3月18日開催のらくわ健康教室では、「耳鼻科の夜間救急」と題して、洛和会丸太町病院 耳鼻咽喉科 医員で、医師の森岡 繁文(もりおか しげふみ)が講演しました
概要は以下のとおりです。
◆はじめに
洛和会丸太町病院は、京都市内で唯一、午後7時〜午後11時に夜間の耳鼻科救急を行っています。本日は、救急受診に来られる患者さまの疾患や家庭での対応などについてお話しします。
◆救急受診 疾患の内訳
2014(平成26)年1月〜12月に洛和会丸太町病院の夜間に耳鼻科救急を受診された患者さま、延べ1,218人の内訳を見ると、急性炎症(耳が痛いなど)が51.6%で最も多く、異物(喉に骨が刺さったなど)が18.6%、外傷8.9%、そのほかが20.9%でした。さらに詳しい疾患の内訳は以下の通りです。
※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。
◆急性中耳炎
急性炎症のなかで最も多い疾患です。子どもに多い「痛くなる中耳炎」で、夜間に痛みを訴えて眠れなかったり、泣いてしまうことが多いです。大人でも中耳炎になります。風邪をひいた後に耳が痛くなったら要注意です。受診をお勧めします。
治療は抗生物質が中心ですが、痛みには痛み止めを使うしかありません。
<もし夜間に急性中耳炎かなと思ったら>
- 自宅に痛み止めがある場合:
痛み止めを使ってあげましょう。(ただし、子どもに大人用の痛み止めを使ってはいけません)。一晩眠ることができれば翌朝に耳鼻科を受診しましょう。 - 痛み止めがない場合・初めてなった場合:
あわてる必要はありません。がまんできそうなら、翌朝に耳鼻科受診。がまんできなければ、救急受診しましょう。
救急時間帯は、子どもが暴れたり、人手が十分でなかったりして危険なため、耳垢(あか)の除去や鼓膜切開術などの処置は、対応できないことがあります。
<痛み止めについて>
病院で処方された薬、薬局で購入した薬を使用してください。(実は熱さましとして処方された薬も、痛み止めと同じ薬のことがあります)
子どもの場合、体重によって必要な薬の量が変わります。必ず本人に処方された薬を使用しましょう。
◆扁桃周囲膿瘍(へんとうしゅういのうよう)と喉頭浮腫(こうとうふしゅ)
中央に、ブヨブヨに腫れたノドチンコがあります。その左側に、膿がたまって腫れた扁桃腺が映っています。炎症がひどく、痛みが強い。(特に飲み込むときに痛い。左右どちらかが強く痛い)。口が十分に開かないほどひどくなると要注意。頸部も腫れて痛くなり(リンパ節腫脹)、のどの奥まで腫れると喉頭浮腫が生じて大変危険です。
こうなれば、穿刺・切開して、膿を出すことが大事です。入院もしくは通院で点滴治療が必要となります。
◆咽頭(いんとう)異物
喉の奥に異物を感じる咽頭異物は、口を開けたら見える場所にある場合と、さらに奥で見えない場所にある場合があります。
喉の奥に白く映っているのが魚の骨です。咽頭異物のほとんどは魚の骨です。ほかに、薬をケースごと飲み込んでしまった例もあります。
実は、「骨が刺さった」と受診する人の3人に1人は、骨が刺さっていません。いったんは刺さって痛みが残ったものと考えられます。
◆鼻出血
鼻血が出たら…鼻の中にグリグリとティッシュを詰め込んだり、横になるのは間違いです。横になると鼻血が喉に入って気持ちが悪くなります。正しくは、座って少しうつむいてください。鼻にティッシュを詰めるとしても軽くだけにし、小鼻をしっかり押さえることが大切です。
<病院での止血方法>
鼻の中にガーゼを詰めて圧迫止血します。一カ所から多量に出血する場合は電気で焼灼(しょうしゃく:焼くこと)することで出血を止めることが可能です。どこから出血しているかわからず、止まりにくい場合には、鼻の中にガーゼを数日間詰めておきます。
◆外傷性鼓膜穿孔(せんこう:穴)
耳掃除をしている時に生じることが多いです。耳の中に細長いもの(お箸など)を入れて遊んでいるお子さんにも生じます。大きな穿孔でも意外と自然治癒することが多いです。耳の穴は曲がっており、耳かきで耳の奥を突いても鼓膜まで到達しないことが多いです。耳垢は自然に外に出るようにできているので、耳かきは、しすぎないほうが良いです。
鼓膜は斜めについており、鼓膜の後ろには三半器官があります。鼓膜の後ろ側に穴が開くと三半器官を傷つける恐れがあり、危険です。
◆本当に「救急」が必要な耳鼻科疾患とは
緊急入院や緊急手術が必要となることもある疾患は、
- 喉頭浮腫を伴う扁桃炎、扁桃周囲膿瘍
- めまいを伴う外傷性鼓膜穿孔
- 止まらない鼻出血
です。これらは、病状に応じて、高次医療機関へ紹介したり、緊急入院・緊急手術が必要となることもあります。
上記以外の耳鼻科疾患は、症状に応じて翌朝に受診しても大丈夫です。
もちろん、心配や不安があれば、救急受診してください!