2015年03月02日

第187回らくわ健康教室「関節のはなし」

2014年4月5日開催のらくわ健康教室は、「関節のはなし」と題して、洛和会丸太町病院 整形外科 部長 兼 リウマチセンター センター長の辻原 隆是(つじはら たかし)が講演しました。


概要は以下のとおりです。

ブログ用IMG_8778.jpgはじめに

骨や関節、脊髄、末梢神経、筋肉、靭帯、腱など、体を動かすための器官を運動器と呼びます。整形外科は、運動器の疾患を扱う診療科です。今回は、体を動かすために欠かせない「関節」の働きや疾患、治療についてお話しします。

四肢の関節

肩関節、肘関節、手関節、股関節、膝関節、足関節の六つの関節を「六大関節」と呼び、それぞれの役割があります。例えば、上肢の肩関節は動作の方向を決めるのに、肘関節は腕の長さを調整し、手関節より先は作業するために欠かせない働きをしています。
関節の機能として重要なのは「可動性」と「支持性」の二つです。可動性とは動くこと、支持性とは支えることです。関節を損傷した場合は固定が必要になりますが、固定を続けていると関節が硬くなり、可動性が失われます。逆に、可動性を優先して早く動かすと支持性が損なわれます。治療では「可動」「支持」という、相反する機能を両立させる必要があります。

関節の基本構造

※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。

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軟骨は、骨の表面をカバーしており、クッションの役目と、表面がつるつる滑ることにより骨をスムーズに動かす役目をしています。骨と軟骨を守っているのが関節包で、その内側に滑膜があります。滑膜は、潤滑油にあたる関節液をつくっていますが、炎症などがあると関節液をつくりすぎ、「関節に水がたまる」状態を来します。靭帯は、ちょうつがいの役目をしています。筋肉が骨にくっつく部分が腱です。

関節の代表的疾患

関節の代表疾患は、「外傷」と「炎症・変性疾患」に大別されます。外傷とはけがのことです。炎症には関節リウマチなどが、変性疾患には変形性関節症などがあります。外傷を負った関節は、きちんと治療すれば徐々に治っていきます。受傷後0〜3日を炎症期、その後6週間ごろまでを増殖期、さらに6カ月後ごろまでを成熟期と呼びます。大事なのは、治療のスタートを早くすることです。

関節内病変は治りにくい

傷ついた組織の修復には、「血管新生」が必要です。ところが関節内は、血流が乏しい特徴があります。このため、関節内病変(前十字靭帯損傷や半月板損傷)は治りにくいのです。また、軟部組織である関節包や靭帯は、治癒過程で瘢痕組織となり、硬くなりやすいため、後遺症が残ることもあります。
関節の後遺障害には、
  1. 機能障害(可動域制限、不安定性)
  2. 随伴障害(痛み、筋力低下)
  3. 二次障害(隣接関節への影響、変形性関節症)
などがあります。

関節の代表的外傷(骨折、脱臼、軟骨損傷、靭帯損傷)と治療

関節外傷の治療にはジレンマがあります。先ほども述べたように、関節は動かさないと硬くなるため、可動域確保には早期運動が必要ですが、一方で支持性の確保には固定が必要だからです。治療者は、この両者の折り合いをつけながら治します。足の場合は支持性が、手の場合は可動域確保が優先されます。

【関節内骨折】
骨折すると、靭帯や軟骨も損傷します。治療原則は「解剖学的整復、強固な固定、早期運動」の三つで、骨折してゆがんだ骨を早く正しい位置に戻して、強く固定し、早期運動開始をめざします。

【脱臼】
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完全にはずれてしまう脱臼と、骨が少しかかっている亜脱臼があります。脱臼すると、靭帯や関節包も損傷し、軟骨に傷がつきます。治療原則は「早期整復、合併損傷の治療」です。

【軟骨損傷】
損傷した軟骨の治療には、保存療法と手術療法があります。保存療法には、関節内注射(ヒアルロン酸)やサプリメントがありますが、サプリメントの効果は明白ではありません。手術療法には、摘出術または縫合術、マイクロフラクチャー、モザイク形成術、自家軟骨細胞移植術、間葉幹細胞移植術などがあります。
ただ、軟骨損傷の確実な治療法は見つかっていません。軟骨と神経の損傷は、なかなか治らないのが実情です。

【靭帯損傷】
ほとんどの靭帯は、関節の外にあって血管が豊富です。このため、損傷後、1〜3週間固定しておけば治ってきます。しかし、関節の中にある前十字靭帯などは血流が少ないので、固定ではなく縫合または形成術で治療します。

膝関節の疾患と治療

【関節内骨折の治療】
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30歳代の運動選手のケース。骨折部分がポコっとへこんでいることがCTでわかりました。治療では、沈みこんだ骨を持ち上げて金具で止め、その後、金具も抜き、2年後には9割方、元の状態に戻りました。

【半月板損傷の診断と治療】
半月板は、弧状をしており、膝関節内部の内側と外側に二つあります。上(大腿骨)からかかる荷重のうち、内側半月板が25%分、外側半月板が35%分を受けとめ、脛骨にかかる荷重を分散しています。また車止めと同じような、関節を安定させる役割も果たしています。診断は症状誘発テストや画像診断(MRI)で行います。

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鏡視下部分切除では、反対側から小さなはさみを入れて半月板の損傷部分を切除します。また、縫合手術を行うこともあります。できるだけ半月板を温存することが大切です。

【前十字靭帯損傷の治療】
前十字靭帯は、膝関節の中にあり、損傷すると治りにくい部分です。治療は、体の別の場所から腱を取ってきて移植する靭帯再建(形成)術を行います。手術は、受傷後少なくとも3週間以上経過してから行い、再建靭帯にはハムストリング(半腱様筋腱、薄筋腱)、膝蓋腱、人工靭帯などを用います。

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靭帯を切れたままにしておくと、損傷部が丸くなってしまいます。再建手術は、骨に穴をあけて新しい靭帯をつくり、元の状態に近づけます。

【膝関節の炎症・変性疾患】
変形性膝関節症(OA)は、荷重負荷による経時的ストレスや加齢、遺伝的素因などの多因子による関節疾患です。危険因子には、肥満、生活様式、膝外傷、内反膝(O脚)などがあり、さまざまな原因で起きる疾患です。治療には、保存療法と手術療法があり、保存療法には、消炎鎮痛剤や関節内注射、物理療法、装具療法、サプリメントがあります。手術療法には、鏡視下手術、高位脛骨骨切り術、人工関節置換術があります。

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半月板の周囲をきれいに掃除してやることで、ある程度の効果は期待できます。

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脛骨上部を斜めに切り、人工骨を使って脚が真っすぐになるようにします。荷重がやや外側にかかるようになるため、痛みが取れます。

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大腿骨と脛骨の双方に人工関節を埋め込む手術です。軟骨の代わりにポリエチレンを入れます。20年ぐらい経つと弛んでくるので、手術は高齢になってから行います。

どの術式を採用するかは、症状や年齢などを考慮して決めます。一般的な基準は以下のとおりです。
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変形性膝関節症の予防には、

  • 軟骨は消耗品であることを念頭に、過度な運動は避ける。
  • 異常を感じたら早めに整形外科へ。
  • 肥満、骨粗しょう症を放置しない。
  • 人工膝関節置換術は歩行不能になる前に行う。

これらに注意して、骨・筋肉が弱くなりすぎないうちに適切な対策をとりましょう。


ほかのらくわ健康教室の記事はこちら⇒らくわ健康教室 講演録3

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