2014年10月16日

第202回らくわ健康教室「下肢関節の痛みに対する治療 〜人工関節手術って?〜」

7月26日開催のらくわ健康教室は、「下肢関節の痛みに対する治療 〜人工関節手術って?〜」と題して、洛和会丸太町病院 整形外科 関節センター センター長で医師の末原 洋(すえはら ひろし)が講演しました。


概要は以下のとおりです。

Img_1472_2はじめに

人工関節手術は近年、多くの方が受けられる一般的な手術となっています。本日は、膝関節の基礎と変形性膝関節症、人工膝関節置換術についてと、股関節の基礎と変形性股関節症、人工股関節置換術についてお話しします。

膝関節の構造

膝関節は、足の大腿骨(太ももの骨)と脛(けい)骨(すねの骨)、膝蓋(しつがい)骨(お皿)で、できており、軟骨と半月板がクッションの役割を果たしています。正常な膝関節はスムーズで滑らかな表面を形成しており、滑り、転がり、ねじれといった動きをしています。

※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。

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変形性膝関節症って?

変形性膝関節症とは、膝関節の軟骨や半月版が磨耗することで、炎症(痛み・腫れ)を生じたり、関節の隙間が減少し、骨の変形などを引き起こす病態です。

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典型的な膝関節症のX線写真です。半月版が磨耗した結果、内側(写真左側)の隙間がほとんどなくなっています。軟骨に覆われた骨が一部むき出しになって辺縁部がでこぼこになり、当たって痛みが出やすくなります。

人工膝関節置換術って?

人工膝関節置換術では、大腿骨側の先端部を一部削り大腿骨コンポーネントを、脛骨側には脛骨コンポーネントを設置し、軟骨の代わりとなるポリエチレンを間に挟み込みます。

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通常の手術(右下)と比べ、さらに清潔度を高めた宇宙服のような手術着を着用して(左上)細菌の混入を防ぎます。

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術前(写真左):O脚がひどく、歩行も困難でした。
術後(写真右):両足が真っすぐになり、痛みなく歩けるようになりました。

人工膝単顆(ひざたんか)置換術

人工膝単顆置換術は、膝関節の内外側の一側だけが痛んでいる場合に行います。痛んだ側の骨を削って、人工関節を設置します。

股関節の構造

股関節は、骨盤と大腿骨からなる関節です。大腿骨の先端(大腿骨頭)が球状になっていて、骨盤側のへこみ(寛骨臼)に納まる形となっており、軟骨がクッションの役目を果たしています。

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変形性股関節症って?

変形性股関節症とは、関節軟骨が磨耗した結果、軟骨の一部がはがれて辺縁部がでこぼこになり、炎症(痛み・腫れ)を生じたり、関節の隙間が減少し、骨の変形が起きる病態です。
変形が生じた股関節は、初期には、まだ関節の隙間が保たれているため少し痛い程度ですが、進行すると関節の隙間が狭まり骨のう胞ができたり、骨頭(こつとう)の変形が起きたりして、爪を切る動作も痛くてできないほどになります。

人工股関節置換術って?

人工股関節置換術では、骨盤側は、寛骨臼(かんこつきゅう)を半球状に削ってカップを固定し、大腿骨側にはステムと呼ばれる金属を大腿骨の先端部に差し込んで固定します。ステムの先端には球状の骨頭を固定し、カップと骨頭の間には特殊プラスチックで軟骨の代わりとなるライナーをはめ込みます。

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人工関節手術の進歩

人工関節手術は、以前と比べ、大きく進歩しています。かつては手術前の自己血貯血や荷重制限、人工股関節手術後の外転枕が必要とされていましたが、今ではこれらは不要となりました。輸血の必要性はほとんどなくなりましたが、両側同時に人工関節手術を行うときと、人工関節の再置換術(2回目の入れ換えの手術)のときのみ、術前に自分の血液(自己血)を貯血します。
手術で切開する長さも、従来は15cm程度の皮切が必要とされていましたが、現在では8cmほどで済みます。手術の前日に入院していただき、手術の翌日から歩行器歩行、術後1週でT字杖を用いた歩行、術後2週程度で退院という流れが一般的です。入院中は、毎日リハビリテーションを行います。

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術前のX線像では、向かって右側の左足が脱臼しかけており、斜めに上がっていることが分かります。手術では、人工股関節を本来の位置に固定し、左右の足の長さを揃えました。

質疑応答から

Q:昔は80歳以上は輸血もできないし、人工関節置換術ができないと言われましたが、今はどうなんですか?
A :今は80歳以上でも手術できます。最高齢では95歳の方に人工関節置換術を行いましたが、輸血は不要でした。

Q:肉親が出生時に股関節脱臼と言われ、コルセットで治りましたが、加齢に伴って変形性股関節症になる恐れはありますか?
A :変形性股関節症は、患者さまの約9割が先天性です。40歳を過ぎたら、定期的にX線を撮ったほうが良いでしょう。スポーツを控えたり、体重のコントロールが必要なことも多いです。

Q:変形性股関節症や膝関節症の予防法は?
A :外科手術が必要になる以前の段階なら、筋トレや体重制限、ヒアルロン酸注射などの方法があります。かかりつけの整形外科などでご相談ください。


ほかのらくわ健康教室の記事はこちら⇒らくわ健康教室 講演録3

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