概要は以下のとおりです。
◆はじめに
本日は、全身の血管を調べることができる「血管エコー」のなかから、足の静脈エコーについて、詳しくご紹介します。
◆血管エコーとは
血管エコーは、全身の動脈と静脈が検査対象です。血管を形態と機能の両面でとらえ、血管の疾患を評価します。目的部位は、患者さまの病態により多様です。
※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。
このほかに、シャント血管エコーもあります。シャント血管は、透析時に使用する血管で、静脈と動脈を吻合し、静脈に動脈血流を流します。吻合部やシャント静脈の血管の内部を観察することで、狭窄(さく)や閉塞部位の有無、手の腫れの原因を調べます。
◆足の静脈の流れ
手足の静脈は、四肢の筋収縮による筋ポンプ作用で、血流が心臓に還流していきます。呼吸により心臓の圧力が変わることでも還流が起こります。流入する動脈血の押し上げもあります。足を上げると心臓に血が環流するように、手足の高さを変えることでも静脈血が心臓に還流します。
◆足にこんな症状はありませんか?
むくむ・腫れる、赤くなる・変色する、じくじくする(潰瘍)、つる・こむら返りが起こる、痛み・圧痛、熱感、血管がぼこぼこ膨れる、だるい。
これらの症状の原因が静脈にあるかどうかを調べるのが、静脈エコー検査です。静脈の流れが悪くないか、血栓(血の塊)ができていないか、血栓が血管の中で動いていないか、血栓で血液の流れが悪くなっていないか、静脈瘤(りゅう)ができていないか、また、その程度はどうか…などを調べます。
◆血液の流れ 動脈と静脈
動脈は心臓のポンプにより血液の流れが生じていますが、静脈は勢いよく血液が流れているわけではなく、体を動かしたり呼吸をしたりして生まれるわずかな圧力の差で静脈が圧迫され、血液が心臓側へ送られています。
◆深部静脈血栓症
深部静脈血栓症は、「エコノミー症候群」とも呼ばれ、血栓で静脈が閉塞してしまう疾患です。なぜ血栓ができるか、ドイツ人の病理学者Virchow(フィルヒョウ)は3大因子を挙げています。
- 血流の停滞:
長時間同じ姿勢で居続けること、うっ血性心不全、下肢静脈瘤の存在などが原因。 - 血管壁の障害:
ざらついた血管壁に血が滞る。 - 血液凝固能の亢進(血が固まりやすくなること):
脱水・がんや、抗リン脂質抗体症候群、プロテインC欠損症、プロテインS欠損症などの疾患がある場合。
一般的に推奨されている予防法は、以下のとおりです。
- 長時間にわたって同じ姿勢を取らない
⇒時々下肢を動かす。 - 弾性ストッキングを着用する
⇒手術後やその他理由で長期臥床を余儀なくされる場合は、弾性ストッキングを着用する。 - 適度な水分補給
⇒脱水にならないよう程度に水分を取る。 - 予防的な抗凝固療法
⇒疾患などで血栓症のリスクが高い場合。
◆下肢静脈瘤
心臓の弁と同様に静脈にも、血流が一方向に流れるようにするために、静脈内に弁があります。この静脈弁(逆流防止弁)が開放、閉鎖を繰り返し、静脈血が心臓側のみに流れるようになっています。この静脈弁が何らかの要因で、壊れたり閉じなくなったりすると、逆流が起こり、静脈瘤の原因になります。
下肢静脈瘤のできやすい人には、下記のような特徴があります。
- 性別:女性に多い
- 年齢:加齢とともに増加する
- 遺伝:家族に静脈瘤のある人に起こりやすい
- 仕事:大工、調理師、美容師など長時間立ったままの仕事に従事する人に多い
- そのほか:妊娠や出産がきっかけになることがある
◆下肢静脈瘤の治療
以下のような治療法があります。詳しくは担当の医師にご相談ください。
◆おわりに
- 足は第二の心臓とも言われます。
- 適度な運動を心掛け、いつまでも健康でお過ごしください。
- 気になる症状がありましたら主治医にご相談ください。
- ほかの検査について知りたいことや聞きたいことがありましたら、検査担当者にお伝えください。
質疑応答から
Q:血管エコーの検査は、保険でできるのですか?
A :はい、できます。足がだるい、と訴えて受診される患者さまも多いです。
Q:何科を受診すればいいのですか?
A :洛和会音羽病院には「脈管外科」があります。かかりつけ医に紹介していただいてください。
Q:臨床検査技師は動画で判断するのですか? 静止画ですか?
A :動画で判断します。担当医には、一番症状が明確な静止画像を渡しています。