2014年10月04日

第201回らくわ健康教室「回復期・維持期リハビリテーションの実際」

7月16日開催のらくわ健康教室は、「回復期・維持期リハビリテーションの実際」と題して、洛和会みささぎ病院 リハビリテーション科 主席係長で理学療法士の江口 勇気(えぐち ゆうき)が講演しました。


概要は以下のとおりです。

はじめにImg_1401

リハビリテーションとは、「病気やけが、加齢により、心身の機能が低下した状態となったときに、その能力の回復や維持、障がいの悪化予防を行うこと」です。本日は、リハビリテーションの流れを追いながら、回復期、維持期のリハビリテーションの実際についてお話しします。

リハビリテーションの流れ
 
 
急性期リハビリテーション
      ↓
 回復期リハビリテーション
      ↓
 維持期リハビリテーション
 

急性期リハビリテーションとは

  • 急性期とは、脳卒中などの病気やけがが発症してから1〜2週間ぐらいまでの時期のことです。
  • 脳卒中や大腿骨頸部(けいぶ)骨折などが発症した後、重大な合併症がなければ、入院した日もしくは翌日からベッドサイドでリハビリテーションを開始します。
  • 「廃用症候群」(寝たきりを引き起こす筋力低下、骨関節の固定化、呼吸機能の低下など)を予防することが重要です。

回復期リハビリテーションとは

  • 病気やけがなどが発症してから2週間ほどたち、症状がある程度安定してきた時期のことです。
  • 機能訓練と並行して、起き上がりや更衣動作などの日常生活動作訓練も行います。
  • 多くの場合、入院した病棟・病院で行うのではなく、リハビリテーション専門の病棟や訓練室、もしくは専門病院へ移って行います。

維持期リハビリテーションとは

  • 回復期のリハビリテーションが終わり、自宅(施設)で行う生活リハビリテーションです。
  • 維持期は「生活すること」自体がリハビリテーションとなります。
  • 目的は、回復期で回復した機能が衰えないように維持することです。
  • 日常生活をなるべく自分で行っていくことで、身体の機能・能力をできるだけ維持するためのリハビリテーションになります。

リハビリテーションは、チーム力で

最初に述べましたように、リハビリテーションとは、病気やけが、加齢により、心身の機能が低下した状態になったときに、その能力の「回復」や「維持」、「障がいの悪化防止」を行うことです。そのためには、医師と患者さま、ご家族を中心に、理学療法士や作業療法士をはじめ、看護師やケースワーカーなど、さまざまな職種が協力してリハビリテーションを成功させる必要があります。

※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。

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理学療法士は、起き上がる・立ち上がるといった足の筋力を強化する仕事が多く、「足の先生」とも呼ばれます。作業療法士は、手や肩を主たる対象に日常生活動作の回復を図ることが多く、「手の先生」とも呼ばれます。言語聴覚士は、言葉の訓練や高次脳機能障がい者へのリハビリテーションなどを行います

リハビリテーションの主な対象疾患

  • 脳卒中、そのほかの脳疾患、脳外傷
  • 脊髄損傷、そのほかの脊髄疾患
  • リウマチを含む骨関節疾患
  • 脳性まひを含む小児疾患
  • 切断
  • 呼吸器疾患
  • 循環器疾患
  • そのほか(がん手術や外科手術後のリハビリテーションなど)

回復期リハビリテーション病棟について

回復期リハビリテーションは、回復期リハビリテーション病棟のあるリハビリテーション専門の病棟や訓練室、もしくは専門病院へ移って行います。洛和会ヘルスケアシステムには、50床の回復期リハビリテーション病棟が洛和会音羽病院にあります。患者さまは、整形外科疾患、脳血管疾患の方が大半です。廃用症候群の方もおられます。
なお当会では、2015(平成27)年4月1日に、リハビリテーション専門の「洛和会音羽リハビリテーション病院」を開設します。(洛和会みささぎ病院を新築移転し、改称します)

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回復期病棟での取り組み

転棟日から、リハビリテーション担当者と担当看護師、ケアワーカーなどが共同し、ADLチェックリストを作成します。方向性の確認(家に帰りたいか、転院したいか)のために、より早期にご家族との面談を実施します。できる限り、理学・作業療法士、言語聴覚士が、1日3時間のリハビリテーション介入を行います。病棟での生活そのものも、リハビリテーションとなります。
「基本動作チェック表」を全てのスタッフが見られるベッドサイドに置き、リハビリテーションの進展を図ります。

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平行棒やプラットホーム、運動器具を完備しています。

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作業療法室の一画には、日常生活を想定した畳コーナーも。立ち上がりの練習や、物を取る練習などをします。

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歩行を補助する装具も積極的に導入しています。

維持期リハビリテーションの実際

維持期リハビリテーションには、外来リハビリテーションのほか、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーションがあり、医療療養病床や洛和会みささぎ病院でもリハビリテーションを行います。

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外来リハビリテーションについて

医療保険のもと、通院可能な方に行っていただくリハビリテーションです。リハビリテーションスタッフが、専門的な治療や訓練、生活の助言や指導を行います。対象疾患は、脳血管障害、運動器障害などさまざまです。当会では、洛和会丸太町病院、洛和会音羽病院、洛和会みささぎ病院、洛和会音羽前田クリニックで行っています。

訪問リハビリテーションについて

日常生活動作、身体機能、住環境などのアドバイスを、ご家族の皆さまも含め行います。
対象となる方は、

  • 日常生活動作に不自由があったり、不安がある方
  • 介護保険を受けておられ、医療保険でリハビリテーションを受けておられない方

です。

洛和デイセンターみささぎ病院の通所リハビリテーション

利用者さまお一人おひとりに合った個別リハビリテーションを基本としています。リハビリテーションプログラムは、各種トレーニングマシンなどを用いて、弱りがちな足腰を鍛えるなど、日常生活の維持・向上に重点を置いた内容になっています。トレーニングだけでなく、ゲーム機などを使用した脳トレーニングも行い、ちょっとした社交の場としても、くつろげる環境をご用意しています。

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洛和会みささぎ病院(医療療養病床)のリハビリテーション

脳血管疾患、運動器疾患、神経難病など、さまざまな疾患の方に、幅広く、在宅支援やリハビリテーションを行っています。一人ひとりの患者さまに合わせたプログラムを作成し、医師や看護師、相談員と協力しながら進めています。当院では、訪問リハビリテーションやリハビリテーション特化型の短時間型通所リハビリテーションも行っています。

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この上に横になっていただき、リハビリテーションを行います。

まとめ

  • 回復期では「機能改善」と「日常生活の再獲得」を目標とします。
  • 維持期では「今の生活に合ったリハビリテーション」を行います。
  • それぞれの時期と個人の生活に応じた目標に合わせて、リハビリテーションを行うことが大切です。

ほかのらくわ健康教室の記事はこちら⇒らくわ健康教室 講演録3

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