2013年08月10日

第151回らくわ健康教室「高齢者と糖尿病 〜糖尿病でもシニアライフを楽しもう〜」

6月21日開催のらくわ健康教室では、「高齢者と糖尿病 〜糖尿病でもシニアライフを楽しもう〜」と題して、洛和会丸太町病院 内分泌糖尿病内科 医員で、医師の西村 真理(にしむら まり)が講演しました。


概要は以下のとおりです。

Okはじめに
高齢者とは65歳以上の人を指します。2010(平成22)年の統計では、日本の全人口の23%が高齢者で占められており、2050年には40%を超えると予想されています。まだまだ元気な方も多いですが、一方で、糖尿病を患う高齢者が増え続けています。本日は、高齢者糖尿病の特徴や、糖尿病と付き合うために大切なこと、具体的な療養行動のヒントなどをお話しします。

※以下の画像は全て、クリックすると大きいサイズで見ることができます。

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10年前と比べて高齢者の糖尿病発症率が急増しています。戦後、欧風化された食事や運動不足の影響だといわれています。

高齢の糖尿病患者さまの特徴
老化の程度は個人差が大きいため、同じ年齢でも、病気一つなく、若いころと同じ仕事をしている人もいれば、そうでない人もいます。人それぞれ、身体的、精神的、社会的にさまざまな背景をもっており、個人に合わせた治療が必要になってくることから、画一的な治療はできません。それらを考慮したうえで、高齢の糖尿病患者さまの特徴を手短にいうと、

  • 血糖が大きく変動しやすい
  • 合併症も多くなり、ほかの病気も多くなる
  • 糖尿病以外にも悩みが多い

ということが挙げられます。

インスリンの分泌、効き方の両方が衰え、血糖値が高くなりやすい
30歳を過ぎると食後血糖が上がりやすくなります。

  • 原因:インスリンの食後の上昇が遅れる。インスリンの効きが悪くなる。
  • インスリンの効きが悪くなる原因:運動量が減る、筋肉が減る、内臓脂肪が増える など。

低血糖になりやすい
血糖を下げる薬の代謝・排泄が遅くなり、体内に蓄積した結果、低血糖が起こりやすくなります。

  • 低血糖になりやすい状況:75歳以上、多剤併用、腎不全、退院直後、食事摂取の低下
  • 薬が蓄積する以外にも原因があり、低血糖になりやすい。
  • 低血糖になっても、症状が出にくい。
  • ほかの病気の薬も多くなり、予想もつかない薬の飲み合わせで、低血糖が起こることがある。

糖尿病性の合併症が増える

  • 年齢とともに動脈硬化が進む。
  • 脂質異常症、高血圧、高尿酸血症(痛風)、喫煙などによって、相乗的に動脈硬化を進行させる。
  • 高齢者では、血糖が高いと脳卒中が増える。身体活動が減ると、より一層増える。

一方で、食事や起床・就寝時間、運動、喫煙、飲酒など、これまでの生活習慣は、医者や家族に言われるなどして、頭ではわかっていても、なかなか変えられません。また、老化に伴い体の融通がきかなくなり、変えようと思っていてもできないこともあります。

ほかの病気も増えてきます。最も問題となるのは認知症で、高血糖の人は、脳血管認知症になる可能性が、健康な人の2〜4倍、アルツハイマー病になる可能性は1.5〜2倍になります。そのほか、さまざまな病気が併存する率も高くなり、相互に悪影響を及ぼします。特にがんへの注意が必要です。
病気以外にも、人間関係や金銭面、仕事、老化の自覚など、悩みが尽きません。病気のことばかり心配していられない心境になります。
そのため、認知症でなくても、薬の飲み忘れやインスリンの打ち忘れが起きやすいです。

糖尿病と付き合うために
糖尿病があっても、自分らしく充実した人生を過ごしましょう。そのためには何が必要でしょうか。

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血糖コントロールの目標
日本糖尿病学会が、新しい目標値を決めました。

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※熊本県で開催された第56回日本糖尿病学会 年次学術集会で発表された宣言


下記は、高齢者の目標値として以前から示されていたものです。全ての患者さま対象のもの(上段)と比べ、少し緩めですが、高齢者はこの程度でも良いのではとも考えられています。
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年齢にあった自己管理を
高齢者の患者さまも、「食事療法」「運動療法」「薬物療法」の治療を行うことは変わりありません。今までの自分を生かして、少しだけ努力を足して、自分らしく療養しましょう。「人に言われてやらされている」から「自分はこれをしたいからする」という発想の転換で、自己管理を楽しく続けられるのではないでしょうか。

血糖値を下げるのは、何のためでしょうか
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前向きな療養のために
自分で「治療しよう」と思えたとき、前向きな行動が出てきます。
例えば、薬の飲み忘れが多いと気付いた場合(問題の抽出)、薬を1回ごとに分けて入れる箱を買って(問題解決の方法)、外出時にも利用するなど、良いことを思いついた結果、飲み忘れが減り、妻にも褒められ(自己、他者評価)、これで旅行も心配なく行ける(目標の設定)といった具合です。

療養のこつは先人に学べ
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具体的な療養のこつ↓

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民間療法と健康食品
約7割の患者さまが、何らかの民間療法や健康食品を試したことがあります。これらは無害なものも多いですが、好ましくない被害(人体に及ぼす直接被害、正規の医療から人々を遠ざけてしまう間接的な被害、経済的被害)をもたらすものもあります。いろいろ試してみたくなることは悪いことではありませんが、世のなかに「良いことばかり」「楽していいことがある」というものは、無条件に信用できるかどうか、考えてから購入しましょう。

まとめ
年齢とともに、糖尿病治療にとって不利なことも出てきますが、厳格なコントロールをしなくて良い場合もあります。
治療の目標は、血糖を適度にコントロールして、自分らしく生きられる時間を延ばすことです。
療養のキーワードは「できるところから少しずつ」。多少失敗しても、また挑戦すれば良いでしょう。

質疑応答から
Q:
ほかの薬も含めて7種類もの薬を飲んでいるのですが、大丈夫でしょうか?
A:薬の飲み合わせによる弊害については、お薬手帳を主治医に見せて、相談されたらよいでしょう。
Q:低血糖の恐れがある薬を飲んでいます。運動は食事の前と後のどちらがいいのですか? また、ブドウ糖はどこで買えますか?
A:運動や入浴を食事の前に行うと低血糖が起きやすいので、運動などは食事をした後にすることをお勧めします。ブドウ糖は薬局で買えます。


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