2014年09月09日

第200回らくわ健康教室「知っていますか? 背骨の病気 〜首・腰の痛み、手足のしびれ・痛み〜」

7月9日開催のらくわ健康教室は、「知っていますか? 背骨の病気 〜首・腰の痛み、手足のしびれ・痛み〜」と題して、洛和会音羽病院 脊椎センター 所長で医師の岩下 史(いわした やすし)が講演しました。


概要は以下のとおりです。

はじめにImg_1356

本日は、脊椎の仕組みから、診断と治療の仕方、各種疾患(頸椎(けいつい)疾患、腰椎疾患、変形性脊椎症、骨粗しょう症に伴う脊椎圧迫骨折)の治療などについてお話しします。

脊椎・脊髄の仕組みと働き

人間は、背骨(脊柱)で体を支えたり、体の曲げ伸ばしをしています。背骨の後ろ側に脊柱管と呼ばれるトンネルがあり、その中に脊髄があります。脊髄は脳と同じ組織で圧迫に弱いため、脊柱の骨で守っています。
脊柱は、骨(椎(つい)骨)が積み重なって構成されていて、上から頸椎(7個の椎骨)、胸椎(12個)、腰椎(5個)…とつながっています。脊椎や頸椎、腰椎の仕組みは以下のとおりです。

※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。

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診断と治療

まず問診を行い、病歴や症状などを伺います。「いつごろから」「どんなきっかけで」痛くなったかなどをまとめておいて話してくださると、スムーズな診察につながります。問診の後、神経学的診察(感覚障害、運動障害、腱反射、筋力、筋萎縮、排尿障害の有無)と、単純X線写真撮影を行います。必要なら、CT画像検査、MRI画像検査、脊髄造影検査なども行います。
脊髄(神経)の分節ごとに、支配する領域はおおよそ決まっているため、手や足などのどこがしびれたり痛いかを伺うことで、背骨のどの部分に支障を来しているかを推測できます。
治療には、保存的治療と手術があります。よく、「手術したら寝たきりになる」と心配する人がおられますが、正しくは「放っておくと寝たきりになる」人が多いのです。医療技術は進歩していて、現在では手術ミスはほとんどありません。逆に、手遅れになると、大幅な回復は望めなくなります。タイミングを逃さず、手遅れになる前に神経の圧迫除去をすることが大事です。以下、代表的な背骨の病気のいくつかについてご説明します。

頸椎椎間板ヘルニア

椎間板の変性による髄核脱出で、神経根、脊髄圧迫、肩こり、頸部痛が起きます。進行すると、脊髄・神経根の圧迫による症状(上肢への放散痛や、手指のしびれ感、感覚まひ、箸が使いにくい、書字困難、下肢の痙(けい)性まひによる歩行障害、膀胱(ぼうこう)障害など)が起こります。

<頸椎椎間板ヘルニアの治療>

手術によらない保存的治療には、安静臥床や薬物治療(非ステロイド系消炎鎮痛剤や筋弛緩剤)、トリガーポイント注射、硬膜外ブロック注射、頸椎牽引(けんいん)療法、温熱療法、体操療法などがあります。保存的治療で症状が改善しない場合や、耐え難い痛みが持続する場合、脊髄まひ症状(歩行障害や排尿障害など)が現れた場合は、症状と画像検査の結果などを検討して手術方法を考えます。

<頸椎前方除圧固定術>

首の前の部分を切開し、手術用顕微鏡で拡大視しながら、器具で椎間板ヘルニアと椎体の一部を削り取ります。そこに人工骨と、自分の腰骨などの一部を移植し、チタン合金製のプレートで固定します。以前の方法では術後1〜2週間の安静が必要でしたが、現在は1〜2日で離床できます。

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頸椎症性脊髄症

加齢により、首の骨が変形して脊髄まひが起きる病気です。脊柱管のトンネル部分が狭まり脊髄が圧迫されると、上肢への放散痛や、手指のしびれ感、感覚鈍磨、箸が使いにくい、ボタンが掛けにくい、歩行障害、膀胱症状(頻尿、排尿遅延、尿勢低下、残尿感)などが起こります。

<脊柱管拡大術>

狭くなった脊椎管を広げる手術です。脊柱管の骨(椎弓)を後方に広げ、人工の骨で固定します。

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そのほかの頸椎疾患

  • 頸椎後縦靭帯(じんたい)骨化症:
    頸椎は首の前側にある前縦靭帯、後ろ側にある後縦靭帯などで支えられています。その後縦靭帯が肥厚、骨化し、脊髄症、神経根症、頸部痛、頸椎可動域制限などの臨床症状が生じる病気です。原因不明で重篤な障害を引き起こします。糖尿病の方が多く、前縦靭帯も骨化している後縦靭帯骨化症の方もおられます。
    治療は、頸椎前方除圧固定術(首の前方より椎間板、椎体を削開し、骨化巣を摘出あるいは前方に移動させて脊髄の除圧をします。そして、腸骨あるいは腓骨を移植して固定します)などの方法で行います。
  • リウマチ性環軸関節亜脱臼:
    女性に多い疾患です。頸椎の骨(椎体)がずれ、脊髄を圧迫、後頸部痛や四肢のしびれ感、筋力低下などが起こります。
    治療は、ずれた椎体を元の位置に戻し、骨盤の骨の一部を移してチタン合金で止め、脊髄の圧迫を防ぎます。

腰痛

腰痛は8割以上の成人が経験しており、非常に発生頻度の高い疾患です。腰椎は可動性が大きく、上半身の全体重を支えるため、大きな力がかかります。

<腰痛の主な原因>

  • 背骨が原因の痛み:
    椎間板ヘルニア、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症、腰椎すべり症、腰椎圧迫骨折、側弯症、化膿性脊椎炎
  • 神経が原因の痛み:
    脊髄腫瘍、神経炎、糖尿病性神経症
  • 内臓の病気:
    胃腸疾患、胆嚢(たんのう)疾患、婦人科疾患、尿路疾患
  • 血管の病気:
    大動脈瘤、血管閉塞
  • 心因性:
    うつ病、ヒステリー

<急性期腰痛の保存的治療>

  • 安静と活動の継続:
    急性期で、炎症が強く痛みが激しいときには、安静にしてください。動ける程度の痛みならば、安静を続け過ぎないようにしましょう。通常の活動を継続したほうが早く回復し、慢性化を防ぐことができます。
  • 薬物治療:
    非ステロイド系消炎鎮痛剤(ロキソニン、セレコックスなど)、筋弛緩剤(ミオナールなど)、神経障害性疼痛治療薬(リリカ、サインバルタなど)
  • 硬膜外ブロック注射、神経根ブロック
  • トリガーポイント注射

<慢性期腰痛の保存的治療>

コルセットや、牽引療法、温熱療法、体操療法があります。慢性期には、腹筋と背筋の強化を目的に治療を行います。

<腰痛疾患の手術療法>

疼痛が激しく、日常生活に支障を来す患者さまに検討します。足がまひしたり、膀胱直腸障害のあるときには、なるべく早く手術をします。
脊椎手術には、以下の2つがあります。

  • 神経除圧手術:
    脊椎の支持性を壊さないように注意して、十分に神経の圧迫を取り除きます。
  • 固定手術:
    脊椎が不安定でグラグラしているときや、脊椎が体を支えることができないときに、背骨をしっかりさせるために骨移植した後に金属を用いて固定します。

腰椎椎間板ヘルニア

腰椎の間でクッションの役割を果たす椎間板が後方に飛び出して、神経を圧迫することにより、腰痛・坐骨神経痛が生じる病気です。ひどくなると足がしびれ痛み、まひすることもあります。足がまひしてきた場合は早期に手術を行います。また、排尿・排便障害を生じた場合は、緊急の手術が必要です。椎間板ヘルニアは自然吸収され良くなることも多く、3カ月程度、保存的に治療します。

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腰部脊柱管狭窄症

脊柱管が狭くなったため、神経が圧迫される病気です。重だるく、うずくように腰が痛み、下記の症状が見られます。

  • 間歇性跛行(かんけつせいはこう):
    少し歩くと足がしびれ痛みますが、前かがみの姿勢で休むと、また歩けるようになります。
  • 坐骨神経痛:
    お尻から太ももの裏側にかけて痛みます。

<腰部脊柱管狭窄症の治療>

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腰椎すべり症

腰椎が前方にずれて、腰痛、下肢痛を生じる病気です。すべりによる神経の圧迫により、坐骨神経痛、知覚・運動障害が発生します。腰椎すべり症は、以下の2つに分けられます。

  • 分離すべり症:
    関節突起の間が断裂しているため、腰椎が不安定になり生じます。
  • 変性すべり症:
    椎間板、椎間関節の老化現象により腰椎が不安定になり生じます。

<腰椎すべり症の治療>

 

image/_photos_uncategorized_2014_09_03_47_2.jpgそのほかの腰椎疾患

  • 変形性脊椎症:
    椎間板の変性(老化現象)による脊椎の変形。椎間板がつぶれて狭くなり、椎間関節も変形します。脊椎の変形により神経を圧迫すると、しびれや痛みなどの症状が出ます。腰痛、臀(でん)部痛、大腿前面の痛み、下肢のしびれ、坐骨神経痛などの、脊柱管狭窄(きょうさく)症の症状を呈します。
  • 脊髄腫瘍
  • 骨粗しょう症に伴う脊椎圧迫骨折:
    脊椎圧迫骨折は寝たきりになる原因の一つです。薬物療法で痛みを抑えたり骨密度の低下を防ぎ、コルセットで脊柱を安定させるなど、まずは保存療法を行います。骨折部が癒合せず偽関節となり痛みが続く場合や、神経まひが生じた場合は、手術を検討します。手術には、つぶれた骨の内部に人工骨などを注入する堆体形成術と、金属製の器具で脊椎を固定する脊椎固定術があります。

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医療の原則

  • 医療は不確実で、正確な再現性はありません。さまざまなリスクを伴います。
  • 患者さまは一人ひとりすべて病状が異なり、また人生観や生活環境も異なります。
  • 医師は、それぞれ修得技術、知識、経験、考え方が異なり、治療方針が違います。
  • 医師と患者さまの信頼関係と協力によって、それぞれ個別の治療を行わなければなりません。よく説明を受けてください。
  • 治療方針を最終的に決定するのは患者さま自身です。

ほかのらくわ健康教室の記事はこちら⇒らくわ健康教室 講演録3

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