2015年04月07日

第220回らくわ健康教室「知っておきたい婦人科のがん」

2014年12月2日開催のらくわ健康教室は、「知っておきたい婦人科のがん」と題して、洛和会音羽病院 産婦人科 副部長で医師の奈倉 道和(なぐら みちかず)が講演しました。

概要は以下のとおりです。

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代表的な婦人科のがんには、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんがあります。本日は、それぞれのがんの特徴や治療、検診などについてご説明します。

子宮と卵巣

子宮は腟の奥に、膀胱(ぼうこう)と直腸にはさまれる位置にあります。子宮底から両手を広げるような形で卵管が伸び、それぞれの卵管の先端の近くに卵巣があります。子宮内膜は月に一度、はがれ落ちますが、これが月経です。月経の後、新しい子宮内膜ができて厚くなっていきます(増殖期)。卵巣で排卵が起こった後も、さらに子宮内膜は厚くなっていきます(分泌期)が、この間に妊娠が成立しなければ、子宮内膜は再びはがれ落ちて、月経となります。一方、卵巣では、エストロゲンというホルモンの作用で卵胞が発育し、十分発育した時点で黄体化ホルモンの作用により排卵します。排卵した後の卵胞は黄体となり、黄体からプロゲステロンというホルモンが出されて、妊娠に備えます。しかし、妊娠が成立しなければ、黄体は白体に姿を変えて退縮してしまいます。

※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。

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がんの発生

がんは、本来は正常であるはずの細胞が、無秩序に増殖することで引き起こされる病気です。がんを引き起こす要因には、喫煙による有害物質の取り込みやウイルス、放射線の被ばく、食生活など生活習慣の影響などが考えられます。これらにより、遺伝子に異常が起き(がん増殖遺伝子の増加やがん抑制遺伝子の活動低下)、がん細胞が無秩序に増殖する結果、周囲への浸潤や転移、治療後の再発などを引き起こし、正常な細胞の働きを阻害します。

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子宮頸がん

子宮の入り口部分である子宮頸部にできるがんです。ヒトパピローマウイルスという、どこにでもいるウイルスが、子宮頸部粘膜の基底細胞に感染し、増殖することで発症します。一般に人間の細胞は、免疫システムが抗体をつくってウイルスをやっつけたり、ウイルスが広がる前に感染した細胞自身が自殺(アポトーシス)したり、がん抑制遺伝子が働いたりして、がん化を防いでいます。しかし、ある型のヒトパピローマウイルスは、がん抑制遺伝子の働きを抑える作用があり、このウイルスに感染した細胞は、がん化しやすくなり、子宮頸がんを発症します。

<子宮頸がんの進行と治療>

子宮頸がんは、子宮頸部に限局されている段階(ステージI)から、腟壁など外に広がり出した段階(ステージII)、腟壁全体や骨盤壁まで広がった段階(ステージIII)、膀胱直腸の粘膜まで浸潤したり遠隔転移した段階(ステージIV)へと進行します。

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治療は、手術治療、放射線治療、化学療法(抗がん剤治療)があります。

  • 手術治療:
    病変を詳しく調べるために、子宮頸部を円錐状に切除する手術(子宮頸部円錐切除術)を行うことがあります。この手術によって、ステージIAまでの小さい病変が取りきれたと判断できれば、治療したことにもなります。手術の後も、子宮の大部分は残りますので、妊娠は可能ですが、早産や流産への注意は必要です。もっと進んだ病変がある場合などは、単純子宮全摘手術や広汎子宮全摘術を行います。
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  • 放射線治療:
    体外から照射する外照射と、腟内に線源を入れて狭い範囲に照射する腔内照射があります。
  • 化学療法:
    抗がん剤を手術前に用いてあらかじめ腫瘍を縮小させる「術前化学療法」、手術後も残っている(かもしれない)病変の治療に抗がん剤を使う「術後化学療法」、抗がん剤を放射線治療の効果を高めるために「同時に使用する療法」など、いろいろな使い方があります。

<子宮頸がんの予防>

子宮頸がんの患者さまは、20歳代や30歳代の方が増えています。これには、性交渉年齢の若年化などが影響していると思われます。ただ、ヒトパピローマウイルスはありふれたウイルスです。性行為を経験した人は、誰でも感染し得るものです。子宮頸がんの発症と性的にふしだらであることを結びつけるのは、適切ではありません。 
予防には、検診が有効です。子宮頸がん検診では、専用機具で子宮頸部の細胞を擦り取り、顕微鏡で異常がないか調べます。もし子宮頸がんができていても、早期に見つかれば円錐切除術で治療できますので、妊娠が可能です。早期発見・早期治療が重要ですが、日本の場合、検診受診率が4割程度と諸外国より低いのが残念です。
子宮頸がんワクチンは、接種した女性の一部に副作用による痛みなどが出たため、厚生労働省も推奨を控えています。産婦人科医の立場から見れば、ワクチンは今も大変効果が大きいと考えています。

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子宮体がん

子宮体部にできるがんで、閉経前後の50歳代以降の人に多いがんです。性交渉とはほとんど関係なく、ホルモンバランスが崩れてエストロゲンが過剰になることと関係があります。子宮体がんのハイリスク要因は、メタボリックシンドローム(肥満+高血圧+糖尿病)や、月経不順、多嚢胞(のうほう)卵巣症候群、不妊症、妊娠分娩歴がないこと、ホルモン補充療法でエストロゲン単独投与などがあげられます。

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<子宮体がんの症状と検査>

不正性器出血があれば、子宮体がんを疑います。特に、閉経後の不正性器出血は要注意です。
子宮体がんの検査は、子宮内膜細胞診、子宮内膜組織診、経腟超音波検査、子宮鏡検査、画像検査(MRIやCTなど)があります。子宮内膜細胞診は、専用器具を子宮の奥まで差し込んで細胞を採取します。

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<子宮体がんの治療の流れ>

  1. 手術で子宮と両側卵巣卵管を摘出し、リンパ節も郭清(かくせい)します。
  2. 手術摘出標本を病理学的に十分検討し、組織型と進行期を診断します。
  3. 上記診断より、術後再発リスクに応じて、術後治療を行います。

卵巣がん

卵巣がんは「サイレントキラー」とも呼ばれ、自覚症状が少ないまま、気付いたときには進行している疾患です。以下のようなありふれた症状から、卵巣がんが見つかるかもしれません。異常を感じたら、産婦人科外来を受診してください。

  • 腹部の膨満感がある、もしくは腹部の周囲サイズが大きくなった
  • 骨盤または腹部の痛みがある
  • 食事が進まない、またはすぐに満腹感を覚える
  • トイレが近い、もしくは排尿困難

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<卵巣がんの検査と治療>

卵巣がんの検査には、経腟(あるいは腹部)超音波検査、画像検査(MRIやCTなど)、腫瘍マーカーがあります。腫瘍マーカー検査は、がん細胞またはがんに反応した生体細胞から産生されるたんぱくや酵素を定量的に測定したもので、がんの診断に役立つ、がん再発を早期に発見できるといった有用性があります。半面、限界もあり、がん以外の原因でもマーカー値が上昇したり、腫瘍マーカーが上昇しない症例もあります。
卵巣がんの治療の流れは以下のとおりです。

  1. 手術で、子宮・両側附属器・大網を摘出し、必要なら、リンパ節も郭清する。
  2. 手術摘出標本を病理学的に十分検討し、組織型と進行期を診断する。
  3. 上記診断に応じて、術後化学療法を行う。(多くの症例で、術後化学療法は必須です)

まとめ

  • 子宮頸がんは、数少ない予防可能ながんです。検診を受けて、早期発見・早期治療につなげましょう。
  • 子宮体がんは、閉経前後あるいは閉経後に多いがんです。不正性器出血があれば、必ず婦人科外来を受診してください。
  • 卵巣がんは、早期発見の難しいがんですが、異変を感じたら、産婦人科医にご相談ください。

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