2014年03月08日

第158回らくわ健康教室「肺がんのこと 〜タバコを吸ってる人は要注意、吸わない人もちょっと心配?〜」

8月20日開催の第158回らくわ健康教室は、「肺がんのこと 〜タバコを吸ってる人は要注意、吸わない人もちょっと心配?〜」と題して、洛和会音羽病院 呼吸器外科 部長の一瀬 増太郎(いちのせ ますたろう)が講演しました。


概要は以下のとおりです。

P_lectureはじめに

本日は、肺がんについて、その疫学や、種類とその特徴、検査と診断、治療方法などについてお話しします。禁煙の大切さがよくおわかりいただけると思います。

肺がんの疫学

日本における死因の第1位は「がん」(全体の約30%)です。臓器別のがんの死亡率で、「肺がん」は第1位で、男女とも増加傾向にあります。

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喫煙とがんの関係

タバコを吸う人がかかりやすい病気には、咽頭がんや肺がん、末梢(まっしょう)血管障害、動脈瘤(りゅう)、食道がん、肺気腫、気管支ぜんそく、虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)、脳卒中(くも膜下出血、脳梗塞)などがあります。特に男性において肺がんは咽頭がんに次いで喫煙との関係が深く、咽頭がんの95.8%、肺がんの71.5%が喫煙と関係があるといわれています。肺がんを患う最大の原因は、喫煙です。

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全体の喫煙率は下がっているが・・・

タバコの害は、喫煙者自身が肺がんにかかりやすくなるだけではなく、副流煙による周囲の人の受動喫煙も問題です。近年、男性の喫煙率は低下しているものの、高齢者に比べ若い人の低下率は小さい傾向にあります。また、女性の喫煙率は若い人を中心に上昇しており、その対策が課題となっています。

喫煙開始年齢別に見た肺がんの死亡率

喫煙開始年齢が早いほど、肺がんの死亡率は高まります。タバコを吸わない非喫煙者の肺がん標準死亡率を「1」とした場合、開始年齢が19歳以下の死亡率は5.7倍、20〜24歳は4.7倍、25〜29歳は4.1倍、30〜34歳は2.4倍、35歳以上は1.4倍になります。(がんの統計2003年度版=がん研究振興財団発行=より)

喫煙をやめてからの年数と肺がん死亡率の関係(男性)

禁煙期間が長ければ長いほど、肺がんによる死亡率は下がります。非喫煙者の肺がん死亡率を「1」とした場合、禁煙して4年以下の場合は2倍、5年以上なら1.6倍、10年以上なら1.4倍まで死亡率が低下します。タバコを吸い続けている人の死亡率は4.5倍ですから、禁煙の効果は明らかです。

今すぐ禁煙を

禁煙しても、それまでに吸ったタバコによる害は残ります。しかし、早くやめればやめるほど、全体の喫煙量が減るので、肺がんになる可能性は下がります。さらに、禁煙期間が長ければ長いほど、肺がんになる可能性が下がります。
また、肺がんで手術をする場合、タバコのために肺の機能が悪いと、完治を見込めるはずの手術ができなかったり、合併症による手術関連死亡が増えたりします。

肺がんの種類

肺がんには、肺から発生したがん(原発性肺がん)と、乳がんや大腸がんなどほかの臓器に発生したがんが肺に転移したもの(転移性肺腫瘍)があります。一般に肺がんとは、原発性肺がんのことを言います。
肺がん(原発性肺がん)は、組織所見により「腺がん」「扁平(へんぺい)上皮がん」「大細胞がん」「小細胞がん」に分かれます。治療上の分類では、をまとめて「非小細胞肺がん」と呼びます。

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肺がんの検査

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胸部X線検査は、異常な影を見つけることができる比較的簡便な検査です。反面、ある程度大きな腫瘍でないと見つけにくい、死角になる部分が存在するなどの欠点があります。胸部CT検査は、死角になる部分が少なく、淡い陰影や小型病変も発見可能なので、病変の存在診断には最も有効な検査方法です。(欠点は、費用が高いことや、放射線の被爆量が多いことです)

病理診断とは

病理診断とは、画像診断で胸部異常影を認める部位から細胞や組織を採取し、それを顕微鏡で見て、がんかどうかを診断することです。がんの確定診断には、原則として病理診断が必要です。

内視鏡検査

細胞や組織を取る方法の一つに、気管支鏡検査があります。気管支に細くて柔らかい内視鏡を口や鼻から挿入し、細胞や組織を取って調べる検査です。麻酔が十分でないと苦しい検査なので、洛和会音羽病院では一泊入院をしていただき、十分に麻酔をしたうえで、眠っている間に検査が終了するようにしています。
内視鏡検査にはこのほか、胸部3カ所を小切開し、胸腔鏡を用いて胸腔内や肺表面の観察や生体検査を行う胸腔鏡検査があります。

PET検査

陽電子放射断層撮影(PET)装置を用いた検査です。がん細胞はブドウ糖を多く取り込む性質があり、ブドウ糖に微量の放射性物質を混ぜた薬剤を注射して断層撮影することで、がんの診断や病気の広がりを診断することができます。

肺がんの治療法

肺がんに対する有効な治療法は、手術、放射線療法、化学療法の3つです。病気の種類や進行の程度により、この3つを単独で行ったり、組み合わせたりして治療を行います。

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<手術>

切除可能な状況であれば、最も治癒の可能性が高い治療法です。できるだけ、「肺葉切除」などの標準手術を行いますが、肺機能が悪い場合は、患者さまの状態に合わせて「区域切除」や「部分切除」などの縮小手術を行うことがあります。
洛和会音羽病院では、患者さまの体の負担を少なくするために、胸腔鏡下手術で肺がんの外科治療を行っています。

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手術による主な合併症には、出血や空気漏れ、肺炎などがあります。手術よる死亡率は全国平均で1〜2%です。
ただ、前述のとおり、喫煙者の場合は、肺機能の低下により手術そのものができなかったり、術後に重い合併症が起きる可能性が高くなります。禁煙は手術の成功のためにも重要です。

<放射線療法>

がんが局所にとどまっている場合には、手術に次いで有効な治療法です。治癒が望みにくい状況でも、症状緩和などに有効です。
放射線療法は、放射線を照射した部位にしか効果がありませんが、身体への負担が小さいため、治癒だけでなく疼痛管理(痛みを抑える)などにも使用されます。
放射線療法の副作用としては、放射線による一種のやけどのような炎症症状(食道炎、肺臓炎、皮膚炎)が現れますが、副作用軽減の技術も進んでいます。

<化学療法>

生存期間の延長や生活の質(QOL)の改善を目的として行われます。
化学物質を基にした薬剤で、がん細胞のDNA合成に必要な代謝物やDNA合成を直接阻害して、がん細胞を減少させることを目的とした治療法です。

――抗がん剤が肺がんに対して「有効」であるということの意味は?
医学的に「有効」とは、がんの大きさが半分以下に縮小し、その状態が4週間以上続くことをいいます。一般に考えられる「がんが治る」とは少し違います。

非小細胞肺がんに対する薬物療法の適応

手術のできないIII期の場合は、放射線療法と化学療法の併用が勧められます。放射線が使用できない場合(胸水がたまっている、放射線を当てる範囲が広すぎる場合など)には、抗がん剤の単独治療を行います。
手術で取りきれる範囲を超えているIV期の肺がんには、抗がん剤が治療の中心となります。
新しい抗がん剤の開発が進んでおり、特定の型の肺がん(EGF-R遺伝子変異が陽性の症例、ALK遺伝子が陽性の症例など)に有効な分子標的薬が登場しています。今後も新しい薬の登場によって治療方針の細分化が進む可能性があります。

小細胞肺がんに対する薬物療法

小細胞肺がんは非小細胞肺がんに比べ、化学療法剤による効果が得やすいので、化学療法が治療の中心となります。
初回治療により、限局型の約90%、進展型の約80%の患者さまにおいて、がんの大きさを半分以下に縮小させることが可能です。限局型の約30〜40%、進展型の約10〜20%の患者さまにおいて、がんがほぼ消失した状態になります。
ただし、多くの患者さまが完全には治癒せず、次の治療が必要となります。
通常の検査で腫瘍がわからないくらいに小さくなり、その状態が2〜3年以上続くと、再発の危険性は大きく減少します。

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おわりに

洛和会音羽病院には、肺がんの診断と治療に必要なものが全て整っています。専門の呼吸器内科医や呼吸器外科医たちが、最新鋭の医療機器(マルチスライスCTや、PET-CT、放射線治療のリニアックなど)を活用しながら、患者さまの負担ができるだけ少ない方法で肺がんの治療を行っています。

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