2013年04月04日

第137回らくわ健康教室「『迎寿(げいじゅ)』への準備 〜いつまでも自分の歯で食べよう〜」

3月6日に行われた第137回らくわ健康教室は、「『迎寿(げいじゅ)』への準備 〜いつまでも自分の歯で食べよう〜」と題して、大阪歯科大学 客員教授で歯科医師の北條 博一 医師が講演しました。


概要は以下のとおりです。

P_lecturer私たちは年齢を重ねていくと「喜寿(きじゅ)」「傘寿(さんじゅ)」「米寿(べいじゅ)」「卒寿(そつじゅ)」「白寿(はくじゅ)」と「寿」のつく年を迎えます。私が「迎寿(げいじゅ)」と呼ぶのは、これらのめでたい年を、楽しく迎えられるように、と願ってのことです。楽しみの一番は食事です。そのために、口の中の管理をきちんとしておくことがいかに大切か、ということをお話しします。

日本人の「平均寿命」は、男性で80歳、女性で85歳ぐらいです。この平均寿命に対し、平常生活状態を保ったまま生きられることを「健康寿命」と呼んでいます。「平均寿命」−「健康寿命」=5年もあるのは残念です。この健康寿命を伸ばして、できるだけ病院のお世話にならずに元気に過ごしたいものですね。

21世紀の健康寿命の延長は「8020(ハチマルニイマル)にかかっている」といわれます。80歳で20本の歯があるという意味です。でも現実は、健康を損ねた多くの高齢者は「8000(ハチマルマルマル)」すなわち歯が一本もなく総入れ歯に頼らざるを得ない状態になっています。病院や施設に入ってしまってから歯の治療を受けるのは大変です。日ごろから自分の口の中の管理をきちんとして、「迎寿」への準備をしておきましょう。
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健康寿命を伸ばすには、きちんと食べられること、できれば自分の歯で食べられることが大事です。「食欲」は人間の生きる本能の1番目です。2番目は子孫を残す「性欲」、3番目は家族や仲間と一緒に生きていく「集団欲」です。

口でちゃんと食べるということ、しゃべれることがどれだけ大事か、分かってください。歯でかんで(咀嚼=そしゃく)、飲み込む(嚥下=えんげ)行為は、私たちが赤ちゃんの時からお母さんに教えてもらった生活上の能力です。その能力が、入院して点滴だけで1カ月…とかなると、衰えてしまいます。食べ方も下手になるし、飲み込みさえうまくいきません。それでは迎寿を楽しめなくなってしまいます。

日本人の3大疾患はがん、心臓病、脳卒中ですが、直接の死亡原因は肺炎が一番多いのです。

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誤嚥(ごえん)性肺炎は、誤解されています。
誤嚥と聞くと、モチやイモなどがのどに詰まったり、むせることだと思っていませんか。誤嚥の怖さは、それとは違うのです。気道と食道を隔てている弁や声門がゆるんで、寝ている間に、口の中のばい菌だらけの唾(つば)が、トロトロと肺の中に流れ込むことなのです。これが恐ろしいんです。
口の中には500種類ほどの菌がいますが、そのうちの10種類ほどが肺炎を起こします。虫歯や歯周病を起こす別のばい菌もいます。誤嚥性肺炎などの病気にならないためにも、口の中にばい菌を増やさないことが大切なのです。

舌(べろ)の掃除も大切です。
口の中でばい菌が増えるところ(培地)は舌背です。べろを出してよく見てください。べろの表面に、毛がはえたようになっていませんか。黄色や茶色になっていませんか。ばい菌でべろが黒くなる黒毛舌もあります。べろの上でばい菌が繁殖し、色素を産生して着色しているのです。そのため、べろの掃除をしっかりすることが大事です。べろを出して、端をタオルでおさえ、歯ブラシでこすってください。外国ではべろの掃除具もスーパーで売っています。健康な舌はきれいな粘膜色をしています。

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舌は味覚を保つうえでも大切です。
べろを良く見てください。ブツブツ膨れている白い点々を糸状乳頭といいます。その中に、少し大きな赤い点々があります。これが茸状乳頭といい、この中に、味を感じる「味蕾(みらい)」があります。舌のばい菌が増えて、茸状乳頭が見えなくなるようでは、味蕾が働かなくなって、「味おんち」になってしまいます。

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(味細胞は高齢者でも10日ほどで再生されます)

入れ歯であろうと、普通の歯であろうと、「囲い」がなければ飲み込めません。
歯が並んで、口の中に囲いができているからこそ、舌で押して飲み込むことができるのです。「8000」の人は、かめないし、食べ物がいつまでも口の中に残ってしまいます。入れ歯があれば、おいしく全部食べられますし、顔つきも元気な顔に変わります。おしゃべり(発音)もできるようになります。

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質疑応答より
Q:舌をこすりすぎても、味蕾は損なわれないのですか? 
A:多少は傷つくかもしれませんが、味細胞は10日間ごとに作り変えられているので、ブラッシングで傷ついたとしても新しく作られていきます。味覚が鈍る心配はありません。年寄りは味が濃くないと分からない、と思っている方もいますが、味覚の鈍磨はそれほどありません。家族と同じ味付けでいい。舌を清潔に保ってもらえれば大丈夫です。

おわりに
迎寿のために、健康寿命を伸ばしましょう。そのためにも、口の中の管理をしっかり行いましょう。月に一度は歯医者に行って、口の中のクリーニングをしてもらうことをお勧めします。家では、ご自分で清潔に保つよう「自主トレ」に努めてください。


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