7月5日開催のらくわ健康教室は、「動かしましょう! 頭や体」と題して、京都市音羽地域包括支援センター 課長で、看護師・介護支援専門員の尾山 典子(おやま のりこ)が講演しました。概要は以下のとおりです。
はじめに
本日は、私が働いている「地域包括支援センター」の活動をご紹介しながら、健康生活を送るための介護予防についてご説明します。
地域包括支援センターとは
「高齢サポート」の愛称がついています。高齢者やそのご家族をさまざまな面から支えている機関です。高齢者が住み慣れた地域で安心して在宅生活が送れるように支援する機関で、京都市においては全61中学校区ごとに一カ所設置されており、すべて民間委託されています。
地域包括支援センターの職員
- 保健師(在宅看護の経験ある看護師でも可)
- 主任介護支援専門員(通称:ケアマネジャー)
- 社会福祉士
の三者が協力して支援を行います。
業務内容
介護や健康について
権利や財産を守ることについて
地域ネットワークの構築
介護予防への取り組み
(介護予防プランの作成・介護予防教室の開催)
単身高齢者の全戸訪問事業
介護や健康について
- 介護保険を利用したいが、体調が悪いなどの理由で申請に行けない場合は、申請の代行をします。
- 介護予防サービス(デイサービスや訪問看護・介護ヘルパーなど)を利用したい場合の相談にのります。
- 現在の健康を維持したい方への体操教室などの開催をします。
<介護保険を利用するために>
介護保険は、利用する前に申請が必要です。
認定調査が行われ、医師の意見書とともに、審査会によって検討されます。介護認定を受けることによって介護保険が利用できます。
認定は、非該当・要支援1・2、要介護1〜5の区分に分けられます。認定を受けた方へのサービスには、訪問介護(ヘルパー)、訪問看護、訪問リハビリテーション、通所介護(デイサービス)、通所リハビリテーション、福祉用具のレンタルなどがあります。
権利や財産を守ることについて
- 認知症になった際に、財産の管理が不安だと感じている方への権利擁護支援を行います。
- 振り込め詐欺などへの啓発活動を行っています。
- 虐待関連の相談窓口です。
- 認知症へのサポート体制の周知活動を行っています。
地域のネットワーク構築について
地域住民の皆さまや警察・消防・医療機関などと連携し、高齢者の方々が安心して暮らせる地域をつくるためのネットワークづくりを行っています。(独居高齢者の全戸訪問・災害時の見守り台帳作りなど)
介護予防への取り組み
健康を保つための努力を重ね、できる限り介護保険のお世話にならないで済む頭と体の維持を図ります。具体的な取り組みとして、以下のサービスがあります。
◆ 一次予防サービス
65歳以上の方なら、希望すればどなたでも参加できる運動教室や認知症予防教室(脳トレ教室)です。各地域で行われている「すこやかサロン」「いきいき筋トレ」「公園体操」やラジオ体操などが該当します。
脳トレ教室では、読み書きや計算をします。難しい内容より、小学校低学年ぐらいのやさしい内容で行ったほうが効果があるといわれています。
(主催・・・各学区の地域包括支援センターや介護予防推進センターなど)
※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。
◆ 二次予防サービス
介護保険の認定を受けている方は参加できません。参加できるのは、市から送られてきた「基本チェックリスト」に返答した後、チェックした内容に基づいて指定を受けた方で、医師の同意を得た人です。
二次予防サービスとしては、運動教室、栄養教室、口腔教室などを行っています。
(主催・・・京都市:各地域の介護予防推進センター、大津市:地域包括支援センター)
◆ 一次予防と二次予防の違い
- 一次予防は、希望すれば誰でも参加でき、内容などについて評価はしません。
- 二次予防は、メニューが決まっており、どれぐらいできているのかを細かくチェックし、評価をします。
介護予防の重要性
高齢者が動けなくなる理由としては、病気より「廃用性」が問題だとされています。「廃用性」とは、健康な人であっても、使わないと筋肉が衰えたり関節が動きにくくなることです。使えないというよりは、使わないでいる結果、動かなくなることです。
丸一日、安静のままで筋肉を使わないと体力が回復するのに1週間かかるともいわれますし、若い大学生の場合でも、1週間じっと安静にしたままだと、元に戻るのに3週間かかったという調査結果が出ています。
このため、毎日少しでも頭や体を使い、日常生活においてそれを習慣づけることが重要です。
おわりに
地域包括支援センターの役割は、「高齢者が認知症や病気になっても、安心して暮らせる地域の基盤づくり」です。介護に関する相談だけでなく、健康に暮らすためにさまざまな支援活動を行っています。何かありましたら、お近くの地域包括支援センターへご相談ください。
質疑応答から
Q:しんどい(体がつらい)のに介護保険を認定してもらえない、ともよく聞きますが・・・
A:認定に際し、独居で頑張っている方への認定が低い傾向が指摘されています。調査員に対し、「しんどい」事実を包み隠さずに訴えることが大事です。介護保険で非該当になっても、ほかの支援が受けられる場合もありますので、支援が必要と思われる場合は、一度、地域包括支援センターにご相談ください。