2014年08月12日

第194回らくわ健康教室「前立腺肥大症の手術について」

5月27日開催のらくわ健康教室は、「前立腺肥大症の手術について」と題して、洛和会音羽病院 泌尿器科 医員で医師の上田 政克(うえだ まさかつ)が講演しました。


概要は以下のとおりです。

はじめにImg_1186hp

前立腺肥大症は、加齢に伴って多くの男性がなりやすい疾患です。本日は前立腺肥大症の説明や、治療全般、レーザーを中心とした手術療法についてお話しします。

前立腺って何をする臓器?

前立腺は、膀胱(ぼうこう)から先の男性の尿道の周りにある臓器です。精液の一部である前立腺液を分泌し、射精時には収縮する働きがあり、生殖活動のために必要な臓器です。実は、前立腺の働きや仕組みにはまだよくわかっていない点が多くあります。 

前立腺の構造

前立腺は、尿道と一体化した内線と、その外側にある外線の2層構造になっています。ミカンによく例えられますが、内側の実の部分が内線、外側の皮の部分が外線というわけです。このうち前立腺肥大は内線部分、前立腺がんは外線から主に発症します。

※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。

image/_photos_uncategorized_2014_07_08_5.jpg

前立腺肥大症とは?

加齢により前立腺のサイズが大きくなり、排尿に関係する多様な症状が起きる疾患です。多くは50歳代以降に発症します。55歳以上の男性の5人に1人は症状があり、60歳代、70歳代と年齢を重ねるにつれて発症の頻度が高まります。

前立腺肥大症による症状

排尿と蓄尿の両面で症状が出ます。排尿症状は尿道の異常、蓄尿症状は膀胱の負担が増して過敏になる影響でもたらされます。

  • 排尿症状: おしっこを出すのに困る(出しにくい、残尿感がある、キレが悪い)
  • 蓄尿症状: おしっこをためるのに困る(トイレが近い、夜何回も起きる、尿意を我慢できない、漏れる)

重症度の判定や目安は

以下の表を参考に、ご自分の現状を点検してください。7項目の合計点が8点以下なら軽症、9〜19点なら中等症、20点以上なら重症と判定されます。

image/_photos_uncategorized_2014_07_08_8.jpg

前立腺肥大症の治療

肥大症は、がんではありません。命に関わることはないので、治療するかどうかは、患者さまが症状により困っているかどうかが基準となります。
また、前立腺の大きさと症状は必ずしも一致しません。前立腺が大きくても困っていない人もいれば、大きくなくても困っている人もいます。
とはいえ、尿閉(おしっこが全く出ない)や腎機能障害(尿が腎臓に逆流するなど)のような症状があれば、前立腺の大小に関係なく治療が必要です。

前立腺肥大症の薬物療法

前立腺肥大症と診断された場合、まずは薬で治療を行います。治療薬には、おしっこの出る隙間を広げる効能がある薬(ハルナール、ユリーフ、フリバス)と、前立腺そのものを小さくする薬(アボルブ)の2種類があります。副作用が少なく効能も良い薬が多いため、手術までしないといけない患者さまは減ってきています。ただ、薬をやめると肥大症が再び起きてしまうため、手術の役割が重要になります。

前立腺の手術療法

下記の場合は、手術療法を検討します。

  • 薬物療法による効果が不十分な場合
    …前立腺肥大症は加齢と共に進行します。最初は薬の治療で改善していても徐々に悪化することがあります。
  • 尿閉(おしっこが全く出ない)の場合
    …早期に手術を考慮する必要があります。

前立腺肥大症手術の分類

下記の3種類の方法があります。

 切除(従来行われてきた手術)
 
核出(2000年代から普及)
 蒸散(低侵襲(しんしゅう)、ごく一部の施設で実施)

従来の手術(切除):TUR-P(経尿道的前立腺切除術)
尿道から内視鏡を入れ、内線(ミカンの実にあたる部分)を電気メスで少しずつ削って肥大した部分を回収する方法です。血流が豊富な前立腺を削ることになるため、一定量以上の出血があります。(場合によっては輸血が必要になります)

核出手術:HOLEPまたはTUEB(経尿道的前立腺核出術)
尿道から内視鏡を入れ、内線と外線の境界に沿って、レーザーで腺腫(良性腫瘍)をはがす方法です。境界部には血管が少なく出血が少ないのが利点です。はがした部分はいったん膀胱の中に落とした後、吸引・回収します。そのため、モーセレーターという吸引・回収する機械が必要です。ほかの病気で血液がサラサラになる薬を飲んでいる方は、数日間、薬の服用を中止していただきます。

image/_photos_uncategorized_2014_07_08_17.jpg

手術の後は

1週間程度の入院が必要ですが、早い人なら5日ほどで退院できます。術後3〜4日間、尿道にバルーンカテーテルを留置します。カテーテル抜去後、出血や排尿困難などの問題がなければ退院となります。

手術の合併症

下記の合併症の可能性があることを説明し、患者さまの理解を得たうえで手術を行います。

 出血、血尿: 核出手術では、ほとんど輸血は必要ありません。
 被膜損傷: 前立腺の被膜部分に切り込んでしまう恐れがあります。
 射精障害: 射精した精液が膀胱に逆流する場合があります。

手術を受けられた患者さまの声

  • おしっこの出方が20歳代のころのようだ
  • トイレへ頻繁に行かなくて済むようになった
  • そうめんのような尿の太さがうどんほどの太さになった

補足>

前立腺がんについて

PSA(血液検査)で調べることができます。基準値4ng/mlを超えると、前立腺がんの疑いがあります。
京都市でも市民検診が始まりました。前立腺肥大症と前立腺がんを合併している患者さまや、排尿異常で受診された患者さまにがんが見つかるケースもあります。
前立腺がんは、手術や放射線療法で治療しますが、限局性前立腺がんの場合、7割ぐらいは根治可能です。そのためにも、60歳代以降の男性は、前立腺がん検診をお勧めします。

質疑応答から

Q:前立腺肥大症の手術をした後、尿が漏れる心配は?
A :尿道には尿道括約筋があり、手術で傷つけることはないので、理論的には尿が漏れることはありません。ただ、肥大症の手術後、詰まりがなくなって尿が漏れることはあり得ますが、あった場合でも、一時的なことが多いです。

Q:「蒸散」という治療法とは?
A :内視鏡を尿道から入れ、グリーンライトレーザーという機具で前立腺を蹴散らすようにして(組織を熱エネルギーで気化させ消失させる)治療する方法です。核出手術と違って腺腫を完全には切除できない可能性がありますが、出血がより少なく、血液がサラサラになる薬を飲んでいる方でも服用を止めずに手術できる利点があります。
※洛和会音羽病院ではまだ導入されていません。

Q:尿道を広げる薬を飲んでいますが、ほかの筋肉を緩める恐れはありませんか?
A :基本的にはありません。以前は、ほかの場所に影響が出る薬もあったのですが、今の薬は副作用が減っています。  


ほかのらくわ健康教室の記事はこちら⇒らくわ健康教室 講演録3

カテゴリー:らくわ健康教室 | 更新情報をチェックする