2015年02月26日

第177回らくわ健康教室「結核を昔の病気だと思っていませんか?」

2014年1月16日開催のらくわ健康教室は、「結核を昔の病気だと思っていませんか?」と題して、洛和会音羽病院 感染症科総合診療科 医員で医師の吉川 玲奈(よしかわ れいな)が講演しました。


概要は以下のとおりです。

はじめにImg_4068

私の所属する感染症科は、主に「ばい菌を退治する専門チーム」の役割を担っています。入院中の患者さまの肺炎治療や院内感染防止なども行っています。本日は、意外に知られていないことが多い結核について、どのようにうつるのか、診断や治療、完治までの流れなどについてお話しします。

結核は古代から

結核は古代から、人類とともにあった病気です。約9000年前の人骨から脊椎カリエス(背骨の結核)の痕が認められています。日本では、鳥取県で約1800年前の結核痕のある人骨が発掘されています。
結核は狩猟生活の縄文時代には広がらず、農耕のため集団生活となった弥生時代になって広がったと言われます。近代では、明治の産業改革をきっかけに人の移動が盛んになったため、広くまん延するようになりました。1900年代前半が発症のピークで、国民病として恐れられました。
第二次大戦後は、X線集団検診、BCG接種、化学療法が発展し、日本は世界でも速いスピードで結核を抑えてきました。それでも、先進国の中では、今も罹患(りかん)率が最も高い国です。

日本では、今でも多くの発症者がいます

1日あたりの結核発病者は以下のとおりです。

※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。

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発病者の人口当たり発生数を欧米と比べると、日本のほうが4倍ほど多く、年齢別の比較では、日本は高齢患者の比率が圧倒的に高い状態です。首都圏や大阪など、人口密度が高い地域での報告例が多いことが特徴です。

結核は「人ごとではない!」のです。

結核とは?

主に肺を侵す病気で、結核患者さまの8〜9割は肺結核です。結核菌が肺の中に入り、内部で増えて、最終的には肺の構造を壊してしまいます。リンパ節が腫れたり、胸水がたまったり、骨や脳などを侵すこともありますが、これはまれです。

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結核菌はとてものんびりやで、感染してもなかなか数が増えません。ほかのばい菌と比べると、大腸菌は20分に1回分裂するのに対し、結核菌は半日から1日かけて分裂するかしないかという程度です。

どのように入ってくる?

せきをしたときに飛び散るしぶきを吸い込むことで、結核菌が肺の中に入ります。大声でおしゃべりをしたり、カラオケなどもしぶきの原因となります。ただ、注意していただきたいのは、「菌が体内に入ることと、感染や発病とは違う」ということです。

   結核菌が体内に入ることと、結核に感染することは別です。
   結核に感染することと、結核が発病することは別です。

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こんな方は注意

  • やせ型、栄養不足
  • 糖尿病
  • 肝臓が悪い、腎臓が悪い(透析含む)
  • ステロイドや抗がん剤を内服中
  • 医療従事者

どんなときに病院に行くべき?

  • せきが続いている(中には、全くせきが出ない肺結核の方もいます)
  • 熱がある、体がだるい
  • 痰(たん)に血液が混じる
  • ご飯が食べられない

診断にいたるまで

痰の検査と胸部レントゲン、CT検査を行います。痰の検査で、痰の中にどの程度の菌がいるかを推測することができます。

必ずしも入院ではない

痰の検査は通常は3回行います。まず、顕微鏡で検査します。この段階で菌が見えた場合、かなりの数の菌がいることの証明となり、人にうつしてしまう可能性があるため、入院する必要があります。
顕微鏡で菌が見つからない場合は、遺伝子増幅検査、さらに培養検査を行います。で菌が見つかった人でも、菌の量が多くなければ、外来通院で薬の治療を行っていきます。
一方、時には別の病気で入院中に結核が見つかることもあります。

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CT写真では、胸の中に結核を疑わせる病変が見つかり、検査の結果、結核と診断されました。

入院となると?

痰の中にたくさんの菌がいる(=排菌により人にうつす可能性が高い)場合は、しばらく個室で隔離となります。結核の治療費(入院代や薬代)は国や地方自治体からの補助が出ます。
結核は、全数把握することが必要な病気であるため、保健所を通して発症届を行います。後日、保健所の担当の人が患者さまのご家族や職場に調査に来られます。

治療はどのくらい?

薬の内容は年齢や持病によって決まります。基本的には4剤から始まります。(80歳以上の方は3剤からが多いです) 期間は6〜12カ月、最初の薬の数や結核の起こっている部位、持病によって異なります。

入院は平均70日

排菌が止まるまでは入院が必要です。薬をきちんと飲めば、約1〜2カ月で痰の中の結核菌が減り、排菌が止まります。顕微鏡検査で、排菌が止まったことを確認してから退院となります。

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周囲の方への対応

慌てる必要はありません。しぶきを浴びたからといって、=発病ではありません。基本的には保健所の担当者からの指示を待ってください。掲載しているスライドの3枚目「道のりは険しい」のケース(しぶきを浴びた100人のうち5人が発病する)では、以下のことに注意が必要です。

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最後に

  • 日本における結核は、高齢者に多い。
  • 疑わしい症状があれば、できるだけ早く病院受診を。
  • 周囲に結核患者が発生しても決して慌てない。

これらを覚えておいてください。


ほかのらくわ健康教室の記事はこちら⇒らくわ健康教室 講演録3



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