2014年12月05日

第175回らくわ健康教室「若い人となにが違う? 高齢者の糖尿病」

2013年12月19日開催のらくわ健康教室は、「若い人となにが違う? 高齢者の糖尿病」と題して、洛和会音羽病院 糖尿病内科 部長で医師の土居 健太郎(どい けんたろう)が講演しました。


概要は以下のとおりです。

Img_2401はじめに

糖尿病の患者さまが増えています。なかでも高齢の患者さまの増加が目立っています。今日は、高齢者と糖尿病に焦点を当て、どんなことに気を付けたら良いのかをお話しします。

一体なぜ、糖尿病の患者さまが増えたのでしょうか?

次のグラフを見てください。

※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。

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1950(昭和25)年ごろから2000(平成12)年ごろまでの糖尿病患者さまの増加ぶりを棒グラフで示しています。40年ほど前(1960年ごろ)までは患者さまの数はそれほど多くなかったことがわかります。ではこの間、糖尿病以外にどんなものが増減したでしょうか?
エネルギー摂取の全体量自体はほとんど変わっていませんが、エネルギー摂取量のなかで脂肪が占める割合が急増しています。また、自家用車の保有台数も急増しています。
脂の取り過ぎと運動不足が、糖尿病の増加と関係していると推測されます。

近年の傾向

さらに詳しく見ていくと、近年は健康ブームや糖質制限本などの影響で、脂肪摂取量や糖質摂取量が減っています。総エネルギー摂取量も横ばいか、やや低下しています。一方、体重は、20歳代も50歳代も増えています。
脂の摂取量が減ったのになぜ?と思われるかもしれませんが、糖尿病は、以前の食生活の影響が後から出てくる結果、発症すると考えられるため、短期間での統計的な効果は出にくいと言えます。

環境因子と遺伝因子

一般的な2型糖尿病の場合(高血糖がコントロールされない場合)の推移を以下に示します。

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糖尿病は、食生活や運動などの環境因子と、インスリン分泌低下といった遺伝因子が影響します。太ってくるとインスリンが効きにくくなります。
最初は自覚症状がなく、10年近くたってから影響が出てきます。高血糖の影響で、細小血管症と呼ばれる網膜症(単純性)や腎症(微量アルブミン尿)、神経障害が発症することがありますが、この段階の糖尿病は、適切な対応で元に戻すことが可能な時期(可逆期)です。
これが、何もしないまま20年ほどたつと、元の元気な状態には戻せない不可逆期に入ります。増殖性網膜症や持続性蛋白尿、感覚低下、しびれなどを発症し、悪化すると失明や壊疽(えそ)が起こったり、透析が必要になります。この段階では、病気を進行させないことが大切になります。
高血糖に加えて、高血圧や喫煙、脂質代謝異常、肥満などが重なると、動脈硬化による虚血性心疾患や脳血管障害、閉塞性動脈硬化症が心配され、悪化すると、狭心症や脳梗塞、壊疽などの危険が出てきます。これらの合併症の予防も必要です。
不可逆期になる前に、適切な対応をとることが、最も大切です。

がんの発症リスクと生活習慣

以下は、健康的な生活習慣の人と比べたがんの発症リスクです。

  • 原発事故で心配されている放射線の影響:1.8倍(100〜200ミリシーベルト被ばくした場合。100ミリシーベルト未満は検出不可能です)
  • タバコのリスク: 1.6倍
  • 大量飲酒のリスク: 1.4倍(毎日500ccのビールを2本以上飲む人の場合)
  • 肥満のリスク: 1.12倍(BMIが30以上の人の場合)

このほか、運動不足や塩分の取り過ぎ、野菜不足も1.1倍前後のがんリスクがあります。

糖尿病のがんリスク

糖尿病の人が大腸がんになるリスクは、健常者と比べると1.3倍、肝臓がんは2.5倍、すい臓がんは1.8倍で、いずれもリスクが高まります。一方、前立腺がんだけは、リスクが0.84倍と下がります。
糖尿病患者のがん予防に有効なのは運動です。大腸がんへの予防効果は確実で、閉経後の乳がんや、子宮体がんの予防効果もほぼ確実です。高齢者の場合は、運動する場所にも工夫が必要です。お勧めは、家の中で体操をしたり、体を動かすことです。エクササイズのDVDなどを活用できます。何もせずにゴロゴロしていると、体がコロコロに太ってしまいます。糖尿病の人は、食後の中性脂肪が上がりやすいことにも注意が必要です。

平均寿命と糖尿病

日本人の平均寿命は上がり続けています。その傾向は、糖尿病の人の場合も同じです。ただ問題は、平均寿命と糖尿病患者さまの寿命の差が10年くらいあり、その差が変わらないことです。その差を、何とか埋めたいものです。
糖尿病治療の目標は、健常な人と変わらない生活の質(QOL)の維持、寿命の確保、発症・進展の防止です。 

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糖尿病と高齢者

糖尿病が強く疑われる人および糖尿病の可能性がある人は、男女とも60〜70歳代でぐっと増えます。洛和会音羽病院でも同様の傾向で、糖尿病患者さまに占める高齢者の割合は、入院患者さまを74%、外来の62%にも達します。

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「体組成変化」とは、筋肉が減り、体内の脂肪の割合は増えることが原因で、インスリンの効きが悪くなることです。
「ミトコンドリア機能の低下」とは、エネルギー消費機能の低下を意味します。

高齢者糖尿病の特徴

高齢者糖尿病は、個人差が大きいこと、自覚症状が出にくいことが特徴です。高血糖では一般に喉の渇きを覚えますが、高齢者の場合は自覚しにくくなります。低血糖では冷や汗が出たり胸苦しさを感じるのですが、それも感じにくくなります。インフルエンザを機に、急激に糖尿病が悪化する「シックデイ」にも要注意です。

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糖尿病と認知症の関係

認知機能の低下は、65歳以上では4割程度の人に起こります。一般的なもの忘れは誰にでも起こりますが、日常生活に支障を来す認知症高齢者が増加していることが問題です。糖尿病の患者さまは一般の人と比べ、アルツハイマー病や脳血管障害にかかるリスクが1.5倍ほどあることが、国内外の研究で指摘されています。

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認知機能チェックテスト

次のようなテストをやってみましょう。「動物テスト」です。
知っている動物の数を、1分間で、できるだけたくさん思い出してください。ご家族やご友人と時間を計りながらやってみましょう。
13個以下しか思い出せなかったら、思い出す力が落ちてきていると言えます。気になる方は、もの忘れ外来を一度受診されると良いでしょう。

糖尿病の治療は継続が肝心です

糖尿病の治療は、長く続けることが何より大事ですが、実際には途中でやめてしまう人が少なくありません。医師の指示に対し、薬の服用は80%近い人が守っていますが、飲酒制限は50%程度、食事制限は35%程度、運動は34%程度しか守られていないのが実情です。治療放棄は、若年層で特に目立ちます。
放置する危険は、これまで述べてきた通りです。不可逆期に入るのを防ぐためにも、糖尿病と診断されたら、医師の指導に従い、自分の身を自分で守ってください。患者さまのなかには、100歳近い男性の、元気な糖尿病患者さまもおられます。きちんと管理すれば、生活の質を落とさずに生きられる好例です。
当会では、誰でも無料で参加できる糖尿病教室なども定期的に行っていますので、どうぞご活用ください。


ほかのらくわ健康教室の記事はこちら⇒らくわ健康教室 講演録3



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