2015年02月19日

第170回らくわ健康教室「体の中がここまで見えます 〜最新の画像診断について〜」

2013年11月13日開催のらくわ健康教室は、「体の中がここまで見えます 〜最新の画像診断について〜」と題して、洛和会音羽病院 放射線科 部長で、医師の久保 聡一(くぼ そういち)が講演しました。


概要は以下のとおりです。
9768_3はじめに
放射線科医とは何をする人か、ご存じですか? X線写真などを撮る技師とは違います。撮れた写真を読影(画像から診断)して結果報告する医師(放射線診断医)や、放射線治療を行う医師(放射線治療医)のことです。
本日は、洛和会音羽病院にある最新型の画像診断装置の紹介を兼ね、体の中がどのように見えるか、ご説明します。


CTスキャンの基本原理
物体をさまざまな方向からX線で撮影し、再構成処理を行うと、物体の内部構造の画像を得ることができます。物体を走査(scan:スキャン)することから、CTスキャンと呼ばれます。CTとは、Computed Tomography(コンピューター断層撮影法)の略称です。X線は波長1pm(ピコメートル)〜10nm(ナノメートル)の電磁波です(※)。X線が物質に入射すると、さまざまな原因により吸収されながら通過していきます。CTスキャン装置は、X線の「吸収される」という性質を利用して、物体を調べているのです。今のCTの原型といえるEMIスキャナができたのが1972年、その後、メリカルCTや、MDCTの開発で、CTの機能が進化してきました。

※1pm=1mの1兆分の1の長さ、1nm=1mの10億分の1の長さ

洛和会音羽病院に新しく入ったCT
X線を出す電球(管球)が二つある2管球(Dual Source)CT装置「Definition Flash」には、従来の1管球CTと比べ、下記のようなさまざまな利点があります。

  • 1管球CTでは8秒ほどの息止めが必要だが、2管球は、息止めなしで撮影ができるほど、超高速撮影が可能で、救急の患者さまや赤ちゃんのように息止めが難しい人でも撮影ができる。
  • 心臓のように常に動いている臓器でも撮影でき、鮮明な画像が得られる。
  • 2方向から撮影することで、撮影時間が短縮でき、被ばく量を減らすことができる。
  • 2種類の光源を使うことも可能で、診断の精度が高まる。
                    

※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。

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例えば、尿管結石の判別もできます。

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結石の成分を分析し、色分けもできます。尿管結石のうち、上の画像の左上のピンクの点はシュウ酸結石、右側のブルーの点はカルシウム結石。カルシウム結石は超音波で割れやすいですが、シュウ酸結石は割れにくいです。

被ばくについての知識
放射線は、種類によってそれぞれ性質が異なります。また、自然界にも放射線はあり、私たちは毎日、放射線を浴びています。現在、一般人の被ばく限度(自然界および医療用放射線を除く)は、1mSv(ミリシーベルト)/年とされています。しかし、現実には、100mSv/年以下の被ばくなら、(本当にリスクゼロかは確認できませんが)ほとんど問題はないとされています。

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新しい3テスラMRI

MRI(核磁気共鳴画像法)は、CTとは異なり、被ばくの心配がありません。強い磁力によって身体各部の断面の画像が得られます。テスラとは磁力の単位で、3テスラは非常に強い磁力を意味します。
洛和会音羽病院に導入された3テスラMRIの利点は、従来の1.5テスラMRIと比べて、短時間の撮像で、より精度の高い画像が得られることです。加えて、体がくぐる半球状のトンネルの内径が、従来型より10センチ広がり、約70センチになりました。圧迫感が減ったことで、閉所恐怖症気味の方でも検査を受けやすくなったほか、横向きの体勢でも撮像できます。一方、磁力が強いため、ペースメーカーなど体内に金属類を埋め込まれている方は、検査できません。

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さまざまな部位や機能の撮像

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洛和音羽病院では
CTは診断用に2台、放射線治療用に1台稼動しています。(最新の2管球CTはすでに稼働中)
MRIは診断用に2台稼働中です。

検査を受けたいときは
当院を受診される以外に、各開業医さまから直接、放射線科に予約いただくことが可能です。
当院の各科外来でお待たせすることなく、ご希望の時間に最新の画像診断を受けていただくことができます。
放射線科医の読影結果は、各開業医さまにご連絡いたします。

質疑応答から
Q:あらためて、2管球CTのメリットは?
A

  • 解像度がアップする
  • 撮影時間を短縮できる
  • 被ばく量を減らせる
  • 管球ごとに異なったX線のエネルギーを使うことで病気の判明に役立つ

など、いろいろ使い分けができることがメリットです。

Q:時間差を置いて撮影することで被ばく量は、変わりますか?
A:何回かに分けて撮影しても、一度に撮影しても、被ばく量としては同じです。

Q:ガラスやプラスチック破片が体に入った場合、MRIでわかりますか?
A:3テスラのほうがよく映ります。小さな鉄球でも、検出率が上がります。


ほかのらくわ健康教室の記事はこちら⇒らくわ健康教室 講演録3

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