2015年03月26日

第222回らくわ健康教室「最近話題の新しい感染症 〜エボラ出血熱とデング熱〜」

2014年12月20日開催のらくわ健康教室は、「最近話題の新しい感染症 〜エボラ出血熱とデング熱〜」と題して、洛和会丸太町病院 救急・総合診療科 医師の永野 明範(ながの あきのり)が講演しました。

概要は以下のとおりです。

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世界で最も危険な生き物は何だと思いますか? ある生物が原因で1年間に死亡する人の数をまとめた統計があります。少ないほうから順に、サメ、オオカミ、ライオン…犬(狂犬病)、ヘビ…と続き、ワースト2位が人間(殺人などで47万5,000人)、ワースト1位が蚊(年間72万5,000人)という結果になっています。病原体を宿した蚊に刺されて死亡する人の数は、ほかの死因と比べて断然多いのです。

※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。

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国内でデング熱発生!

蚊が媒介するデング熱が日本国内で発生したというニュースが、2014(平成26)年10月に大きく報道されました。以前から国内でも患者はいましたが、おそらく海外で感染したのだろうと考えられていました。しかし、2014年は、日本国内でデング熱に感染した患者が出たことから、大きな問題となりました。

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デング熱の原因

デング熱の原因は「デングウイルス」です。正式には、フラビウイルス科フラビウイルス属のRNAウイルスで、同じ仲間(属)には、黄熱病ウイルス、ウエストナイルウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルスなどがあります。
デングウイルスは、人から人には感染せず、蚊を媒介して感染します。日本では、いわゆるヤブカ(ヒトスジシマカ)が媒介者となります。

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デング熱は世界的にも増加傾向

デング熱が発生した国の数は、近年、急増しています。それに伴い、デング熱の患者も急増、1970〜1979年には12万件余りだった患者発生件数が、2000〜2007年には97万件弱に跳ね上がりました。

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どんなときにデング熱を疑うか?

海外のデング熱流行地域から帰国後、あるいは海外渡航歴がなくても、ヒトスジシマカの活動時期に、国内在住者において、以下Aの二つの所見に加えて、Bの二つ以上の所見を認める場合に、デング熱を疑います。(厚生労働省のデング熱診療ガイドラインより)

  • A(必須所見):
    1. 突然の発熱(38℃以上)
    2. 急激な血小板減少
  • B(随伴所見):
    1. 皮疹
    2. 悪心・嘔吐(おうと)
    3. 骨関節痛・筋肉痛
    4. 頭痛
    5. 白血球減少
    6. 点状出血(あるいはターニケットテスト陽性)

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デング熱の診断

デング熱の確定診断には、血液検査が必要です。さまざまな検査法があり、発病からの日数によって陽性となる時期が異なります。
デング熱を発症すると、通常は1週間程度で回復しますが、一部は重症化します。妊婦の方や乳幼児、高齢者、糖尿病や腎不全の患者さまは特に注意が必要です。

デング熱の治療

ウイルスが引き起こす疾患は、基本的には自分の免疫で治す以外に治療方法はなく、熱さましや点滴で体力を補う対症療法しかできません。(例外として、インフルエンザと帯状疱疹は、治療薬があります)
治療は、重症化サインを認めないときは外来で可能です。鎮痛解熱剤にはアセトアミノフェンを用います。重症デング熱は、補液で治療します。

デング熱の予防

  • 蚊に刺されない:
    蚊は特に昼間に活発に活動し、吸血する習性があるので、対策は昼間に重点的に行いましょう。防虫剤を使ったり、衣服による保護も有効です。
  • 蚊を増やさない:
    水たまりをつくらないことです。蚊の活動範囲は50〜100mです。
  • ワクチン:
    まだ認可されてはいませんが、開発が進んでおり、2015(平成27)年の内にもワクチンが出ることが期待されています。

主な新興ウイルス感染症

感染症には、以下の2種類があります。

  • 新興感染症:
    かつては知られていなかった、近年新たに認識された感染症。
    一般的には1970(昭和45)年以降に発生したもので、原因はウイルスや細菌、原虫、寄生虫などさまざまです。エボラ出血熱、エイズ、重症高病原性インフルエンザ、重症急性呼吸器症候群(サーズ)などが該当します。
  • 再興感染症:
    一時期は減少していたが、再び注目されるようになってきた感染症。
    耐性菌の増加や地球温暖化、交通手段の発達、病原性の強化などが原因と考えられ、結核やマラリア、デング熱、狂犬病、ポリオ、黄色ブドウ球菌などが該当します。

エボラ出血熱とは

エボラウイルスによる急性熱性疾患で、ウイルス性出血熱の一疾患です。自然宿主はオオコウモリですが、血液や体液との接触によりヒトからヒトに感染が拡大します。致死率が約3割にも達する恐ろしい病気です。1977(昭和52)年ごろから明らかになっており、それほど新しくはない新興感染症ですが、2014年にアフリカ南西部のギニアで集団発生、近隣に流行が拡大し、わずか数カ月で6,000人以上が亡くなりました。(2014年11月時点)

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エボラ出血熱の症状

エボラ出血熱の症状は、以下のとおりです。

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エボラ出血熱の診断と治療

白血球や血小板を調べる血液検査や、抗原・抗体検査などで診断します。ウイルス分離には1週間以上を要します。現在は、国立感染症研究所がエボラを含むウイルス性出血熱の検査を担当しています。
治療はデング熱と同様、特異的な治療法はなく、補液などの対症療法のみです。承認されたワクチンはありませんが、現在2種類が臨床試験中です。

エボラ出血熱への対応

現在の国内での対応は以下のとおりです。

  • 患者さまとの接触歴がある人については、最後に接触した日から最大21日間は監視下におく。
  • ギニア・リベリア・シエラレオネに直近21日以内に滞在していた人も監視下におく。(うち38℃以上の発熱もしくは直近21日以内に患者との接触があり、体熱感を訴える人は擬似患者とする)
  • 有症状者で発熱があり、ギニア・リベリア・シエラレオネに直近1カ月以内に滞在していたことが確認できた人は自宅で待機。(擬似患者と診断した場合は移送)

エボラ出血熱は、現在、日本国内の患者発生はなく、あまり心配する必要はないと思います。それでも、あやしいと思われたら、受診するのではなく、まず保健所に連絡してください。


ほかのらくわ健康教室の記事はこちら⇒らくわ健康教室 講演録3

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