2015年03月20日

第218回らくわ健康教室「知って得する不整脈のはなし」

2014年11月20日開催のらくわ健康教室は、「知って得する不整脈のはなし」と題して、洛和会丸太町病院 心臓内科 医長の医師 金森 徹三(かねもり てつぞう)が講演しました。

概要は以下のとおりです。

ブログ用IMG_8089.jpgはじめに

不整脈は、心臓が収縮・弛緩(しかん)を繰り返して全身に血を送り出す脈拍のリズムが不規則になること、また、その状態の脈拍をいいます。不整脈のなかには、命に関わる不整脈と、安全で放っておいても問題ない不整脈があります。

不整脈と心拍数

心臓は、1日に10万回ほど収縮と弛緩を繰り返す筋肉のかたまりです。正常範囲の心拍数(脈拍数)は、安静時では1分間に50〜100回、1日(24時間)では72,000〜144,000回です。もっとも、1分間に50回以下なら全て異常というわけではありません。
心臓を効率良く動かすために、心臓の中に電気の流れがあります。その電気の流れが乱れるのが不整脈です。年をとった人なら1日に何回か不整脈が出るのは普通です。

※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。

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不整脈の要因と症状

不整脈に影響を及ぼす要因には、以下の3要素が関連しています。

  • 心臓病・そのほかの病気:
    狭心症、心筋梗塞、心筋症、弁膜症、心不全、高血圧、甲状腺、肺の病気、年齢など。
  • 自律神経の乱れ:
    ストレス、不安感、急激な運動や温度変化。
  • 生活習慣の乱れ:
    睡眠不足、疲労、過剰なアルコール、喫煙、暴飲・暴食。

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不整脈の種類

不整脈には、命に関わる不整脈(突然死する)から、安全で放っておいても問題ない不整脈まで、さまざまです。以下の3つの種類に分けられます。

  1. 予期しない拍動が起こる(期外収縮):
    急にドキッとしたり、脈が抜ける。トン・トン・トトン…。
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  2. 拍動が遅すぎる(徐脈…1分間に50回未満):
    労作時の息切れ、だるさ、ふらつき、意識消失など。
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  3. 拍動が速すぎる(頻脈…1分間に100回以上):
    胸がドキドキ・ザワザワ、意識消失など。トン・トン・トトトトトト。
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不整脈の最終的な診断は心電図記録が必要ですが、発作時の不整脈などは心電図で捉えることが難しいときがあります。 

自宅で自分が不整脈かわかる方法

検脈によって、ある程度は不整脈の種類が推定できます。

  • 脈の数が多ければ⇒頻脈
  • 脈の数が少なければ⇒徐脈
  • 脈が飛ぶ⇒期外収縮
このように、脈の数と、脈のリズムが一定かどうかで、ある程度、不整脈が特定できます。

検脈の仕方

手首のとう骨動脈に沿うように、指を3本揃えて押さえます。
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検脈でみるところは、脈の数と、脈のリズム(整か不整か)です。手首で脈がとれなければ、肘の内側、股の部位でもとることができます。首(頸(けい)動脈)ではとらないほうが良いです(強く押すと苦しくなることがあるため)。検脈で脈がよくわからなければ、家庭血圧計でも、脈の乱れがあるかを診断してくれるものがあります。エラー表示や異常な数値が表示されたときも、不整脈を検知した可能性があります。

検脈で不整脈があるとわかったとき

症状がなく、心臓の状態が健康(心臓の機能が良好)である人の不整脈は、放っておいても問題ないことがほとんどです。では、心臓の機能が良好かどうかはどうやったら分かるでしょうか? 胸部エックス線や採血、心臓超音波検査で確かめます。検査結果が以下のような人は要注意です。

  • 胸部エックス線…心臓が大きい(大きすぎる)人。
  • 採血…BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)、NT-pro BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント)が極端に高い人。
  • 心臓超音波検査…心臓の動きが悪い人。

心臓が悪い(心臓の機能が悪い)人の不整脈は、循環器専門医や、不整脈を専門としている医師(不整脈外来など)に相談してください。

主な不整脈の検査

  • 安静時12誘導心電図検査:
    ベッドに寝て胸や両手足に電極を付けて検査します。
  • 運動負荷心電図検査(トレッドミル検査):
    運動負荷をかけながら不整脈の有無を調べます。
  • 携帯型心電計:
    不整脈の出現頻度が低い患者さまに、動悸(どうき)などの症状が出現したときに使用していただきます。
  • ホルター心電図検査:
    体に電極を貼り付けたまま24時間の心電図記録を観察します。スライド31.jpg

より詳しい検査方法は、以下のようなものがあります

  • 植え込み型ループ式心電計:
    長期間(最長3年間)にわたり心臓の拍動を常に監視し、不整脈や意識消失などの症状が起きたときの心電図を記録します。
    年に1〜2回、意識を失うようなことがある人に用います。
  • 心臓電気生理検査:
    主に足の血管(静脈)から、電極のついたカテーテルを心臓の中に挿入し、電気信号で心臓を刺激することにより、不整脈を誘発させたりして診断・治療を行います。

主な不整脈の治療

薬による薬物治療と、非薬物治療があります。ほとんどの不整脈は、治療可能になってきました。
非薬物治療には、以下のようなものがあります。

  • 電気的除細動
  • カテーテルアブレーション術(心筋焼灼(しょうしゃく)術)
  • ペースメーカー:
    心臓を刺激することによって、徐脈を改善します。
  • 植え込み型除細動器(ICD):
    心室細動などになったときに自動で電気的徐細動を行ってくれます。ペースメーカー機能もあります。
  • 両心室ペーシング両心室機能付き植え込み型徐細動器(CRT-D):
    心不全の人に有効です。電気的徐細動機能とペースメーカー機能もあります。

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アブレーション術は、心臓の電気の流れがある回路をぐるぐると旋回する(リエントリー)場合や、ある一点から異常興奮が起こる(巣状興奮)場合に、回路の一部を焼き切って電気の流れを止めることで不整脈を治療します。脈が速くなる人に行うことが多い手術です。 

不整脈による心臓突然死について

命に関わる不整脈、すなわち心室細動や心停止による心臓突然死を防ぐにはどうしたらいいでしょうか? それは、第一発見者による心臓マッサージです。その人の命が助かるか、社会復帰できるかが第一発見者の対応にかかっています。AED(自動体外式除細動器)や心臓マッサージで多くの人が助かっています。「家族が意識消失し息をしていない」と119番した人が、電話による指示で救急車が到着するまで心臓マッサージを続けた結果、急性期病院で治療を受けて、後遺症もなく社会復帰した事例もあります。

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みぞおちの上にあたる胸の真ん中(胸骨)を、1分間に100回ぐらいの速さで強く圧迫します(4〜5cmの深さで)。

おわりに

  • 不整脈のほとんどは、放っておいても問題ないものです。(年をとれば、少しは不整脈が出て当然です)
  • 自覚症状(突然始まり突然終わる動悸、ふらつき、意識消失など)がある人は、かかりつけの先生に相談を。心臓が健康かどうかのチェックをしてもらいましょう。
  • 検脈で、不整脈の種類はある程度、推定できます。
  • 倒れて意識がなく息をしていない人を見たら、人を呼んで心臓マッサージを。不整脈による突然死を防ぐのは家族、周りにいる人です。
  • 不整脈治療は日進月歩で発展しています。根治治療できる不整脈の種類は拡大しています。

ほかのらくわ健康教室の記事はこちら⇒らくわ健康教室 講演録3

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