヒールの因果関係は明確ではありませんが、重心が前足にかかり過ぎないよう、ヒールの高さは4cmまでにしましょう!
(石塚忠雄『靴の科学』、講談社、1991年)

外反母趾になりやすい足指のタイプ
人の足型は3タイプに大別できます。

  1. ギリシャ型:
    親指より人差し指の方が長く、小指にいくにしたがって短くなっていく。
  2. スクエア型:
    親指から小指まで全ての指の長さがほぼ同じ。
  3. エジプト型:
    一番長い指が足の親指で、小指に行くに連れて短くなっていく。

日本人に多いのはスクエア型ですが、外反母趾になりやすいのはエジプト型です。

外反母趾の治療方法
<保存治療>

  • 装具療法:
    矯正装具、足底板の着用
  • 運動療法:
    足指でのグー・チョキ・パー体操、タオルを足指だけでたぐり寄せる、タオルギャザリングなど

<手術治療>
 骨切り矯正固定術

  1. シェブロン法 → 経度〜中等度
  2. マン変法 → 中等度〜重度

強剛母趾
病態:第1MTP関節(足の指の第1関節)の変形性関節症。
症状MTP関節が運動時に痛み、可動域が限られる。
治療:装具療法、関節注射、薬物治療、
   カイレクトミー(cheilectomy)、関節固定術、
   人工関節置換術など。

扁平足
偏平足の場合、後脛骨筋腱機能不全になる可能性が高まります。

症状:足関節内・外側部の腫れ、疼痛
 ※背中側から見て、一方の足の指が3本以上見えると重度だといえます。

治療:

  • 保存療法: 装具療法、生活指導(安静指示、運動・体重制限)、疼痛のコントロール、機能訓練。
  • 手術療法: 後脛骨筋腱腱鞘滑膜切除術、踵骨隆起内側移動術、踵立方関節延長固定術

モートン病
病態:足指MTP関節の間の神経障害。
症状:歩行時の足指の痛み、しびれ、知覚障害。
治療:足底版の着用、神経ブロック注射、神経切除術。

変形性足関節症

病態:関節軟骨の摩耗・消失、骨の増殖。
症状:歩行時・動作時の痛み、運動制限、腫脹。
治療:足底版の着用、ヒアルロン酸注射、手術。

足底腱膜炎

病態:足底腱膜の牽引による炎症。
症状:起床時の立ち上がり時の踵の痛み、長時間歩行時の踵の痛み。
治療:ストレッチ、足底版、注射、体外衝撃波除痛治療、内視鏡下腱部分切離術
※「体外衝撃波除痛治療」は洛和会丸太町病院で行っており、近畿圏では初の取り組みです。

整形外科の新しい治療法、足底腱膜炎の治療:
体外衝撃波療法(ESWT)

従来、足底腱膜炎の治療は、保存的治療と手術の2通りしかありませんでした。体外衝撃波療法は、手術をすることなく、衝撃波の物理的なエネルギーを使って、疼痛を軽減します。

体外衝撃波療法の歴史
国外では・・・
1986年  ドイツで骨に対する影響を初めて報告
1988年  骨折後偽関節に対する衝撃波療法の報告
1990年  足底腱膜炎に対する治療の最初の報告
2003年 ドイツで、保存療法が無効な足底腱膜炎49足、
    症状改善率:90%
2004年 ドイツで、保存療法が無効な足底腱膜炎76足、
    症状改善率:94%

日本では・・・
2008年  新医療機器として薬事承認適応
2012年 1月 保険適応
    6月 洛和会丸太町病院で導入

体外衝撃波治療のメカニズム
体外衝撃波治療は、衝撃波の物理的エネルギーによって血管を新生し、血液の供給を改善します。そうすることで組織を修復し、疼痛を軽減します。
さらに並行して、衝撃波の物理的エネルギーを加えることによって、自由神経終末を変性し、神経中枢に疼痛が伝導するのを抑制します。痛みの悪循環を終結することでも疼痛を軽減しています。

体外衝撃波治療の特徴
体外衝撃波治療には、以下の特徴があります。

  • 体の負担が少ない
  • 安全かつ有効な治療
  • 入院することなく、通院での外来治療が可能
  • 副作用がほとんどない
  • 治療時間は約30分程度と短い
  • 麻酔がいらない
  • 傷跡が残らない

さいごに
足は、人が二本足歩行を獲得して以来、地面からの衝撃を最前線で受ける非常に重要な部分です。
当院では、日本足の外科学会や国際足の外科学会が進める、世界基準の治療を心掛けています。


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