2015年06月13日

第190回らくわ健康教室「お口の中の健康長寿を目指して」

2014年4月22日開催のらくわ健康教室は、「お口の中の健康長寿を目指して」と題して、洛和会音羽病院 総合歯科 医員で歯科医師の松浦 歩(まつうら あゆむ)が講演しました。


概要は以下のとおりです。

Img_1389はじめに

社会の超高齢化によって、高齢人口の割合が急増しています。2011(平成23)年の国立社会保障・人口問題研究所の推計では、65歳以上の高齢者の割合は、総人口の約23%(うち後期高齢者11.5%)です。それが2030年には、30%(同18%)となります。
一方、寿命と健康の関係を見ると、平均寿命と健康寿命(日常生活に制限のない期間)の差が男性で9.13年、女性で12.68年あり、これをいかに縮めるかが課題です。健康寿命を平均寿命に近づけていくのが高齢社会の課題ですが、口の中を健康に保つことが、健康寿命を伸ばす一因となります。

国の目標

厚生労働省がまとめた「第2次 健康日本21(※)」には、「咀嚼(そしゃく)機能をはじめとする口腔機能が大きな役割を果たす」と記載されており、次のような目標を掲げています。

※健康日本21とは…
国民の健康増進・推進に関する基本的な方向や目標に関する事項などを定めたもの。

※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。

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70歳を境に、歯の数が減る

国は1989年以来、8020運動(「80歳になっても20本以上の歯を保とう」という運動)を進めています。年代別で見れば、自分の歯を保有している人は以前より増えていますが、歯が20本以上ある人の割合は、70歳ごろを境に大きく減ります。歯周病などの影響です。70歳前後では、歯を全て失う無歯顎者も一気に増加します。

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歯を治し、かみ合わせ(咬合)を回復するには

以下の4つの方法があります。

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このうち、には保険が適用されます。
ブリッジは、隣り合った3本の歯を失うと対応できませんが、前歯には特例があります。
義歯は、金属(保険適用外)で薄く作ると装着感が良く、熱を感じることができる利点があります。
インプラント(保険適用外)は、チタン製の釘を骨に打ち込みますが、骨の質によってはできないことがあります。

入れ歯は生存率を高める

咬合が失われた人(咬合崩壊群)を対象に、義歯(入れ歯)と生存率の関係を調べた研究によれば、義歯使用群は約8年後も8割の人が生存していましたが、義歯不使用群では生存率が5割以下でした。歯を失っても放置せずに、義歯などで咬合を安定させることは、長生きするために不可欠です。

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入れ歯(部分床義歯)の使用者を対象に、使用する理由・使用しない理由を調べた研究によれば、使用する理由として、8割近くが「食事がしやすくなる」、6割余りが「かみ合わせが安定する」を挙げ、以下、「見た目が良くなる」「しゃべりやすくなる」「反対の歯が伸びない」…と続きました。
一方、入れ歯を使用しない理由では、7割近くが「違和感がある」、5割近くが「食物がはさまる」を挙げ、以下、「義歯自体が嫌だ」「しゃべりにくくなる」「かめない」「歯茎が痛い」…でした。
入れ歯がどれだけもつかについては、差があるものの、5年を目安とすれば良いでしょう。良い義歯は10年以上もちます。

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「良い義歯」「悪い義歯」とは

60歳代の患者さまが以下のような理由で受診されました。

  • 義歯は10年前から装着している
  • 2週に一度、歯科医院で上下義歯を調整してもらっている
  • うまく食べられない
  • かむと下の歯ぐきが痛い
  • 下の義歯が、ガクガク動く

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義歯をはめた様子(左)を見ると、かみ合わせ(咬合高径)が低い、かむ面(咬合平面)が傾いている、留め金が見える、などの問題点が分かります。
入れ歯を外してみると、上の歯(右上)はかなり残っているものの、下顎(右下)には歯が全くなく、歯ぐきがやせて入れ歯が乗る丘「床縁」が細いことが分かります。

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上の義歯は、留め金が歯に沿っておらず不適合。下の義歯は、義歯が覆っている面積が狭い。また、上下とも人工歯が小さく、磨り減っている…などの問題がありました。

この患者さまの義歯の問題点をまとめると、以下のようになります。

  • 咬合高径が低い
  • 咬合平面が傾いている
  • 沈み込み防止装置(留め金=レスト)が不適合
  • 維持装置の不適合
  • 床縁が狭すぎる
  • 人工歯の不適合(排列、磨耗)

良い義歯をつくる

問題点を全て考慮し、正しい義歯を設計しました。

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左が新しく作った義歯、右が従来の義歯です。
新しく作った義歯は、留め金を特殊プラスチック、床縁をチタンで作りました。下の床縁は極力幅広くし、人口歯の形も整えました。

治療終了後の様子は以下のとおりです。

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上の歯が下の歯より前に出て本来の位置になりました。留め金が歯ぐきと同じような特殊プラスチックのため、目立ちません。
「10年ぶりにおせち料理が食べられた」と喜んでいただきました。

まとめ

  • 義歯の設計には、原則があります。
  • 患者さま個人個人に合わせた義歯の設計が必要です。(金属床など)
  • 義歯と現在残っている歯の定期的なケアが必要です。(虫歯治療、歯周病治療)
  • 調子が良くても定期的に受診しましょう。
  • 今残っている歯を極力守りましょう。
  • 歯・咬合がなくなれば、ブリッジ、義歯などの治療をし、機能や審美性を回復させましょう。

これらが健康長寿につながります。


ほかのらくわ健康教室の記事はこちら⇒らくわ健康教室 講演録3

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