1月8日に開催されたらくわ健康教室では、洛和会丸太町病院 救急・総合診療科 医員で、医師の小嶌 祐介(こじま ゆうすけ)が、「生活習慣と消化器疾患」と題し、消化器系のがんの罹患のリスクとなる生活習慣について、詳しく語りました。
小嶌講師の講演要旨は以下のとおりです。
がんの死亡率と罹患数はともに増加し続けているが、その主な要因は高齢化。早期発見により罹患数が増えた側面もあるが、年齢調整後の死亡率が減少しているがんも多い。日本人では、消化器系のがん(胃、食道、直腸、結腸、肝臓、胆のう、膵臓などのがん)が圧倒的に多い。
がんのリスクを上げる生活習慣
喫煙
- 食道がん、胃がん、肺がんなどのリスクが上がる。
- 非喫煙者に対する喫煙者のがん全体のリスクは、1.5倍と推計され、禁煙した場合、がんのリスクは低くなる。
- 受動喫煙も肺がんの確実なリスクとなる。
- 循環器や呼吸器の病気の原因にもなる。
飲酒
- 食道がん、肝臓がん、大腸がんなどのリスクを上げ、胃炎、膵炎、肝炎、糖尿病など、ほかの疾患のリスクにもなる。
- 飲む場合は、1日あたり
- 日本酒:1合
- ビール:大瓶1本
- 焼酎:1合の3分の2
- ウィスキーやブランデー:ダブル1杯
- ワイン:ボトル3分の1
食事
- 食塩および高塩分食品は胃がんのリスクを上げ、高血圧、心疾患、脳卒中、腎疾患にも関連する。
- ハム、ソーセージ、ベーコンや赤肉(牛・豚など)は、大腸がんのリスクを上げる。
- 厚生労働省の設定する1日の塩分摂取基準目標:
男性9g未満、女性7.5g未満
肥満
- 食道、大腸、胃(噴門部)などのがんのリスクを上げる。胃がん(非噴門部)はピロリ菌感染が要因となる。
- そのほか、胃食道逆流症(GERD)、胆石、非アルコール性脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎などのリスクが上がる。
がんのリスクを下げる生活習慣
身体活動、運動
- 大腸(結腸)がんなどのリスクを下げるだけでなく、心疾患の死亡リスクも低くなる。
- 厚生労働省「健康づくりのための運動指針2006」では、週に23エクササイズ以上の活発な身体活動、そのうち4エクササイズ以上の活発な運動を行うことを目標としている。
<1エクササイズに相当する身体活動例>- 20分の歩行や軽い筋力トレーニング
- 15分の自転車、子どもとの遊び、速歩やゴルフ
- 10分の階段昇降、軽いジョギングやエアロビクス
- 7〜8分の重い荷物運び、ランニング、水泳
野菜、果物
- 食道がん、胃がん、大腸がんなどに予防的に働き、リスクの低下が期待される。しかし、多く取れば取るほどがんのリスクが低下するという知見は限られている。
おわりに
- 良いものは多くとるほど発がんリスクが減るとは、必ずしも言えない。特に、栄養補助剤(サプリメント)の服用に際しては注意が必要。
- 肥満関連のがんや糖尿病予防は、やせればやせるほど効果的だが、やせ過ぎても不健康であり、バランスをとる必要がある。
- 人によって最適ながんの予防法は異なり、各人の体質、生活習慣、ライフステージなど、さまざまな条件との兼ね合いのなかで検討する必要がある。
- テレビやコマーシャルで放送される内容には製作者の意図があり、必ずしも正しくないことがあるため、注意が必要。
- 定期健康診断などで体調チェックに気を配り、食事や運動などで心身の健康維持に努めましょう。