概要は以下のとおりです。
◆はじめに
日本人のうち、高血圧の人は何人いると思いますか? 実は4,300万人もいて、国民の3人に1人は高血圧症です。その割には知られていないことも多いため、本日は高血圧症のあれこれについてお話しします。
◆高血圧って?
高血圧とは、「上の血圧が140mmHg以上、もしくは下の血圧が90mmHg以上」のことです。ただし、1回でもこの数値を超えたら治療が必要というわけではありません。次のような患者さまは多いのですが…。
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血圧は1日24時間のうちで変動しています。何か活動する際には、例えば立ち上がるだけでも、血圧は上がるのです。
◆一過性の血圧上昇
1回の血圧が高かったからと言って、治療しなければならない状態とは限りません。また、不安な気持ちであったり、病院に来るだけで、血圧は普段より高く出ます。
一過性の血圧上昇に対して一時的に血圧を下げる薬を飲むと、急速かつ過剰な血圧低下が起こります。血圧が急に下がると、脳や心臓などの虚血(きょけつ)を引き起こす可能性があるため、普通は処方しません。大切なことは、自宅での普段の血圧を知ることです。
◆自宅血圧計の選び方
自宅で血圧を測るには、一日中、身に付けて記録する血圧計もありますが、高価で現実的ではありません。家庭用血圧計で、朝夕の2回測ればいいでしょう。
家庭用血圧計には、手首に巻いて測る「手首式血圧計」や、上腕に巻いて測るタイプ(手動式と自動デジタルタイプ)、機械に腕を差し込んで測る本格タイプがあります。便利さも値段もさまざまですが、問題は正確性です。手首式は、誤差が大きく、お勧めできません。腕に巻くタイプか本格タイプを使ってください。
◆血圧の測り方
◆高血圧治療の目的
- 高血圧は、心血管にとって一番のリスクです。
…喫煙、脂質異常症、糖尿病よりリスクが高いです。 - 高血圧は、脳梗塞の最も一般的かつ重要なリスクであり、降圧剤により発症率が下がります。
…高血圧は脳出血に発展する最も重要なリスク。降圧により、30〜40%の相対リスクが減ります。 - 高血圧は、CKD(慢性腎臓病)、さらには末期腎障害の発症リスクを上昇させます。
…収縮期血圧10mmHg上昇あたり、将来の末期腎障害リスクが30%上昇します。 - 中年期の高血圧は、高年齢期の血管性認知症発症のリスクを上昇させます。
…中年期の高血圧は、将来のADL(日常生活動作)低下リスクを上昇させることも報告されています。
◆日本人の高血圧の特徴
日本人に高血圧の人数が多く、脳卒中が多発していた理由の一つとして、食塩の過剰摂取があげられています。治療方法は、生活指導が第一で、その後に薬剤治療があります。生活指導には、以下の7点があります。
- 減塩
- 食事パターンの是正
- 減量
- 運動
- 節酒
- 禁煙
- そのほか
◆減塩
欧米のガイドラインでは、6g/日未満あるいはそれ以下の減塩を推奨されており、2012(平成24)年に発表されたWHO(世界保健機関)のガイドラインでは5g/日未満が強く推奨されています。ただ、日本では、日本食などの影響を加味し、6g/日未満とされています。
◆減量
肥満は、高血圧だけではなく、糖・脂質・尿酸代謝異常、脳梗塞、脂肪肝、月経異常や妊娠合併症、睡眠時無呼吸症候群(SAS)、肥満低換気症候群、整形外科的疾患、肥満関連腎症なども合併します。特に高度肥満では、それ自体がタンパク尿と進行するCKDのリスクとなります。
内臓脂肪が多いほど高血圧、脂質異常症、高血糖が多いです。ウエスト周囲長を計り、メタボリックシンドロームを予防することも重要です。約4kgの減量で、血圧を4.5〜3.2mmHg下げられるとの報告もあります。
◆運動
運動の効果や方法は以下のとおりです。
◆節酒
飲酒習慣は血圧上昇の原因となります。飲酒量の多い人の場合、お酒を減らすと降圧効果がみられるとの報告もあります。お酒のあてとして、塩分が多く濃い味付けのものを好む人が多いせいではないかとも考えられます。ただ、お酒には「百薬の長」という側面もありますので、飲酒がすべて血圧に悪いとは言い切れません。
◆禁煙
喫煙と高血圧の関係はまだ明確ではありませんが、腎臓の血管が狭窄(きょうさく)して、高血圧となる可能性があります。
◆まとめ
- 血圧計は、上腕で測るタイプで計測を。
- 測定は、1日2回。各回とも2回ずつ測定して平均値を出しましょう。
- 1回血圧が高くても慌てずに!
- 何はなくとも、まず減塩!
質疑応答から
Q:血圧を下げる薬は、飲み始めたら一生続けなければなりませんか?
A :日常生活の改善を続け、正常値に下がったため薬を止められた患者さまもいます。
Q:血圧を計るのは食事前か後か、いつが良いのですか?
A :できれば食事前が良いですが、生活スタイルは人によって違いますから、食後のほうが落ち着いて測れるのなら、それでも構いません。毎日、同じ条件で測ることをお勧めします。