2015年05月16日

第233回らくわ健康教室「知っておきたい感染症のあれこれ」

3月25日開催のらくわ健康教室は、「知っておきたい感染症のあれこれ」と題して、洛和会音羽病院 総合診療科 兼 感染症科 部長の神谷 亨(かみや とおる)が講演しました。

概要は以下のとおりです。
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はじめに

感染症とは、身の回りにある“ばい菌”が体内に侵入することで引き起こされる病気です。本日は、代表的な感染症である肺炎や結核、百日咳、破傷風、帯状疱疹(ほうしん)についてお話しします。

感染症科が扱う主な“ばい菌”

以下のような“ばい菌”が、感染症を引き起こします。
※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。
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肺炎

日本人の死因の1位はがん(28.8%)ですが、以下、心疾患(15.5%)、肺炎(9.7%)、脳血管疾患(9.3%)と続き、肺炎は死因の第3位です。肺炎は、肺の組織に炎症が起きる病気の総称です。風邪の症状から始まり、高熱や咳、胸の痛みなどが続きます。病気による体力低下や高齢による免疫力低下で、ちょっとした風邪から肺炎を起こすことが少なくありません。

肺炎の予防法

  • 風邪やインフルエンザにかからないようにしましょう。
  • 風邪の季節にはできるだけ人ごみを避け、マスクをする。帰宅したらうがいや手洗いをしましょう。
  • 感染しやすいのは体が弱ったときです。不規則な生活やストレスなどによる疲労をためないこと、睡眠を十分にとること、栄養のバランスの取れた食事をすることを心掛けましょう。

肺炎球菌ワクチン

肺炎の原因菌のうち、最も多いのは肺炎球菌(55%)で、以下、クラミジア、インフルエンザ菌、黄色ブドウ球菌…と続きます。この肺炎球菌に対し有効なワクチンが、肺炎球菌ワクチンです。接種を必要とする対象者は以下のとおりです。

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肺炎の予防には、インフルエンザワクチンも重要です。肺炎球菌ワクチンと両方接種することで、入院率を63%、死亡率を81%減らせたとの報告もあります。

結核

結核は、結核菌によって起こる慢性感染症です。空気を伝わって人から人に感染します。感染しても発病する人は1〜2割です。発病しても、約6カ月間きちんと治療(服薬)すれば、完治します。
WHO(世界保健機関)によれば、世界の人口の3分の1(約20億人)が結核に感染しており、2013(平成25)年の1年間に、世界で新たに900万人が結核に感染しました。アジアやアフリカの貧困国に多く発生しています。2006(平成18)年には、1年間に世界で150万人が結核で死亡しました。(1日に4,110人ずつ死亡したことになります)
対策のポイントは以下のとおりです。

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長引く咳…百日咳かも?

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破傷風

破傷風は土の中に住んでいる破傷風菌が起こす病気です。
  • けがをして傷口から破傷風菌が入ると、菌が神経毒素をつくり、それによって、全身の筋肉が緊張しっぱなしの状態となります。
  • 潜伏期3〜21日のあと、口が開きにくい、ものが飲み込みにくいなどの症状に始まり、全身の筋肉の緊張で体がのけぞり、呼吸筋も侵されて呼吸困難を生じ、重篤な場合は窒息死します。
  • 破傷風に対する免疫をもっていない母親に赤ちゃんが生まれるとき、臍(へそ)の緒を不潔なハサミで切ると、破傷風菌が感染して赤ちゃんに発症することがあります。(死亡率75%、主に途上国で発生しています)
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破傷風は大人でもかかります。日本では1年間に30〜50人の方が破傷風を発病しています。1999(平成11)年と2000年の2年間では157人が破傷風を発症しましたが、このうち30歳以上の大人が150人いました。致命率は20〜50%と高率です。

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帯状疱疹

小さい水ぶくれが集まった急性炎症性皮膚疾患のことを「ヘルペス」といいますが、ヘルペスには2種類あります。

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帯状疱疹を引き起こすウイルスは、水ぼうそうのウイルスと同じものです。子どものころにかかった水ぼうそうのウイルスは、体の奥にある神経の節に潜り込んで冬眠状態に入ります。年をとるなど、免疫力が低下したときにウイルスが再び暴れだして帯状疱疹が生じます。約3割の人は、一生涯のうちに帯状疱疹にかかります。宮崎県の調査では、80歳までに3人に1人が発症したという報告があります。
帯状疱疹が目の周囲にできた場合、治療が遅れると失明の恐れがありますので、特に注意が必要です。

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帯状疱疹の治療法

帯状疱疹にかかったら、早めに受診して抗ウイルス薬による治療を受けましょう。皮膚や痛みの早期改善につながります。
帯状疱疹になった人の3〜14%に、合併症(帯状疱疹後神経痛)が起こります。長年にわたり、痛みが続くことがあります。飲み薬で痛みが和らぐことがあります。

帯状疱疹の予防法

帯状疱疹の予防法は、以下のとおりです。

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トラベルクリニック

海外旅行や海外駐在に出向かれる前に、トラベルクリニックを利用してみませんか? 滞在地別に、どのような感染症に注意したら良いのかや、予防法について情報を提供します。また、渡航前に、破傷風ワクチン、A型肝炎ワクチン、B型肝炎ワクチンなど、渡航先ごとに薦められている予防接種もいたします。マラリア流行地に行かれる方には予防薬を処方します。渡航の2〜3カ月前までに受診していただくと余裕をもって対応することができます。電話でのご予約を受け付けています。

質疑応答より
:破傷風ワクチンを打ち、翌年も打つように言われたのですが。
:大人で初めて打つ場合、複数回打つほうが抵抗力がつくと考えられます。
:若いときに結核にかかった人が高齢になって発病することがあるのですか?
:はい。若いときに結核菌を吸い込んでも発症しなかった人で、抵抗力が衰えた高齢期に、眠っていた結核菌が暴れだすケースがあります。
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